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第58話「夏休みについて(24)」
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鳥のさえずりが聞こえる。
まるで街に朝が訪れたのを告げるかのように、鳥たちは空を飛び回る。
その鳴き声によって、深い眠いから引き上げられた。
そして、ゆっくり薄眼を開けると、テント越しに淡い光が見える。
2・3回瞬きを繰り返した後、寝起きの倦怠感のせいで重い体を起き上がらせると、隣でシュラフに包まれながら気持ちよさそうに寝息をたてている秀一が、何やら寝言を口にした。
俺はその寝言を無視し、テントの入り口に這い寄るとファスナーに手をかける。
ジィーッという音と共にファスナーを下ろしていくと、外から白い光がテント内に差し込んできた。
差し込む光が目に染みる。
俺は一度目をギュッと閉じ、再びゆっくりと瞼を開けた。
「……おぉ」
目を開けた先には、朝日に照らされて輝く淡い青空と、朝露に濡れたキャンプサイトの芝生が夜明けを喜んでいる姿があった。
長かった夜が明け、この街に朝が訪れたと実感した瞬間だった。
小鳥のさえずりと、街を照らす朝日。
そして、朝露に濡れた草木の匂いが1日の始まりを教えてくれているようにも感じた。
木々の隙間から見える朝の光はとても幻想的で、何か神聖なもののようにすら思えた。
まるで何かを祝福するような、そんな光。
朝の幻想的で爽やかな太陽。
昼の力強くて確かな熱を持った太陽。
夕方の少し寂しくて、けれどどこか優しさを感じるような太陽。
同じ太陽でも、時間によってここまで見方が変わるのは、つくづく不思議なものだと思う。
そんなことを考えながら、テントの外に出て陽の光を全身で浴びると、テントの中で気持ちよさそうに寝ている秀一を起こすことにした。
「おい、秀一」
「ん~……おはよ、悠……」
まだ瞼が閉じたままの秀一が眠たそうに口を開く。
「おう、おはよう。もう朝だぞ」
「…………うん…………」
「おい。寝るな」
それから秀一は寝たり起きたりを繰り返し、5分ほどしてようやくテントの外へと出た。
***
「おぉー!! 気持ちのいい朝! 莉緒たちも起こしてくるよ」
朝日を見るなり、先ほどまでの眠気を吹き飛ばして、いつもの騒がしさを取り戻した秀一は、そう言って朝霧と榊原が眠るテントに向かって声をかけた。
「莉緒、榊原さん、起きてる? 朝だよ」
すると、秀一の声に反応し、テントの中から2人が顔を出した。
「おはよ~……2人とも早いね~……」
「榎本君、羽島君、それに莉緒さんもおはよう。…………わぁ!朝の景色も綺麗ね!」
眠そうに目を擦る朝霧とは対照的に、榊原は外の景色を見て感嘆の声をあげる。
「あっ、ほんとだ~! すっごいいい景色だねー。これは眠気も飛んで行っちゃうね!」
朝霧も外の景色に目をやると、秀一と同じように一気に眠気を吹き飛ばし、目を大きく見開いてその光景を眺めた。
「普段は太陽が完全に昇りきる頃に目を覚ますから、こんな景色を見るのはなんだか久しぶりな気がするな」
「分かる~! 俺も部活ない時は大体そんな感じだし!」
俺の呟きに秀一が答える。
すると、朝霧がふと思い出したように口を開いた。
「あっ、そういえばみんなは小学生の時、ラジオ体操とかやってた? 私の地域では夏休みになるとよく、朝早くからラジオ体操行われてたんだよねー。なんだか懐かしいな~……」
「あったな。そういえば。あの頃は『夏休みになってまで早起きすることないじゃないか!』なんて思っていたが、今になってみると夏の風物詩って感じがしてなかなかいい思い出だったな」
「俺の地区でもあったなぁ……まぁ、なかなか起きられなくてあんまり参加できなかったんだけどね。……榊原さんはどうだった?」
秀一が榊原に尋ねる。
「私の住んでいたところでもラジオ体操あったわね。ラジオ体操に参加するとラジオ体操カードにスタンプを押してもらえるじゃない?私はあれがどんどん溜まっていくのがなんだが楽しくて、毎日参加していたわ」
