最強勇者は二度目を生きる。最凶王子アルブレヒト流スローライフ

ぎあまん

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50 復活

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「そうはさせない!」

 剣が壊れても、イーファは結界を維持し続けた。

「このまま再封印する! ゼル。手伝いなさい!」
「ええ。面倒な」
「ゼル⁉︎」

 いつも通りの反応に、イーファがこめかみに血管を浮かべて睨みつける。

「前とは違うんだ。四人も揃ってるんだから、このまま片付けようぜ」
「そういうわけにもいかないでしょう! ここは街中なのよ!」
「城壁の一部が壊れたぐらいどうってことないって」
「だ~か~ら~人命! あんたこんな時に獣人根性出してんじゃないわよ!」
「おおう、オレサマジュウジン、ニンゲンユルスマジ」
「ふざけるな!」

 ゼルは冗談で言っているが、あの戦争以来、人間とそれ以外での関係がぎこちないという話は聞いている。
 戦後もう三十年ぐらいになるだろうが、あの戦争の被害はそれほどに酷かったということだ。

「いいじゃないか。ここで片付けよう」
「あんたまで」

 こっちもイーファに睨まれた。
 だが、前言は撤回しない。
 イーファは復活前に回収したかったみたいだが、俺はそもそも、ここで倒すつもりだった。

「封印したところで、また誰かに封印を破られるかもと恐れないといけない。そんなことになるよりも、スパッとここで終わらせよう」
「だから、ここだと人的被害が出るでしょう!」
「そっちこそ、賢者様の発言を思い出してみろ」
「え?」
「城壁が壊れることしか言ってないだろ?」
「……あっ」
「つまり、賢者様はそれ以外は全部守ってくれるって言ってるんだよ。やったね」
「ああ、なるほど」
「ふふ、俺様の深慮遠謀を読み切るとは、さすがは勇者だ」
「戦うよりそっちの方が楽だと思う精神は理解できないけどな」
「それはお前が戦闘狂なだけだ」

 ええ、違うと思う……いや、違わないか。
 そうだよなぁ。
 俺ってやっぱり、無理なのかもな。

「じゃあ、いくわよ」

 納得すれば動きが早い。
 イーファが結界を解く。
 その瞬間、中に溜まっていた力が邪神像に吸い込まれていく。

「マナナ」
「う~?」
「あいつが魔法を使ったら全部食べていいからな」
「う~っ!」
「よしよし。じゃあ、俺は暴れるからな。離れていろよ」
「う~」

 納得したらマナナが離れた。
 よし、これで身軽だ。
 力を吸い込んだ邪神像が全身にヒビが生まれ、爆発した。
 前に出たマックスの盾が俺たちを守る。
 爆発の威力は凄まじく、天井が落ちてきた。
 だが、マックスの守りの力は盾の及ばない場所からも守る。

「何度も思ってるが、お前らって守護の能力高いよな」

 マックスは盾専門だし、イーファも回復や結界による守護を使う。
 ゼルは魔法全般だが、どちらかといえば守備の方が強い気がする。

「誰かさんが攻撃一点張りだからじゃない?」
「……ああ、そうか」

 そうだな。
 俺のせいだ。
 天井の崩壊が終わり、ゼルの魔法が上にのしかかっていた瓦礫を退ける。
 俺たちの体が浮き、地上に上がっていく。
 魔族たちも無事だったようで、少し離れた場所で浮いている。
 地下の崩壊はけっこう広い範囲を影響を及ぼしていたようで、ゼルはそんな人々も守り、退避させている。
 面倒くさがりだが、やるとなると細かいことができるんだよな。

「で、あれが邪神か」

 そいつは、ゼルの予想通りに城壁の一部を壊して出現していた。
 城壁を越えるほどの高さを持つ。
 頭に複数の角を持ち、ゴテゴテとした外見をした六腕の巨人。
 それが邪神だ。

「じゃあまぁ、いつも通りに」
「おうよ」

 ゼルが俺とマックスを射出する。
 クナイを抜く。
 邪神は解放の喜びを吠え声で表現していたが、接近してくる俺たちに気づいた。
 顔には目が四つあるな。
 その視線が突き刺さり、手の一つが俺を掴むために動く。
 すでにゼルの魔法からは外れている。
 抜いたクナイに魔力を込め、その掌に突きを放つ。
 貫通できなかったら格好悪いな。
 そのまま握り潰されるとか。
 ふと、そう思った。
 その時はきっと、マックスかイーファが俺を守るだろう。
 その後、大爆笑は必至だな。
 嫌だなぁ、それ。

 もちろん、そんなことにはならなかった。
 子供になって十分に動けていないとはいえ、できることとできないことを区別できないほどじゃない。
 自分のことを観察する時間は十分にあった。
 だが、まだ穴が小さいな。

「マックス! 一気に終わらせる。時間稼ぎよろしく」
「おお!」

 掌を突き抜けた俺は、邪神の顔を蹴って方向転換、城壁の上に着地する。

「だ、誰だ!」

 城壁に集まっていた兵士が俺に槍を向けてくる。

「自分のところの王子も知らんのか? 無礼者」

 それだけ言って、後は無視する。

「え? 王子?」
「あ、もしかして第一王子の?」
「あっちで戦っているのはアンハルト侯爵だ!」
「なら、本当に?」

 背後の連中を無視して、俺は集中する。
 マックスは俺を追いかけようとした邪神を盾でぶん殴って、注意を引きつけている。
 俺とは反対側の城壁に立ち、戦斧を振るっている。
 邪神が魔法を使おうとすると、いきなりそれが消えた。
 マナナがちゃんと動いてくれているみたいだ。
 この調子なら、マックスでもこの邪神に勝つことはできるかもしれない。が、時間がかかるか。

 となると、やはりこれか。
 少し気合を入れて、魔力を収束させる。
 その瞬間、空が軋む音を立てた。
 とはいえ、魔王城を破壊するつもりで撃つほどではないだろう。
 これぐらいでどうだ?

 究極の光《エンシーク》。

 その時、邪神を小さな太陽が包んだ。
 俺を加護する小太陽にして戦の女神ソラリスの試練を越えて手に入れた究極魔法。
 それを食らったら……どうなるもなにもない。
 魔王ほど強くはなさそうだしな。
 これで終わりだ。

 そう思った瞬間、俺の意識は白い空間に放り出された。
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