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6.フランセ・ブリス・ド・カーロン
会ってのお楽しみ
「いよいよ五人目ですね、殿下!」
「うむ」
五人いた『運命の人』候補者も、残すところあとひとり。
リーリウスとシュナイゼは、この大捜索の第一歩となった王子の私室で、否応なしに高まる期待と緊張を胸に――エロい下着の、オーダー見本を見ていた。
「いや~さすがのエロさですね、『アガーテ・ボンボン』の新作! ……この紐は、どこにどう着けるのでしょう」
「知らぬが、そなたには随分世話になったから、そなたのぶんも一緒に受注してもらおう。いくつでも好きに選べ」
「ありがとうございます! うわぁ、誰のサイズに合わせよう!」
「各種サイズを取り揃えておけばいい」
「……もちろん殿下は、『運命の人』のサイズですよね?」
「もちろん。この目と手で、彼のサイズは寸分の狂いなく把握しているからね」
エロ下着の希望色に「全色」と書き入れながらうなずくと、「さすが殿下」とシュナイゼが笑った。
「もしかして、以前レダリオに取りに行かせてた下着も、運命の人用でした?」
「うむ。新居もすでに設計中だし、腕の良い職人たちも確保した。特注の寝台も、新居と離宮とすべての別荘と王城のぶんを作らせている」
「城にも特注寝台を置くのですか?」
「当然だ。時と場所を選ばず、あらゆるプレイで抱きたくなるに決まっているからな!」
「ブレませんね、殿下! どんな寝台なのか楽しみです」
シュナイゼはエロ下着の希望着用部位に「あっちもこっちも全部」と書き込んでから、「でも殿下」とリーリウスに視線を移す。
「すでに結婚確定として動かれてますけど、彼に断られるとは思わないのですか?」
リーリウスは「うーむ」と小首をかしげて、窓の向こうに広がる海を見た。
「欠片も思わぬな」
「殿下らしいです」
声を上げて笑うシュナイゼに、「ところでレダリオは?」と尋ねると、親友は「あ、そうでした」と手を打った。
「あいつもいよいよ、見合いが大詰めらしいですよ。数日中に結論を出すとかで、今日もお相手と会ってるはずです」
「……私に邪魔されると思って、黙って行ったな」
「騙し討ちでエロい高級下着専門店に行かせたりするからですよ」
シュナイゼは愉快そうにニヤリと笑い、腕を組んだ。
「どうです殿下。レダリオが婚約相手を決めるより先に、『運命の人』の気持ちを確かめられそうですか?」
リーリウスも不敵に笑い返す。
「もちろん、私が先に確かめるさ。そして改めて結婚を申し込むのも当然、私が先だ」
「なら早速、行動しなくちゃですね!」
シュナイゼは机上のエロい下着見本を脇によけ、運命の人候補者リストの最後の一枚を真ん中に置いた。
「――伯爵家次男、フランセ・ブリス・ド・カーロン。二十二歳」
リーリウスは改めて記憶を探ったが、フランセの顔は思い浮かばない。
兄のエアハルトのほうなら、リーリウスと同い年で、同じ師範から剣術の授業を受けていたからよく知っている。なかなかの男前で浮ついたところのない、誠実な男だ。
「エアハルトはよく弟自慢をしていたが、私はフランセを紹介されたことがないのだ。そなたは見知っているか?」
「俺も候補者捜しをするまでは、情報でしか知りませんでした。もちろんその後、きっちり調べましたけどね。
フランセの存在感が薄かったのは、王都よりカーロン領で過ごすことのほうが多かったからのようです。ほら、あの家で多少問題があることは、殿下もご存知でしょう?」
「ああ……そうだったな」
カーロン家は名門だが、現在の当主であるグスタフ――エアハルトやフランセの父親は、かなり酒癖と女癖が悪いことで知られている。
普段は明るく面倒見も良く、養護施設等へも惜しみなく寄付を続けていて、悪印象を持つのが難しいくらいの御仁なのだが。
飲むとガラリと人が変わるのだ。
主に片っ端から女性を口説く方向に。
いくら性行為に対して開放的なイルギアスの民でも、暗黙のルールというものはある。
グスタフはそれを破り、無責任な行動を繰り返したものだから、グスタフの妻が亡くなったときも、「夫のせいで心労が重なったんだろう」と噂された。
その亡くなった前妻の忘れ形見がエアハルトで、後妻が産んだのがフランセだ。
だから二人は異母兄弟ということ。
それでもエアハルトの話を聞く限りでは、兄弟仲は良いようだけれど。
グスタフは再婚後も、酔っては女性関連の揉め事を繰り返していたから、家族が味わってきたであろう苦労は想像に難くない。
「フランセは兄と似ていたか?」
エアハルトは、黒髪に茶色い瞳。
フランセも同じなら、リーリウスが『運命の人』の条件として挙げた「たぶん黒髪で暗色の瞳」という条件には当て嵌まる。
「それはご自身でお確かめください。ただ、昨年辺りから生活拠点を王都に戻して以降は、フランセへのデートの申し込みが絶えないそうですよ」
どこか思わせぶりな口調のシュナイゼに、
「モテるから候補に推したのか?」
重ねて問うたリーリウスだが、
