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領主への挨拶を終えると再び山﨑と話をすることになった。
「もちろん、我々のことは極秘扱いになっています。今の政府の中にはきっと知る人は誰もいないでしょう。門を巡って必要が生じなければ何もしないのが基本ですから」
山﨑の説明によると、平安時代から密かに異世界との外交関係が続いているという。
「それでは、私たちの任務は……」
田中が困惑しながら聞いた。
「こちらにくる必要がなかった。無意味だったということですか?」
「いえいえ、そんなことはありません」
山﨑は首を振った。
「今回の事態は、これまでとは全く違います。プロネスと地球人の連合による攻撃なんて、前例がありません。それに、まだ正確な情報の一つも得られていません。私たちだけでは対応しきれないレベルの問題です」
山﨑は地図を広げながら続けた。
「まずは、わかっている現在の状況を説明します。ナリア皇国は北部の三分の一を占領され、首都も危険な状態なのではないかと推測されます。プロネスは地球の軍事技術を取り入れており、従来の戦闘方法や魔法だけでは対抗が困難になっているそうです」
「地球の軍事技術?」
佐藤が身を乗り出した。
「具体的にはどのような?」
「火器類、爆発物、そして通信機器です。特に問題なのは、彼らが組織的な戦術を取るようになったことです」
サミアが暗い表情で補足した。
「私がラングームで見た時には、ゴムボートや砲撃もありました。明らかに地球の技術です」
「それは深刻ですね」
田中が考え込んだ。
「どこの国が関与しているか、心当たりはありますか?」
「いくつか推測はありますが、確証はありません」
山﨑が答えた。
「ただし、アジア系の特徴を持つ兵士が多く確認されています。とはいっても、レフュラン王国でも人種の五分の一はアジア系ですから、その兵士が全員地球から来たかどうかはわかりません」
その夜、使節団は領主邸の客室で夕食をとりながら、情報交換を続けた。
「一千年以上前から外交関係があったなんて、信じられません」
山本がつぶやいた。
「それなら、なぜ今回私たちが派遣されたんでしょう?」
「私たちは日本国や政府の要請によって動いているのではありません。秦一族の使命として代々門を守っているにすぎません。つまり、今回のようなことには私たちだけでは対応できないからでしょう。それに」
山﨑が説明した。
「これまでは、せいぜい数人程度の交流でした。しかし、今回の事態は本格的な調査団と、場合によっては軍事的な対応も必要かもしれません」
クロストロフが口を開いた。
「プロネスの戦力はどの程度でしょうか?」
「正確な数は不明ですが、少なくとも数千の兵力があると思われます。それに加えて、地球人の協力者も相当数いるはずです」
ヨルンヘルドが拳を握りしめた。
「許せません。ナリアは私の故郷で友人も多く……」
「気持ちはわかりますが、感情的になっては勝てる戦いも勝てません」
田中がなだめるように言った。
「まずは正確な情報収集が必要です」
「その通りです」
山﨑が頷いた。
「明日は王都に向かい、王都に到着次第レフュラン王に謁見する予定です。うまくいけば王からより詳しい情報が得られるでしょう」
夜が更けると、使節団のメンバーはそれぞれの部屋に戻った。しかし、興奮と緊張で眠れない者も多かった。
田中は窓から夜空を見上げていた。星座が地球とは全く違っている。確実に、別の世界にいることを実感させられる。
「本当に来てしまったんだな……」
隣の部屋では、佐藤が任務の重大さを改めて考えていた。単なる調査ではなく、日本の安全保障にも関わる重要な任務だということが、山﨑の話で明確になった。
「責任重大だ……」
一方、サミアは故郷の仲間たちのことを思っていた。果たして、みんな無事だろうか。宮殿の古代兵器は守られているだろうか。
「明日からが本当の任務の始まりね」
クロストロフとヨルンヘルドは、明日以降の行動について話し合っていた。
「王都での情報収集の後、できるだけ早くナリア皇国に向かいたいが……」
クロストロフが言った。
「ええ、私もです」
ヨルンヘルドが頷いた。
「でも、使節団の安全も考えなければなりませんから」
自衛隊の特殊部隊員たちは、明日以降の護衛計画を検討していた。
「極力戦闘行為を避けながらの移動となるだろうが、日本のように安全な移動はできないと考えられる。万が一戦闘となった場合は、地球とは全く違う戦い方もありうると想定しなければならない。また、警護対象の人命に関わらない限り、基本、人前での火器の使用は禁止だ」
隊長が部下たちに注意を促した。
「剣と魔法という要素を考慮して、柔軟に対応するように」
「了解しました」
その夜、異世界の月が静かに館を照らしていた。地球の月とは微妙に色合いが違い、少し青みがかって見える。
使節団十二名は、それぞれ違う思いを抱きながらも、同じ使命感を共有していた。日本の安全のため、そして平和な世界を守るため、この困難な任務を成功させなければならない。
