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しばらくして、安藤が口を開いた。
「わかりました。まず、本部に緊急報告をします。それと、美佐江さんと一緒に来られた方々にも一応話を聞かせてもらいたい」
「はい、お願いします」
美佐江は安堵の表情を見せた。
「それと」
花巻が付け加えた。
「石板の回収を急がせないといけませんね」
安藤は頷いた。
「そうだな。実は、さっき新しい情報が入ったんだ」
安藤はスマートフォンを取り出して、メールを確認した。
「昨日のことだ。長崎の釣り船に夜釣りの予約が入ったそうだが、来た人たちはとても釣りをするような格好ではなかったらしい。それに沖合の海釣りだというのに、あまりにも貧弱な釣り竿しか持っていない」
「釣り客が?」
森川が首をかしげた。
「また、巨大なクーラーボックスも気になったらしい。釣り船の関係者が、船が出た後で釣り客の強い要求で予定の漁場を変えるという連絡を受けたことで不信感を持ち、海上保安庁に連絡をしたそうだ」
花巻が身を乗り出した。
「それで?」
「沖合で釣り船の確保はできたが、その時のどさくさに紛れて、クーラーボックスの中に入っていた大きな石のようなものは海へと捨てられていた」
花巻の表情が険しくなった。
「石板ですね」
「そう推測されている。ただし、水深が深い場所であったため、まだ回収されていない。釣り客は一人を除いて、全てC国の出身者だったそうだ」
部屋に重い沈黙が落ちた。
「完全に組織的な動きですね」
森川がつぶやいた。
「ええ、そして急がなければなりませんね。うーん、『しんかい6500』の手配って今から急にできるかなぁ?」
美佐江が窓の外を見つめながら言った。
「もし彼らがこちらの世界に来れば、この平和な地球も戦場になってしまいます」
その言葉に、一同は身震いした。
その夜、安藤は本部への緊急報告を終えて、施設の外に出た。山の夜は静寂に包まれていて、虫の声だけが響いている。
森川も外に出てきて、安藤の隣に立った。
「信じられない話でしたね」
「ああ、でも現実だ」
安藤は空を見上げた。星がきれいに見える。
「この平和な夜空が、いつまで続くかわからなくなってきたな」
しばらく無言で夜空を見つめていた安藤が、ふと森川を振り返った。
「森川、お前さん、女子高生は好きか?」
「えっ?」
森川は驚いて安藤を見た。突然の質問に戸惑いを隠せない。
「い、いや、別に特別な感情とかじゃなくて……普通に接するだけですよ」
安藤は苦笑いを浮かべた。
「そういう意味じゃない。どうだ、女子校の先生になりたくないか?」
「女子校の先生?」
森川はますます困惑した。
「実は、能力者の候補がいるんだ。高校生の女の子でな。護衛が必要になるかもしれない」
「まさか……」
「ああ、花巻先生が調査している子だ。今のところ普通の学生生活を送っているが、状況が変わりつつある」
安藤は真剣な表情で続けた。
「教師として学校に潜入してもらえれば、自然に護衛ができる。お前の語学力も活かせるだろうし」
森川は考え込んだ。確かに、自分の経験や能力を活かせる任務かもしれない。
「でも、僕に教師が務まりますかね?」
「心配するな。書類は何とかする。お前なら大丈夫だ」
安藤は森川の肩に手を置いた。
「大切な能力者を守るための重要な任務だ。頼める?」
森川は夜空を見上げて、ゆっくりと頷いた。
「わかりました。久しぶりの地上の仕事です。やりますよ」
二人は静かに夜空を見つめていた。遠くの山の向こうに、何かが起こり始めていることを感じながら。
明日からは、これまで以上に忙しい日々が始まるだろう。でも、それが自分たちに課せられた使命なのだ。
地下の施設では、美佐江が兄の花巻と故郷のことを話している。そして、二人の勇敢な戦士は、明日の尋問に備えて休息を取っていた。