榊原は昔を思い出したのか、フフッと笑いながらそう語った。
小学生時代の榊原は一体どんな少女だったのだろう。
今と変わらず周りの子よりも少しだけ大人びて見えて、それでいて可愛らしくて、知的で、優しい少女だったのだろうか。
その頃は何が好きで、何に夢中になっていたのだろうか。
もしかすると、その頃から『才能』に関する悩みを持っていたのかもしれない。
機会があれば、俺の知らない子供時代の榊原の話を彼女に直接聞いてみたいと、そう思った。
「榊原さん、昔から真面目だったんだね。俺とは大違いだ! あっはっはっは!」
そう言って高らかに笑い声をあげる秀一を見て、俺たちも自然と笑みが溢れた。
「それじゃあ全員起きたことだし、朝食にするか」
「そうね。お昼前にはキャンプサイトを出ないといけないものね」
「んじゃ、早速準備に移りますか!」
「そうしよ!」
俺の提案に3人が同意する。
「でもその前に、テント片付けないとね」
そして続けるように朝霧が口を開いた。
「そうだな。まぁ無いとは思うが、何か盗まれたりしても困るしな」
そうして、俺たちはテント内で着替えを済ませ、荷物を一度全てテントから取り出すと、管理棟から貸し出されたテントを小さくまとめ、借りる前と同じ状態に戻した。
「これでよし! ……そっちもテントの片付け終わったー?」
秀一は俺たちが使用していたテントを片付け終わると、朝霧と榊原の方に向かって声をかける。
「うん、大丈夫。終わったよー」
朝霧は榊原にテントを入れる袋を持ってもらい、小さく畳まれたテントをちょうどしまい終えたところだった。
「んじゃあ、荷物持って調理場向かおうぜー」
「そうだな。朝霧たちは忘れ物がないか、もう一度確認してくれ」
朝霧と榊原に向かってそう言うと、2人は返事をして頷き、テントが建てられていたところを入念に確認した。
「忘れ物は無いみたいね」
「そうか。それじゃあ、キャンプサイトを後にして調理場に向かおう」
そう言って俺と秀一はクーラーボックスとテント、その他の荷物を両手に持ち、朝霧・榊原と共にキャンプサイトを出て、調理場へと向かった——。
まるで街に朝が訪れたのを告げるかのように、鳥たちは空を飛び回る。
その鳴き声によって、深い眠いから引き上げられた。
そして、ゆっくり薄眼を開けると、テント越しに淡い光が見える。
2・3回瞬きを繰り返した後、寝起きの倦怠感のせいで重い体を起き上がらせると、隣でシュラフに包まれながら気持ちよさそうに寝息をたてている秀一が、何やら寝言を口にした。
俺はその寝言を無視し、テントの入り口に這い寄るとファスナーに手をかける。
ジィーッという音と共にファスナーを下ろしていくと、外から白い光がテント内に差し込んできた。
差し込む光が目に染みる。
俺は一度目をギュッと閉じ、再びゆっくりと瞼を開けた。
「……おぉ」
目を開けた先には、朝日に照らされて輝く淡い青空と、朝露に濡れたキャンプサイトの芝生が夜明けを喜んでいる姿があった。
長かった夜が明け、この街に朝が訪れたと実感した瞬間だった。
小鳥のさえずりと、街を照らす朝日。
そして、朝露に濡れた草木の匂いが1日の始まりを教えてくれているようにも感じた。
木々の隙間から見える朝の光はとても幻想的で、何か神聖なもののようにすら思えた。
まるで何かを祝福するような、そんな光。
朝の幻想的で爽やかな太陽。
昼の力強くて確かな熱を持った太陽。
夕方の少し寂しくて、けれどどこか優しさを感じるような太陽。
同じ太陽でも、時間によってここまで見方が変わるのは、つくづく不思議なものだと思う。
そんなことを考えながら、テントの外に出て陽の光を全身で浴びると、テントの中で気持ちよさそうに寝ている秀一を起こすことにした。
「おい、秀一」
「ん~……おはよ、悠……」
まだ瞼が閉じたままの秀一が眠たそうに口を開く。
「おう、おはよう。もう朝だぞ」
「…………うん…………」
「おい。寝るな」
それから秀一は寝たり起きたりを繰り返し、5分ほどしてようやくテントの外へと出た。
***
「おぉー!! 気持ちのいい朝! 莉緒たちも起こしてくるよ」
