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湯来町にある隔離施設内の検査室で、田中たち使節団は帰還後の健康チェックを受けていた。
防護服を着た医師たちが、血液検査、体温測定、レントゲン撮影と、次々と検査を行っていく。アガルタから持ち帰った可能性のある病原体やウイルスを確認するための、標準的な手順だった。
「では、検査結果が出るまで、こちらの部屋でお待ちください」
医師に案内されて、田中たち6名は隣の部屋に移動した。
そこには、ガラス越しではあったが、吉澤、安藤、鮎川が待っていた。
「お疲れ様でした」
吉澤が労いの言葉をかけた。
「無事に戻られて何よりです」
「ありがとうございます」
田中が深々と頭を下げた。
「今回の調査で、重要な情報を得ることができました」
「詳しく聞かせてください」
鮎川がノートパソコンを開いた。
田中が話し始めた。
「今回の一連の騒動の原因が判明しました」
三人が身を乗り出した。
「それは、自分たちが虐げられていると感じていたプロトア族の一部勢力に、中東を拠点とする過激派勢力らしい組織が接触したことが発端でした」
「中東の過激派が……」
吉澤が眉をひそめた。
「彼らは、過去の遺物はもともと自分たちのものであるという発想を持っています」
佐藤が続けた。
「それらを取り戻し、地球もアガルタも征服しようと考えたようです。もっとも、それが神に選ばれた民族として当然と考えているようでしたが」
「そして、さまざまな場所に虚偽の情報をばら撒くことで、混乱を引き起こして、その発覚を妨げようとしたと思われます」
山本が付け加えた。
「なるほど」
安藤が記録を取りながら頷いた。
「他には?」
「ナリアの皇宮は、まるでバベルの塔のような建造物でした」
田中が続けた。
「そこに、アークらしい機械が備え付けられていました」
「アークが……」
鮎川が息を呑んだ。
「また、さまざまな地球の軍服を着た、中東系の顔をした兵士が多数いました」
佐藤が報告した。
「日本の自衛隊、C国の人民解放軍、その他の国の軍服もありました。すべて偽装と判断しました」
「ナリアの皇帝や貴族たちは、後宮に捕らわれていることがわかりました」
山本が続けた。
「また、武装蜂起したのはプロトア族全体ではありません。プロトア内にも穏健派が多くいるという情報も得ました」
「それは重要な情報ですね」
吉澤が頷いた。
「街の状況ですが、皇都近くはあまり被害がありませんが、港湾都市の方は被害が大きいようです」
田中が地図を広げた。
「そちらの方面に、地球からの兵が集中しているようです」
鮎川が心配そうな表情を浮かべた。
「ユリナスさんたちは……帰ってこなかったのですね」
「はい」
田中が申し訳なさそうに答えた。
「彼らは皇帝たちの救出に残りました。必ず無事に帰ってくると信じています」
その頃、アガルタのナリアでは、ユリナスたち三人が後宮の中にいた。
マリオット盲点を利用した魔法で、兵士の目を欺き、後宮に潜入することに成功したのだ。
「皇帝陛下」
ユリナスが小声で呼びかけた。
奥の部屋から、初老の男性が現れた。威厳に満ちた顔立ちだが、疲労の色が濃い。
「ユリナスか……よく来てくれた」
皇帝が安堵の表情を浮かべた。
「ご無事で何よりです」
ユリナスが頭を下げた。
「こちらは、地球からの協力者です」
久世と瀬崎が礼をした。
「地球から……」
皇帝が二人を見つめた。
「そうか、君たちが助けに来てくれたのか」
「はい」
久世が頷いた。
「しかし、状況は厳しいです。まず、お伝えしなければならないことがあります」
「何かね?」
「地球の武器は、完全に物理的な力です」
瀬崎が説明した。
「魔法で防ぐことはできません。銃弾は、防御魔法を貫通します」
皇帝の表情が曇った。
「そうか……それは厳しいな」
「宮殿から抜け出す方法を考えています」
ユリナスが言った。
「秘密の通路を使えば、少人数なら脱出できます」
その時、後宮に囚われていた使用人の一人が近づいてきた。
「あの……」
「どうした?」
皇帝が尋ねた。
「発言をお許し願えるでしょうか?」
「構わん。なにかね」
「地球から来た兵士たちのことですが……」
使用人が小声で話し始めた。
「最近、何人も体調を崩しているんです」
「体調を?」
「はい。熱を出したり、咳き込んだり……中には動けなくなった者もいるようです」
ユリナスと久世が顔を見合わせた。
「彼らは体内にマナを持っていないのかもしれません。」
ユリナスが分析した。
「アガルタ独自の感染症に、対応できなかったということですか?」
「ええ。その仮説が正しければ、彼らは徐々に弱っていく……」
久世が呟いた。
「それは我々にとって有利かもしれません」