「わかりました。まず、本部に緊急報告をします。それと、美佐江さんと一緒に来られた方々にも一応話を聞かせてもらいたい」
「はい、お願いします」
美佐江は安堵の表情を見せた。
「それと」
花巻が付け加えた。
「石板の回収を急がせないといけませんね」
安藤は頷いた。
「そうだな。実は、さっき新しい情報が入ったんだ」
安藤はスマートフォンを取り出して、メールを確認した。
「昨日のことだ。長崎の釣り船に夜釣りの予約が入ったそうだが、来た人たちはとても釣りをするような格好ではなかったらしい。それに沖合の海釣りだというのに、あまりにも貧弱な釣り竿しか持っていない」
「釣り客が?」
森川が首をかしげた。
「また、巨大なクーラーボックスも気になったらしい。釣り船の関係者が、船が出た後で釣り客の強い要求で予定の漁場を変えるという連絡を受けたことで不信感を持ち、海上保安庁に連絡をしたそうだ」
花巻が身を乗り出した。
「それで?」
「沖合で釣り船の確保はできたが、その時のどさくさに紛れて、クーラーボックスの中に入っていた大きな石のようなものは海へと捨てられていた」
花巻の表情が険しくなった。
「石板ですね」
「そう推測されている。ただし、水深が深い場所であったため、まだ回収されていない。釣り客は一人を除いて、全てC国の出身者だったそうだ」
部屋に重い沈黙が落ちた。
「完全に組織的な動きですね」
森川がつぶやいた。
「ええ、そして急がなければなりませんね。うーん、『しんかい6500』の手配って今から急にできるかなぁ?」
美佐江が窓の外を見つめながら言った。
「もし彼らがこちらの世界に来れば、この平和な地球も戦場になってしまいます」
その言葉に、一同は身震いした。
その夜、安藤は本部への緊急報告を終えて、施設の外に出た。山の夜は静寂に包まれていて、虫の声だけが響いている。
森川も外に出てきて、安藤の隣に立った。
「信じられない話でしたね」
「ああ、でも現実だ」
安藤は空を見上げた。星がきれいに見える。
「この平和な夜空が、いつまで続くかわからなくなってきたな」
しばらく無言で夜空を見つめていた安藤が、ふと森川を振り返った。
「森川、お前さん、女子高生は好きか?」
「えっ?」
森川は驚いて安藤を見た。突然の質問に戸惑いを隠せない。
「い、いや、別に特別な感情とかじゃなくて……普通に接するだけですよ」
安藤は苦笑いを浮かべた。
「そういう意味じゃない。どうだ、女子校の先生になりたくないか?」
「女子校の先生?」
森川はますます困惑した。
「実は、能力者の候補がいるんだ。高校生の女の子でな。護衛が必要になるかもしれない」
「まさか……」
「ああ、花巻先生が調査している子だ。今のところ普通の学生生活を送っているが、状況が変わりつつある」
安藤は真剣な表情で続けた。
「教師として学校に潜入してもらえれば、自然に護衛ができる。お前の語学力も活かせるだろうし」
森川は考え込んだ。確かに、自分の経験や能力を活かせる任務かもしれない。
「でも、僕に教師が務まりますかね?」
「心配するな。書類は何とかする。お前なら大丈夫だ」
安藤は森川の肩に手を置いた。
「大切な能力者を守るための重要な任務だ。頼める?」
森川は夜空を見上げて、ゆっくりと頷いた。
「わかりました。久しぶりの地上の仕事です。やりますよ」
二人は静かに夜空を見つめていた。遠くの山の向こうに、何かが起こり始めていることを感じながら。
明日からは、これまで以上に忙しい日々が始まるだろう。でも、それが自分たちに課せられた使命なのだ。
地下の施設では、美佐江が兄の花巻と故郷のことを話している。そして、二人の勇敢な戦士は、明日の尋問に備えて休息を取っていた。
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