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40、司書長からご通達
しおりを挟む「トカゲー好きだー。結婚しよーぜー」
「無理不可能諦めろ」
「それ俺のところだと無理不可能なぞ破砕せよ~って唄だなー」
「脳筋具合が唄にまで現れてんのな」
ちなみに他所の種族だと「無理不可能なら賄賂」やら「無理不可能こそ愉快」などがある。
どこもひでぇな
それにしても遊園地以降妙にじゃれついてくるワニから逃げまくる。
来んじゃねぇ
せめてハチレベルの可愛さ身に付けてから来やがれ
ワニのじゃれでこちとら書物血で汚したとか言われて減給中なんだよ!!
マジくそワニめ!!
走ろうとする先に回り込まれまくるというイジメを受けていると、後ろからカツーンというヒールの音がした。
ひぃッ、この音はッ
思わず咄嗟でワニの後ろに隠れてしまった。
おい、違う間違えただけだから尻尾離せワニ!
「トカゲさん」
「はいぃ!!」
「何しているのですか?」
「別にさぼっていたわけではないんですもうこのバカワニに捕まってただけなんで不可抗力といいまして」
「トカゲさん」
「はいぃ!!」
「仮にも目上の者あるいは他者に対して、バカなどの蔑称を付けることはいけませんよ。品位にも関わります。それから相手が何事かを発言する前に言い訳染みた言葉が出るのも関心しません。身に覚えがないのでしたら堂々となさい」
「はいぃ!!」
「よろしい」
美しい縦長の曲線を描くガラスランプの中でぼぅ…と青い炎が揺れる。
ガラスと言っても似てるだけで成分は全く違うし言わば皮膚だがな
司書長は魔精族なので、種族生体として人型の頭部部分が各個体の魂を閉じ込めたランプ型なのだ。
ランプの形や魂の形状、色は個体それぞれであり、同じ者は一人としていないので面白い。魔精族同士の婚姻での子の形質遺伝を研究している研究狂い共もいるくらいである。
ちなみに蛇足だが禁書もその種族の力作たちだ。マジであいつら後先考えず研究しかしねえイカレ野郎共だからな…、うわ、考えてたら人体実験しに来そうだからやめよう
思考を切り替えていると司書長がワニに視線を向けた。
思わず私まで背が伸びる。
目というか顔は無いが炎の向きやら色やらで何となく分かるのだ。
まぁ長年のふぁいあーされてきた条件反射とも言うが、こう司書長のいつも綺麗に磨かれているランプやら古めかしく厳かな濃緑色の詰襟ドレスを見ていると、目の前で反抗する気もうせるというものである。
白手袋越しの所作やら背筋やら、正に歩く淑女の洋灯なのだ。
「ワニさん、前回の反省は如何なされましたか」
「おー、食事量と運動量は増やしてみたんだが逆効果でなー。腹減るわ口直しが欲しーわでダメだったわ」
そんな司書長に対してワニは呑気に答えている。
というか最近人間界軍がひゃっはーされてると魔界新聞で言ってたが、主にお前のせいかよ
初耳だわ
思わず呆れ顔で助言してやる。
「なんだワニ、お前更にムキムキになるつもりなのか? やめとけ、ただでさえむさ苦しいのによ」
「トカゲさんは黙っていてください」
「はいぃぃ」
司書長に呆れた風にたしなめられた。
なぜだ、理不尽である。ひでぇ
涙目で訴えていたら司書長の優美な白手袋の上に炎が現れて踊った。
ひぃッ、静かにしてますッ!
最近司書長が物理に出やすくなってて悲しいぜ…、減給もされたしな…
あと地味にさっきからワニのよだれが降って来て怒りが溜まってるんだが
いや、今は司書長の手前大人しくしとくけどよ、ワニ後で覚えてろよ? 洗濯代むしるぞ?
内心で準備運動していると、司書長が一歩ワニへと近付いた。
珍しいなとふと思う。司書長は淑女らしく、雄や男型へは三歩以内の距離へと踏み込まないからだ。
「ワニさんその件なのですが、職場環境の監督者として、少数なら見過ごしたのですが近頃の増加傾向にある職員への作業妨害およびお客様への食事行為は看過しえません」
「おー、ただ訂正するなら食事っつーより牽制行為の方が嬉しいな」
「了解致しました。ではそのようにしまして、つきましてはこの件に関して上の判断を仰ぎたく思います。以上、取り急ぎ通達までですが、判断は上の者か私からお伝えする形となります」
「手間かけて悪いなー。おーわかったわー」
「いえ、では私はこれにて失礼致します。トカゲさん、話が終わりましたらすぐに仕事へと復帰してくださいませ。それでは」
ぽかんとしている間に司書長は綺麗な一礼をしてから去って行った。
え、と思わず脳内で会話を整理しているとワニがすんすんと匂いを嗅いでくる。
こいつ邪魔だというのと阿保め!という思いを込めて取り敢えず頭にげんこつを見舞わす。
のんきか!!
「おま、喰い過ぎのせいで上に目つけられちまってんじゃねーか!! お前の上って魔王様とか宰相クラスだろ、大丈夫かよ!?」
「みてーだなー。それよりもトカゲ後で一緒に飯屋行かねー?」
「おごりなら行くけど何でワニのがぽけんってしてんだよ!」
むかつくのでバシバシ口元を叩いてやる。
ぶっしゃるのは以下略だ。
こんな時まで大食いばかめ!