しかし、ユリナスは複雑な表情を浮かべた。
「彼らも、誰かに利用されているだけかもしれません。できれば、ひどい状態になる前に引き上げてもらいたいのですが……」
防護服を着た医師たちが、血液検査、体温測定、レントゲン撮影と、次々と検査を行っていく。アガルタから持ち帰った可能性のある病原体やウイルスを確認するための、標準的な手順だった。
「では、検査結果が出るまで、こちらの部屋でお待ちください」
医師に案内されて、田中たち6名は隣の部屋に移動した。
そこには、ガラス越しではあったが、吉澤、安藤、鮎川が待っていた。
「お疲れ様でした」
吉澤が労いの言葉をかけた。
「無事に戻られて何よりです」
「ありがとうございます」
田中が深々と頭を下げた。
「今回の調査で、重要な情報を得ることができました」
「詳しく聞かせてください」
鮎川がノートパソコンを開いた。
田中が話し始めた。
「今回の一連の騒動の原因が判明しました」
三人が身を乗り出した。
「それは、自分たちが虐げられていると感じていたプロトア族の一部勢力に、中東を拠点とする過激派勢力らしい組織が接触したことが発端でした」
「中東の過激派が……」
吉澤が眉をひそめた。
「彼らは、過去の遺物はもともと自分たちのものであるという発想を持っています」
佐藤が続けた。
「それらを取り戻し、地球もアガルタも征服しようと考えたようです。もっとも、それが神に選ばれた民族として当然と考えているようでしたが」
「そして、さまざまな場所に虚偽の情報をばら撒くことで、混乱を引き起こして、その発覚を妨げようとしたと思われます」
山本が付け加えた。
「なるほど」
安藤が記録を取りながら頷いた。
「他には?」
「ナリアの皇宮は、まるでバベルの塔のような建造物でした」
田中が続けた。
「そこに、アークらしい機械が備え付けられていました」
「アークが……」
鮎川が息を呑んだ。
「また、さまざまな地球の軍服を着た、中東系の顔をした兵士が多数いました」
佐藤が報告した。
「日本の自衛隊、C国の人民解放軍、その他の国の軍服もありました。すべて偽装と判断しました」
「ナリアの皇帝や貴族たちは、後宮に捕らわれていることがわかりました」
山本が続けた。
「また、武装蜂起したのはプロトア族全体ではありません。プロトア内にも穏健派が多くいるという情報も得ました」
「それは重要な情報ですね」
吉澤が頷いた。
「街の状況ですが、皇都近くはあまり被害がありませんが、港湾都市の方は被害が大きいようです」
田中が地図を広げた。
「そちらの方面に、地球からの兵が集中しているようです」
鮎川が心配そうな表情を浮かべた。
「ユリナスさんたちは……帰ってこなかったのですね」
「はい」
田中が申し訳なさそうに答えた。
「彼らは皇帝たちの救出に残りました。必ず無事に帰ってくると信じています」
その頃、アガルタのナリアでは、ユリナスたち三人が後宮の中にいた。
マリオット盲点を利用した魔法で、兵士の目を欺き、後宮に潜入することに成功したのだ。
「皇帝陛下」
ユリナスが小声で呼びかけた。
奥の部屋から、初老の男性が現れた。威厳に満ちた顔立ちだが、疲労の色が濃い。
「ユリナスか……よく来てくれた」
皇帝が安堵の表情を浮かべた。
「ご無事で何よりです」
ユリナスが頭を下げた。
「こちらは、地球からの協力者です」
久世と瀬崎が礼をした。
「地球から……」
皇帝が二人を見つめた。
「そうか、君たちが助けに来てくれたのか」
「はい」
久世が頷いた。
「しかし、状況は厳しいです。まず、お伝えしなければならないことがあります」
「何かね?」
「地球の武器は、完全に物理的な力です」
瀬崎が説明した。
「魔法で防ぐことはできません。銃弾は、防御魔法を貫通します」
皇帝の表情が曇った。
「そうか……それは厳しいな」
「宮殿から抜け出す方法を考えています」
ユリナスが言った。
「秘密の通路を使えば、少人数なら脱出できます」
その時、後宮に囚われていた使用人の一人が近づいてきた。
「あの……」
「どうした?」
皇帝が尋ねた。
「発言をお許し願えるでしょうか?」
「構わん。なにかね」
「地球から来た兵士たちのことですが……」
使用人が小声で話し始めた。
「最近、何人も体調を崩しているんです」
「体調を?」
「はい。熱を出したり、咳き込んだり……中には動けなくなった者もいるようです」
ユリナスと久世が顔を見合わせた。
「彼らは体内にマナを持っていないのかもしれません。」
ユリナスが分析した。
「アガルタ独自の感染症に、対応できなかったということですか?」
「ええ。その仮説が正しければ、彼らは徐々に弱っていく……」
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