明日は王都に向けて出発する。そこで得られる情報が、今後の行動を大きく左右することになるだろう。
「もちろん、我々のことは極秘扱いになっています。今の政府の中にはきっと知る人は誰もいないでしょう。門を巡って必要が生じなければ何もしないのが基本ですから」
山﨑の説明によると、平安時代から密かに異世界との外交関係が続いているという。
「それでは、私たちの任務は……」
田中が困惑しながら聞いた。
「こちらにくる必要がなかった。無意味だったということですか?」
「いえいえ、そんなことはありません」
山﨑は首を振った。
「今回の事態は、これまでとは全く違います。プロネスと地球人の連合による攻撃なんて、前例がありません。それに、まだ正確な情報の一つも得られていません。私たちだけでは対応しきれないレベルの問題です」
山﨑は地図を広げながら続けた。
「まずは、わかっている現在の状況を説明します。ナリア皇国は北部の三分の一を占領され、首都も危険な状態なのではないかと推測されます。プロネスは地球の軍事技術を取り入れており、従来の戦闘方法や魔法だけでは対抗が困難になっているそうです」
「地球の軍事技術?」
佐藤が身を乗り出した。
「具体的にはどのような?」
「火器類、爆発物、そして通信機器です。特に問題なのは、彼らが組織的な戦術を取るようになったことです」
サミアが暗い表情で補足した。
「私がラングームで見た時には、ゴムボートや砲撃もありました。明らかに地球の技術です」
「それは深刻ですね」
田中が考え込んだ。
「どこの国が関与しているか、心当たりはありますか?」
「いくつか推測はありますが、確証はありません」
山﨑が答えた。
「ただし、アジア系の特徴を持つ兵士が多く確認されています。とはいっても、レフュラン王国でも人種の五分の一はアジア系ですから、その兵士が全員地球から来たかどうかはわかりません」
その夜、使節団は領主邸の客室で夕食をとりながら、情報交換を続けた。
「一千年以上前から外交関係があったなんて、信じられません」
山本がつぶやいた。
「それなら、なぜ今回私たちが派遣されたんでしょう?」
「私たちは日本国や政府の要請によって動いているのではありません。秦一族の使命として代々門を守っているにすぎません。つまり、今回のようなことには私たちだけでは対応できないからでしょう。それに」
山﨑が説明した。
「これまでは、せいぜい数人程度の交流でした。しかし、今回の事態は本格的な調査団と、場合によっては軍事的な対応も必要かもしれません」
クロストロフが口を開いた。
「プロネスの戦力はどの程度でしょうか?」
「正確な数は不明ですが、少なくとも数千の兵力があると思われます。それに加えて、地球人の協力者も相当数いるはずです」
ヨルンヘルドが拳を握りしめた。
「許せません。ナリアは私の故郷で友人も多く……」
「気持ちはわかりますが、感情的になっては勝てる戦いも勝てません」
田中がなだめるように言った。
「まずは正確な情報収集が必要です」
「その通りです」
山﨑が頷いた。
「明日は王都に向かい、王都に到着次第レフュラン王に謁見する予定です。うまくいけば王からより詳しい情報が得られるでしょう」
夜が更けると、使節団のメンバーはそれぞれの部屋に戻った。しかし、興奮と緊張で眠れない者も多かった。
田中は窓から夜空を見上げていた。星座が地球とは全く違っている。確実に、別の世界にいることを実感させられる。
「本当に来てしまったんだな……」
隣の部屋では、佐藤が任務の重大さを改めて考えていた。単なる調査ではなく、日本の安全保障にも関わる重要な任務だということが、山﨑の話で明確になった。
「責任重大だ……」
一方、サミアは故郷の仲間たちのことを思っていた。果たして、みんな無事だろうか。宮殿の古代兵器は守られているだろうか。
「明日からが本当の任務の始まりね」
クロストロフとヨルンヘルドは、明日以降の行動について話し合っていた。
「王都での情報収集の後、できるだけ早くナリア皇国に向かいたいが……」
クロストロフが言った。
「ええ、私もです」
ヨルンヘルドが頷いた。
「でも、使節団の安全も考えなければなりませんから」
自衛隊の特殊部隊員たちは、明日以降の護衛計画を検討していた。
「極力戦闘行為を避けながらの移動となるだろうが、日本のように安全な移動はできないと考えられる。万が一戦闘となった場合は、地球とは全く違う戦い方もありうると想定しなければならない。また、警護対象の人命に関わらない限り、基本、人前での火器の使用は禁止だ」
隊長が部下たちに注意を促した。
「剣と魔法という要素を考慮して、柔軟に対応するように」
「了解しました」
その夜、異世界の月が静かに館を照らしていた。地球の月とは微妙に色合いが違い、少し青みがかって見える。
使節団十二名は、それぞれ違う思いを抱きながらも、同じ使命感を共有していた。日本の安全のため、そして平和な世界を守るため、この困難な任務を成功させなければならない。
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