アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ

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 一方、ユリナスたちは古代施設の修復作業を検討していた。
「写真を見る限りでは、この扉を開くには多分特殊な工具を作る必要がありますね」
 ユリナスが撮影してきた写真を見ながら説明した。
「パネルらしきものがあることと、特殊なネジのようなもので固定されていることがわかります」
「ドライバーのような工具でしょうか?」
 田中が聞いた。
「ネジの頭に当たる形状に、いくつか種類がありそうですが、近くの鍛冶屋で作ってもらえると思います」
 ユリナスが提案した。
「急いで近くの村に戻り、工具の製作を依頼しましょう」

 一行は村の鍛冶屋を訪れた。そこの工房主人は、屈強な体に二メートルを超える体格の持ち主だった。しかし、その表情は穏やかで、知性に満ちていた。
「これらの工具を作ることはできますか?」
 ユリナスが写真から割り出した形状を説明した。
「少し変わった形ですが、作れないことはありません」
 工房主人が答えた。
「なんだか、この形状には見覚えがあります」
「見覚えが?」
 田中が興味深そうに聞いた。
「俺の出身地であるテンジークという国の僧侶がさ、似たような形の棒がついた神具を持っていたように思うなあ」
「ああ、やはりテンジーク出身の方でしたか。見た感じで、そうではないかと思っていました」
 ユリナスが応える。
 工房主人は、軽く頷くと語り始めた。
「テンジークはね。いいところなんだよ。テンジークに住む者は皆、強く優しく賢い人たちですしね」

「テンジークでは、昔から戦士たちは獣の姿の兜をつけて戦います」
 工房主人の話に、田中たちは興味を示した。
「獣の兜ですか?」
 山本が聞いた。
「はい。狼や熊、虎などの形をした兜です。それぞれに意味があり、戦士の専門や性格を表しています。でも、俺がいた頃は猪が一番人気だったかなあ。相手に向かって勇敢に突っ込んでいくでしょ。俺も子どもの頃は憧れましたよ」
 佐藤が思い出したように言った。
「テンジーク……それは天竺のことでしょうか?」
「天竺?」
 工房主人が首をかしげた。
「どのような国ですか?」
「昔になりますが、我々の国では、ある国のことを天竺と呼んでいました」
 田中が説明した。
「宗教の発祥地として、憧れの国とされていました」
「なるほど」
 工房主人が頷いた。
「確かに、テンジークは古い歴史を持つ国です。多くの宗教や哲学が生まれた土地でもあります」
 ユリナスが質問した。
「テンジークまでは、どのくらいの距離があるのでしょうか?」
「ここからだと、馬で一週間ほどの旅になるかなあ」
 工房主人が答えた。
「ただし、今はナリアで争いがあるみたいで、行かない方がいいぞ。山脈を回っていけば大丈夫かもしれないが、四週間はかかるかなあ」
「争いですか?」
 田中が心配そうに聞いた。
「そうだよ。プロネスのやつらが各地で暴れているらしいんだよ。そのうちテンジークも狙われるんじゃないかっていう噂があって、俺は心配だよ」
 一同は暗い表情になった。問題は予想以上に深刻で、広範囲に及んでいるようだった。

 工具の製作には半日ほどかかる予定だったので、使節団は村で情報収集を行ったが、いつもと変わらないといった話す者もあれば、大変なことが起きているという者もいて、ナリアの正確な情報はなかなか得られなかった。

 夕方になって、ついに工具が完成した。
「見事な仕上がりです」
 ユリナスが工具を手に取って確認した。
「これがあれば、扉を開くことができるでしょう」
「それでは、明日早朝に出発しましょう」
 田中が提案した。
「一刻も早く、施設を修復する必要があります」

 その夜、宿屋で休息を取りながら、使節団は明日の作業について話し合った。
「扉の向こうに何があるか、予想はつきますか?」
 佐藤が不安そうに聞いた。
「恐らく、マナ生成施設でしょう」
 ユリナスが答えた。
「そこで、破損箇所を修理する必要があります」
「危険はありませんか?」
 山本が心配した。
「マナが濃いことくらいですが、皆さんなら大丈夫なはずですが、ある程度のリスクはあります。気分が悪くなるようなことがあったら、すぐに現場を離れるようにしてください」
 ユリナスが正直に答えた。
「古代の技術ですから、予期しない反応が起こる可能性もあります。全く修理できない可能性も……」
「しかし、放置すれば瘴気の被害はさらに拡大します」
 サミアが付け加えた。
「それに、プロネス族もこの施設を狙ってくる可能性があります」
 田中が決意を固めた。
「そうですね。瘴気を出し続けている限り、ここに古代の遺物があると言っているようなものですから……わかりました。明日、全力で作業にあたりましょう」

 一方、地球では各国の艦船が緊張をはらんで対峙していた。東シナ海から日本海にかけて、史上稀に見る軍事的緊張状態が続いている。
 そしてC国西安から異世界に入った五人の研究者たちは巨人族と遭遇し、文字通り未知との遭遇を体験していた。
 複数の世界で同時に危機が進行する中、すべての運命が一つの結末に向かって収束しつつあった。
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