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一方その頃、日本では重要な会談が始まろうとしていた。
東京都内の外務省会議室。日本政府の代表団とC国の代表団が、緊張した面持ちで向かい合っていた。
「本日は、両国間の懸案事項について率直な意見交換をしたいと考えております」
日本側の首席代表、外務審議官の石川が口を開いた。
「まず、貴国による我が国近海での違法な調査活動について」
「その前に」
C国の代表、外交部副部長の張が手を上げた。
「我々が確認しなければならない重要な事項があります」
張は鞄から一枚の写真を取り出し、テーブルに置いた。
石川たち日本側代表は、その写真を凝視した。不鮮明ではあるが、門のような構造物をくぐろうとしている武装した人物たちが写っている。その服装は、日本の陸上自衛隊のものに見えた。
「これは……どこで撮影されたものですか」
石川が慎重に尋ねた。
「偶然です」
張が冷静に答えた。
「中東地域に潜伏していた我が国の諜報員の一人が手に入れました。日本の自衛隊員が、未確認の施設に侵入しようとしている場面です」
「これは一体……」
日本側の代表たちが顔を見合わせた。
「日本は国際的な協定を破りました」
張が厳しい口調で告げた。
「中東地域での軍事活動は、国連の監視下に置かれているはずです。それを無視して、このような行動を取るとは」
「お待ちください」
石川が手を上げた。
「その前に、貴国による我が国近海での違法な調査活動について説明していただけますか。また、我が国の遺跡から出土した遺物の盗難事件についても、貴国の関与が疑われています」
「我が国の海上での調査活動は、我が国の正当な権利です」
張が即座に反論した。
「また、遺物の盗難とは何のことを言っているのか、全く見当もつきません。根拠のない主張は控えていただきたい」
石川は深く息を吸った。感情的になってはいけない。冷静に、事実を確認しなければ。
「この写真をもう一度、詳しく見せていただけますか」
写真を手に取った石川は、日本側の防衛省関係者に目配せをした。自衛隊出身の顧問、三島が写真を受け取り、慎重に観察する。
不鮮明な写真だが、確かに日本の陸上自衛隊の制服によく似ている。しかし……
「これは」
三島が小声で石川に耳打ちした。
「携帯している銃の形状が違います。我が国の制式装備ではありません」
石川は頷いた。写真をさらに詳しく見ると、確かに装備の細部が異なっている。
「張副部長」
石川が写真を返しながら言った。
「この写真の人物は、日本の自衛隊員ではありません」
「何を根拠に」
「装備が我が国のものと異なります」
三島が説明した。
「制服は似ていますが、携帯している武器、装備品の配置、階級章の位置など、細部が全く違います。これは偽装です」
「それは言い逃れではありませんか」
張が眉をひそめた。
「日本はそのような行動を支持していません」
石川が明確に述べた。
「また、自衛隊員によるそのような行動は、全く確認されておりません。これは何者かによる偽装工作です」
張は冷ややかな笑みを浮かべた。そして、再び鞄から別の写真を取り出した。
「では、こちらはいかがでしょうか」
新しい写真には、数名の人物がハイエースに乗り込んでいる様子が写っていた。
石川の顔色が変わった。
「こちらの方々は、我が国の情報では自衛隊員であると確認されています」
張がゆっくりと言葉を続けた。
「この後、彼らはどちらに向かわれたのでしょうか。もしかして……アガルタではありませんか」
会議室に重い沈黙が落ちた。
石川は答えに窮していた。確かに、写真には久世たち自衛隊員の姿が写っている。否定することはできない。
「これは……」
石川が口を開こうとしたが、適切な言葉が見つからなかった。
「お答えいただけないのですか」
張が畳みかけた。
「日本は、国際社会に対して、アガルタとの接触について何も報告していません。それどころか、自衛隊員を派遣していたとは。これは重大な国際協定違反です」
「待ってください」
石川が必死に言葉を探した。
「これには正当な理由が……」
「正当な理由?」
張が冷たく笑った。
「では、その理由を国際社会に説明できるのですか。なぜ日本だけが、アガルタとの接触を独占しようとしているのか。なぜ、他国を排除して、秘密裏に行動しているのか」
石川は額に汗が滲むのを感じた。
写真の中の久世たちは、確かに使命を帯びてアガルタに向かった。それは日本政府の承認の下での行動だった。しかし、それを今ここで認めることは、国際的な非難を招くことになる。
かといって、否定すれば、嘘をついたことになり、さらに信用を失う。
「張副部長」
石川が慎重に言葉を選んだ。
「この件については、協議の上で、改めて回答させていただきたいと思います」
「逃げるのですか」
張が冷ややかに言った。
「日本の誠実さが問われていますよ、石川審議官」
会議室の空気は、凍りついたように冷たかった。
窓の外では、東京の街が平和に見える。しかし、この部屋の中では、国際的な外交戦が静かに、しかし激しく繰り広げられていた。
石川は心の中で呟いた。
(一体、誰が我々の行動を監視しているのだ。そして、なぜこのタイミングでC国がこの情報を持っているのか)
アガルタをめぐる謎は、ますます深まるばかりだった。
