王子殿下が恋した人は誰ですか

月齢

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3.グレイグ・リヒテル・ド・ドーシア

グレイグの初めて

「はあああああ!?」

 またも色気の無い声を背中で聞いて、リーリウスは小さく吹き出した。

 実はグレイグを招き入れた時点で、侍従にしっかり人払いをするよう命じてあった。だから来訪者の心配をする必要は無いのだが、その事実を知らないグレイグは、さぞ気を揉んでいるだろう。
 
「忘れ物」は隣の休憩用の書斎にある。
 そして実は廊下から出入りせずとも、執務室と書斎は直接行き来できる。が、その出入口は衝立で隠されていた。
 リーリウスはそこを通って音もなく執務室に戻ると、腕を組んで壁にもたれ、あられもない姿で扉を睨んでいるグレイグをゆっくり観察した。
 彼は混乱続きで注意力散漫になっているのか、右前方に現れたリーリウスに気づく様子もない。

「あのヤリチン王子め。早く戻って来い……!」

 弱々しい悪態に、また吹き出しそうになる。
 
 開け放した窓からは、本格的に熱を孕んできた日射しと海風が入ってくる。
 グレイグの白金の髪も、さらさらと風になびいている。 
 実用性重視で飾り気の少ない部屋にあって、白い裸体は花のようだ。
 この花の雄しべは初々しいピンク色で、今は腹につくほど反り返っていた。

(達したばかりだというのに、元気でよろしい)

 いつ誰が来るとも知れぬ場所で、恥ずかしい箇所をすべて晒されたまま置き去りにされているこの異常な状況に、彼が興奮しているのは間違いない。
 本人は怒って否定するだろうけれど。

 グレイグは自尊心が高いようでいて、その実、父親から植えつけられた価値観以外には何の自信もないのだと、彼と話してみたらすぐにわかった。
 実際は劣等感だらけで、自己評価もとても低い。
 ゆえに傷つけられまいと攻撃的になるのだろうが、その自覚も薄いようだ。

「ん……っ」

 つやつやした鈴口から、先走りがプクリプクリと溢れてくるほど勃起している。
 なのに彼は自分で扱くことができない。
 もどかしげに下肢を揺らす卑猥な姿を堪能していたら、いきなりバチッと目が合った。
 途端、グレイグの顔が歪む。

「なっ! なんでそこにっ!? いつのまにーっ!」
「ずっといたぞ?」
「はああ!? 嘘だ! 出て行ったの見た! なんっ! まさかずっと見てっ」
「まあ、落ち着きなさい」
「落ち着けるかーっ! うああぁぁ」

 放置された間の緊張が、一気に気が緩んだらしい。
 真っ赤になって泣いてしまったグレイグを「よしよし」と抱きしめながら、一緒になって涙をこぼす陰茎も扱いてやると、腕の中の躰がびくんとのけ反った。

「あっ! あっ、あっ、や……」

 怒りが快楽に負けたところで、書斎から持ってきた小瓶を手のひらで転がし、キュポンと蓋を開ける。
 音に気付いたグレイグが、喘ぎ声の合間に「な、に?」と問うてきた。

「もっと気持ちよくさせてくれる物だよ」

 傾けると、薔薇の香りの液体が、とろりとグレイグの下肢に広がって、「ひゃっ」と声が上がった。

「何? ぬるぬる……」
「潤滑油というのだ」

 実はマリウス愛用の潤滑油で、「おすすめなので」と秘蔵の張形と共にたくさんくれた。香りも自然でべたつき過ぎず、確かに扱いやすい。

(さすがマリウス)

 思い出して称賛したが、グレイグに入手経路を話すわけにはいかないので、使用法だけ教えることにした。
 ぬめりを利用して陰茎の付け根を撫でたり、緩急をつけて扱き上げたりと実践指導すると、淫らな喘ぎが次々こぼれる。

「あっ、そんなっ、やあっ」

 ぷっくり膨らんだ陰嚢も持ち上がって、そろそろ限界かというところで手を放した。射精寸前で放り出されたグレイグは、涙目で不満を訴える。

「どうしてえ」
「そろそろ開放せねば、躰を痛める」

 言いながら拘束具を外してやると、グレイグはおずおずと自由になった手脚をさすり、リーリウスを見上げてきた。解放されて、かえって不安になったという表情で。

「縛られなくても、もう自分で躰をひらけるだろう?」
「う……」

 目元も朱に染めて唇を噛む。その繕わぬ表情もとても可愛い。
 つつみ込むように抱きしめると、意を決したように、ぎゅうっと抱きついてきた。自らひらいた両脚のあいだに受け入れるようにして。
 そうして、途方に暮れたように呟いた。

「……僕は……」
「ん?」
「嫉妬してた……のですね。殿下にも、ご友人たちにも」

 躰をひらいたら、覆い隠していた自分の心まで見えたのだろうか。

「あなた達は何でもできて、優秀で、ずば抜けて容姿も良くて。自分もそうなりたいのに、なれないから。だから悔しく……あっ!」

 ぬるぬると会陰を押すと、高い声が上がる。

「ま、真面目に、喋ってるのに!」
「あまりに可愛らしいことを言うから、つい」
「そんなこと言っても、……やっ、そこは」

 後孔に触れると、グレイグはびくびくっと全身を震わせた。

「ここを使うときは特に、潤滑剤を忘れず用意するんだよ。茶会にまで携帯する人もいるくらいなのだから。初心者はそこまでする必要は無いと思うけれど……たぶん」
「え? ……ああっ!」

 ツプンと中指を差し込んだら、キュウッと締めつけられた。

「いやだあ、そんなとこ、だめ……あーっ」

 違和感を紛らわせるべく、最初から感じるところを突いてやると、声も躰も跳ね上がった。

「この辺に気持ち良くなる箇所がある。おぼえておくといい」
「やっ、そこ嫌だっ、なんか変っ、抜いて、はあっ!」

 痛がってはいないようなので指を二本に増やすと、腰を突き出した拍子に性器がぶるんと揺れて、透明な蜜が糸を引いた。嘘をつけない分身がなんとも可愛い。

 初心者なので念入りに解して、指を三本に増やしても、グレイグの口から漏れるのは嬌声ばかりになった。
 頃合いと見て前も扱いてやると、待ちかねたように先端から白濁が飛び出す。
 潤滑油と混ざり合い、明るい部屋にそぐわぬ卑猥な粘着音が大きくなった。 

 射精の余韻と乱れた呼吸に身を震わせたグレイグが、濡れた瞳で見上げて来る。
 見つめ返すと、強く抱きついてきた。
 微笑んだリーリウスが、体内に入れたままだった指の抽挿を再開すると、絡みつくように甘い声が上がった。
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