朝日を見るなり、先ほどまでの眠気を吹き飛ばして、いつもの騒がしさを取り戻した秀一は、そう言って朝霧と榊原が眠るテントに向かって声をかけた。
「莉緒、榊原さん、起きてる? 朝だよ」
すると、秀一の声に反応し、テントの中から2人が顔を出した。
「おはよ~……2人とも早いね~……」
「榎本君、羽島君、それに莉緒さんもおはよう。…………わぁ!朝の景色も綺麗ね!」
眠そうに目を擦る朝霧とは対照的に、榊原は外の景色を見て感嘆の声をあげる。
「あっ、ほんとだ~! すっごいいい景色だねー。これは眠気も飛んで行っちゃうね!」
朝霧も外の景色に目をやると、秀一と同じように一気に眠気を吹き飛ばし、目を大きく見開いてその光景を眺めた。
「普段は太陽が完全に昇りきる頃に目を覚ますから、こんな景色を見るのはなんだか久しぶりな気がするな」
「分かる~! 俺も部活ない時は大体そんな感じだし!」
俺の呟きに秀一が答える。
すると、朝霧がふと思い出したように口を開いた。
「あっ、そういえばみんなは小学生の時、ラジオ体操とかやってた? 私の地域では夏休みになるとよく、朝早くからラジオ体操行われてたんだよねー。なんだか懐かしいな~……」
「あったな。そういえば。あの頃は『夏休みになってまで早起きすることないじゃないか!』なんて思っていたが、今になってみると夏の風物詩って感じがしてなかなかいい思い出だったな」
「俺の地区でもあったなぁ……まぁ、なかなか起きられなくてあんまり参加できなかったんだけどね。……榊原さんはどうだった?」
秀一が榊原に尋ねる。
「私の住んでいたところでもラジオ体操あったわね。ラジオ体操に参加するとラジオ体操カードにスタンプを押してもらえるじゃない?私はあれがどんどん溜まっていくのがなんだが楽しくて、毎日参加していたわ」
榊原は昔を思い出したのか、フフッと笑いながらそう語った。
小学生時代の榊原は一体どんな少女だったのだろう。
今と変わらず周りの子よりも少しだけ大人びて見えて、それでいて可愛らしくて、知的で、優しい少女だったのだろうか。
その頃は何が好きで、何に夢中になっていたのだろうか。
もしかすると、その頃から『才能』に関する悩みを持っていたのかもしれない。
機会があれば、俺の知らない子供時代の榊原の話を彼女に直接聞いてみたいと、そう思った。
「榊原さん、昔から真面目だったんだね。俺とは大違いだ! あっはっはっは!」
そう言って高らかに笑い声をあげる秀一を見て、俺たちも自然と笑みが溢れた。
「それじゃあ全員起きたことだし、朝食にするか」
「そうね。お昼前にはキャンプサイトを出ないといけないものね」
「んじゃ、早速準備に移りますか!」
「そうしよ!」
俺の提案に3人が同意する。
「でもその前に、テント片付けないとね」
そして続けるように朝霧が口を開いた。
「そうだな。まぁ無いとは思うが、何か盗まれたりしても困るしな」
そうして、俺たちはテント内で着替えを済ませ、荷物を一度全てテントから取り出すと、管理棟から貸し出されたテントを小さくまとめ、借りる前と同じ状態に戻した。
「これでよし! ……そっちもテントの片付け終わったー?」
秀一は俺たちが使用していたテントを片付け終わると、朝霧と榊原の方に向かって声をかける。
「うん、大丈夫。終わったよー」
朝霧は榊原にテントを入れる袋を持ってもらい、小さく畳まれたテントをちょうどしまい終えたところだった。
「んじゃあ、荷物持って調理場向かおうぜー」
「そうだな。朝霧たちは忘れ物がないか、もう一度確認してくれ」
朝霧と榊原に向かってそう言うと、2人は返事をして頷き、テントが建てられていたところを入念に確認した。
「忘れ物は無いみたいね」
「そうか。それじゃあ、キャンプサイトを後にして調理場に向かおう」
そう言って俺と秀一はクーラーボックスとテント、その他の荷物を両手に持ち、朝霧・榊原と共にキャンプサイトを出て、調理場へと向かった——。
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