東京都内の外務省会議室。日本政府の代表団とC国の代表団が、緊張した面持ちで向かい合っていた。
「本日は、両国間の懸案事項について率直な意見交換をしたいと考えております」
日本側の首席代表、外務審議官の石川が口を開いた。
「まず、貴国による我が国近海での違法な調査活動について」
「その前に」
C国の代表、外交部副部長の張が手を上げた。
「我々が確認しなければならない重要な事項があります」
張は鞄から一枚の写真を取り出し、テーブルに置いた。
石川たち日本側代表は、その写真を凝視した。不鮮明ではあるが、門のような構造物をくぐろうとしている武装した人物たちが写っている。その服装は、日本の陸上自衛隊のものに見えた。
「これは……どこで撮影されたものですか」
石川が慎重に尋ねた。
「偶然です」
張が冷静に答えた。
「中東地域に潜伏していた我が国の諜報員の一人が手に入れました。日本の自衛隊員が、未確認の施設に侵入しようとしている場面です」
「これは一体……」
日本側の代表たちが顔を見合わせた。
「日本は国際的な協定を破りました」
張が厳しい口調で告げた。
「中東地域での軍事活動は、国連の監視下に置かれているはずです。それを無視して、このような行動を取るとは」
「お待ちください」
石川が手を上げた。
「その前に、貴国による我が国近海での違法な調査活動について説明していただけますか。また、我が国の遺跡から出土した遺物の盗難事件についても、貴国の関与が疑われています」
「我が国の海上での調査活動は、我が国の正当な権利です」
張が即座に反論した。
「また、遺物の盗難とは何のことを言っているのか、全く見当もつきません。根拠のない主張は控えていただきたい」
石川は深く息を吸った。感情的になってはいけない。冷静に、事実を確認しなければ。
「この写真をもう一度、詳しく見せていただけますか」
写真を手に取った石川は、日本側の防衛省関係者に目配せをした。自衛隊出身の顧問、三島が写真を受け取り、慎重に観察する。
不鮮明な写真だが、確かに日本の陸上自衛隊の制服によく似ている。しかし……
「これは」
三島が小声で石川に耳打ちした。
「携帯している銃の形状が違います。我が国の制式装備ではありません」
石川は頷いた。写真をさらに詳しく見ると、確かに装備の細部が異なっている。
「張副部長」
石川が写真を返しながら言った。
「この写真の人物は、日本の自衛隊員ではありません」
「何を根拠に」
「装備が我が国のものと異なります」
三島が説明した。
「制服は似ていますが、携帯している武器、装備品の配置、階級章の位置など、細部が全く違います。これは偽装です」
「それは言い逃れではありませんか」
張が眉をひそめた。
「日本はそのような行動を支持していません」
石川が明確に述べた。
「また、自衛隊員によるそのような行動は、全く確認されておりません。これは何者かによる偽装工作です」
張は冷ややかな笑みを浮かべた。そして、再び鞄から別の写真を取り出した。
「では、こちらはいかがでしょうか」
新しい写真には、数名の人物がハイエースに乗り込んでいる様子が写っていた。
石川の顔色が変わった。
「こちらの方々は、我が国の情報では自衛隊員であると確認されています」
張がゆっくりと言葉を続けた。
「この後、彼らはどちらに向かわれたのでしょうか。もしかして……アガルタではありませんか」
会議室に重い沈黙が落ちた。
石川は答えに窮していた。確かに、写真には久世たち自衛隊員の姿が写っている。否定することはできない。
「これは……」
石川が口を開こうとしたが、適切な言葉が見つからなかった。
「お答えいただけないのですか」
張が畳みかけた。
「日本は、国際社会に対して、アガルタとの接触について何も報告していません。それどころか、自衛隊員を派遣していたとは。これは重大な国際協定違反です」
「待ってください」
石川が必死に言葉を探した。
「これには正当な理由が……」
「正当な理由?」
張が冷たく笑った。
「では、その理由を国際社会に説明できるのですか。なぜ日本だけが、アガルタとの接触を独占しようとしているのか。なぜ、他国を排除して、秘密裏に行動しているのか」
石川は額に汗が滲むのを感じた。
写真の中の久世たちは、確かに使命を帯びてアガルタに向かった。それは日本政府の承認の下での行動だった。しかし、それを今ここで認めることは、国際的な非難を招くことになる。
かといって、否定すれば、嘘をついたことになり、さらに信用を失う。
「張副部長」
石川が慎重に言葉を選んだ。
「この件については、協議の上で、改めて回答させていただきたいと思います」
「逃げるのですか」
張が冷ややかに言った。
「日本の誠実さが問われていますよ、石川審議官」
会議室の空気は、凍りついたように冷たかった。
窓の外では、東京の街が平和に見える。しかし、この部屋の中では、国際的な外交戦が静かに、しかし激しく繰り広げられていた。
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(一体、誰が我々の行動を監視しているのだ。そして、なぜこのタイミングでC国がこの情報を持っているのか)
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