「それも会ってのお楽しみ」
意味深に笑われただけだった。
「うむ」
五人いた『運命の人』候補者も、残すところあとひとり。
リーリウスとシュナイゼは、この大捜索の第一歩となった王子の私室で、否応なしに高まる期待と緊張を胸に――エロい下着の、オーダー見本を見ていた。
「いや~さすがのエロさですね、『アガーテ・ボンボン』の新作! ……この紐は、どこにどう着けるのでしょう」
「知らぬが、そなたには随分世話になったから、そなたのぶんも一緒に受注してもらおう。いくつでも好きに選べ」
「ありがとうございます! うわぁ、誰のサイズに合わせよう!」
「各種サイズを取り揃えておけばいい」
「……もちろん殿下は、『運命の人』のサイズですよね?」
「もちろん。この目と手で、彼のサイズは寸分の狂いなく把握しているからね」
エロ下着の希望色に「全色」と書き入れながらうなずくと、「さすが殿下」とシュナイゼが笑った。
「もしかして、以前レダリオに取りに行かせてた下着も、運命の人用でした?」
「うむ。新居もすでに設計中だし、腕の良い職人たちも確保した。特注の寝台も、新居と離宮とすべての別荘と王城のぶんを作らせている」
「城にも特注寝台を置くのですか?」
「当然だ。時と場所を選ばず、あらゆるプレイで抱きたくなるに決まっているからな!」
「ブレませんね、殿下! どんな寝台なのか楽しみです」
シュナイゼはエロ下着の希望着用部位に「あっちもこっちも全部」と書き込んでから、「でも殿下」とリーリウスに視線を移す。
「すでに結婚確定として動かれてますけど、彼に断られるとは思わないのですか?」
リーリウスは「うーむ」と小首をかしげて、窓の向こうに広がる海を見た。
「欠片も思わぬな」
「殿下らしいです」
声を上げて笑うシュナイゼに、「ところでレダリオは?」と尋ねると、親友は「あ、そうでした」と手を打った。
「あいつもいよいよ、見合いが大詰めらしいですよ。数日中に結論を出すとかで、今日もお相手と会ってるはずです」
「……私に邪魔されると思って、黙って行ったな」
「騙し討ちでエロい高級下着専門店に行かせたりするからですよ」
シュナイゼは愉快そうにニヤリと笑い、腕を組んだ。
「どうです殿下。レダリオが婚約相手を決めるより先に、『運命の人』の気持ちを確かめられそうですか?」
リーリウスも不敵に笑い返す。
「もちろん、私が先に確かめるさ。そして改めて結婚を申し込むのも当然、私が先だ」
「なら早速、行動しなくちゃですね!」
シュナイゼは机上のエロい下着見本を脇によけ、運命の人候補者リストの最後の一枚を真ん中に置いた。
「――伯爵家次男、フランセ・ブリス・ド・カーロン。二十二歳」
リーリウスは改めて記憶を探ったが、フランセの顔は思い浮かばない。
兄のエアハルトのほうなら、リーリウスと同い年で、同じ師範から剣術の授業を受けていたからよく知っている。なかなかの男前で浮ついたところのない、誠実な男だ。
「エアハルトはよく弟自慢をしていたが、私はフランセを紹介されたことがないのだ。そなたは見知っているか?」
「俺も候補者捜しをするまでは、情報でしか知りませんでした。もちろんその後、きっちり調べましたけどね。
フランセの存在感が薄かったのは、王都よりカーロン領で過ごすことのほうが多かったからのようです。ほら、あの家で多少問題があることは、殿下もご存知でしょう?」
「ああ……そうだったな」
カーロン家は名門だが、現在の当主であるグスタフ――エアハルトやフランセの父親は、かなり酒癖と女癖が悪いことで知られている。
普段は明るく面倒見も良く、養護施設等へも惜しみなく寄付を続けていて、悪印象を持つのが難しいくらいの御仁なのだが。
飲むとガラリと人が変わるのだ。
主に片っ端から女性を口説く方向に。
いくら性行為に対して開放的なイルギアスの民でも、暗黙のルールというものはある。
グスタフはそれを破り、無責任な行動を繰り返したものだから、グスタフの妻が亡くなったときも、「夫のせいで心労が重なったんだろう」と噂された。
その亡くなった前妻の忘れ形見がエアハルトで、後妻が産んだのがフランセだ。
だから二人は異母兄弟ということ。
それでもエアハルトの話を聞く限りでは、兄弟仲は良いようだけれど。
グスタフは再婚後も、酔っては女性関連の揉め事を繰り返していたから、家族が味わってきたであろう苦労は想像に難くない。
「フランセは兄と似ていたか?」
エアハルトは、黒髪に茶色い瞳。
フランセも同じなら、リーリウスが『運命の人』の条件として挙げた「たぶん黒髪で暗色の瞳」という条件には当て嵌まる。
「それはご自身でお確かめください。ただ、昨年辺りから生活拠点を王都に戻して以降は、フランセへのデートの申し込みが絶えないそうですよ」
どこか思わせぶりな口調のシュナイゼに、
「モテるから候補に推したのか?」
重ねて問うたリーリウスだが、
「それも会ってのお楽しみ」
意味深に笑われただけだった。
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