というか魔界は弱肉強食だから喰われる奴が悪いだろみたいな風潮だし、そこまで言うほど目の前で喰ってる所も見てないから正直意外だ。
魔界の生命サイクルのすさまじさヤバいぞ?
それにワニの戦争での貢献度を思うと切り捨てるとかは早々無ぇーとは思うが
なんつーか、突然過ぎて変にやきもきしてしまう
別に心配とかじゃねーが
「あーのなー! ワニ…ハッ、まさか司書長喰って証拠隠滅する気じゃねーだろうな!?」
「ばかだなトカゲ―、そしたらトカゲにバレちまって嫌われちまうだろー?」
「お、おう?」
よく分からんが妙に納得するような気もする理由だった。
それにあれだ。司書長もそりゃ以前侵入者五人×五組の大規模不法侵入事件の際に一人で全員灰と化させた伝説持ちとはいえ、ワニのが現役で強いからなぁ
さっきの会話での殊勝な態度といい、不意打ちとかやらねぇ奴だしそりゃ無いか
「んー、ワニ何でそんな殊勝っつーのか分らんが、素直な態度なんだ? 煉獄凍土行きとかなっても着いてかねーぞ?」
「まぁそうなったらトカゲ拉致するけどよー」
「拉致るのか。やめれバカ」
全力で徹底抗戦の構えを見せていると、ワニがぐりぐりと頭を押し付けてきた。
おもい、潰れるし禿げそうだぞ
「自己抑制が出来てねー子供状態なのはほんとだしなー」
「お前、その食欲のヤバさ自覚あったんだな」
ついびっくりすると同時にちょっとは成長したんだなという、最初の頃を思ってついしみじみとしていると、ワニに生温かい笑みと視線を向けられた。
解せん
というかワニの癖に生意気である
おい、髪触んな! さっきの今で頭皮ダメージが心配なんだよ!
最近妙にこういう触れてくるだけの接触が多いのでぺしぺし弾いていると、頭にずっしりと重み。
どけ、そろそろ行かねーと司書長にふぁいあーされそうなんだって
「トカゲ愛してるぜー」
「急だな。はいはい、まぁその調子なら何とかなるんだろ」
「俺はトカゲがいればいいしなー」
「はいはい言ってろ言ってろ」
勝手に頭の上に顎を乗せてきて羽交い絞め気分を味合わせてくるワニに、大人になって洗濯代くらい我慢してやる自分って偉いと思うトカゲであった。
後書き
『というか魔界は弱肉強食だから喰われる奴が悪いだろみたいな風潮だし、そこまで言うほど目の前で喰ってる所も見てないから正直意外』→→トカゲの前で食べてないだけ(おい)
ちなみに、密かにワニさん目線ではトカゲだけ愛欲込めての『喰う』で、他は証拠隠滅とか単に腹ごなしという意味で「食う」と漢字を使い分けてるの意識してたんですが地味ですねうおおw なお、この感性は鰐族なら常識で、父龍に関しては母鰐にモロ影響受けてるので理解は出来るって感じっすね~。龍族の中でも喰うのが愛情表現は伝わらないっす~。とはいえトカゲさんと出会うまで発露もしてなかったんで別段不自由は無かったみたいです~というちょっと裏側
『不意打ちとかやらねぇ奴だしそりゃ無いか』→→ミイラ司書しかり、大鷲くん然り、襲撃はあります☆(おい) でもわざわざ不意打ちとか待ち伏せなんて面倒はせず、相手からしたら急に真上とかから現れて、のっそり正面から殺りに行きまっす☆(おい
上記からも分かるように、ワニさんも隠してること多々だからトカゲさんとの齟齬もやっぱあるんすよね~(笑)
おっと、では司書長の紹介をば☆
☆我らが司書長☆
イメージはハリ〇タのマクゴ〇ガル先生☆
トカゲは頭が上がらない模様(笑 よくある普通に強いお方 炎系のエキスパート☆ 禁書を狙った大規模不法侵入の際、駆け付けた援軍に対して傷一つ無い禁書達と舞い散る人型だった灰の中言った一言
「館内での無作法は許しません」
は、魔界名言録に記されている。(本人無許可だったのだが、発行後知った後に騒ぎ立てるのもどうかと思い黙認。しかし内心恥ずかしく思っているらしい)
魔精族☆ 別段絶滅危惧種とかではない、一般的な種族。司書長が飛びぬけて個体的に強く、また(魔精族的に)美しいだけ。 今も独身だが、密かに引く手数多だとか。まぁでも仕事に誇りを持っているのと彼女自身恋愛には一歩身を引いてる立場なので、今後もまだ寿退社予定はないそうな
ちなみに発声器官は無いが、思考を音として発するのでまぁ普通に口頭会話と同じ感じでの会話方法となる
そろそろ魔王様も出してあげたい気もするけど、魔界なので司書長が真面目に報告を上げても返信は遅い模様(笑)
というわけで次もほのぼの話予定です( ´∀` )
ではでは(∩´∀`)∩
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