アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ

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 宮殿内部では、戦闘が激化していた。
 正面広間は制圧されたが、まだ宮殿の奥には過激派の兵士たちが立てこもっている。
「第二隊、報告せよ」
 レオンハルトが通信魔法で呼びかけた。
「東の回廊、制圧完了」
「西の回廊も制圧しました」
 次々と報告が入ってくる。

「よし、順調だ」
 レオンハルトが頷いた。
 クロストロフとヨルンヘルムも宮殿内に入ってきた。
「クロストロフ!ヨルンヘルム!」
 ユリナスが二人を見つけて駆け寄った。
「無事だったか」
 クロストロフが微笑んだ。
「西門は制圧した。サザルン様の部隊が宮殿を包囲している」
「それなら、もう敵に逃げ場はないな」
 ヨルンヘルムが大剣を担いだ。
「残るは、ザルゴンだけだ」
「ザルゴンは宝物庫にいるはずです」
 ユリナスが言った。
「あそこに、金色の機械――アークがあります」
「まさか……」
 クロストロフの顔色が変わった。
「アークを起動させるつもりか」
「その可能性があります」
 久世が言った。
「急ぎましょう」
 一行は宝物庫に向かって走り出した。

 廊下を駆け抜け、階段を上り、やがて宝物庫の前に到着した。
 扉は開いており、中からは人の気配がする。
「気をつけろ」
 レオンハルトが剣を構えた。
 一行が中に入ると、そこにはザルゴンが立っていた。
 その周りには、まだ数十名の過激派の兵士たちがいた。
「来たか」
 ザルゴンが振り返った。
「しかし、もう遅い」
「ザルゴン、投降しろ」
 レオンハルトが剣を向けた。
「お前の負けだ。地球の兵士たちは撤退し、サザルン様の軍勢がこの宮殿を包囲している」

「負け?」
 ザルゴンが笑った。
「まだわからんのか。我々には、まだこれがある」
 ザルゴンが後ろを指差した。
 そこには、金色に輝く巨大な機械――アークが設置されていた。
「まさか……」
 ユリナスが息を呑んだ。
「それを動かすつもりか」
「そうだ」
 ザルゴンが頷いた。
「これを動かせば、アガルタが滅ぶやもしれん。だが、それでいい」
「狂っている……」
 サミアが呟いた。
「プロトアの民を、道連れにする気か」
「我々は虐げられてきた」
 ザルゴンが叫んだ。
「何百年も、何千年も。ならば、世界が滅んでも構わん!」

「それは違う」
 声が響いた。
 サザルンが入ってきた。
「ザルゴン、それは違う」
「サザルン……」
 ザルゴンが歯ぎしりした。
「お前は裏切り者だ」
「いや、お前こそが裏切り者だ」
 サザルンが静かに言った。
「プロトアの民を、お前の野心のために利用した」
「黙れ!」
 ザルゴンが叫んだ。
「お前たちに、何がわかる!」
「わかるさ」
 サザルンが一歩前に出た。
「私も、同じ苦しみを味わってきた。しかし、それは対話によって解決すべきものだった」

「対話だと?」
 ザルゴンが嘲笑った。
「何百年対話してきた?結果は何も変わらなかったではないか!」
「それでも、暴力は答えではない」
 サザルンが言った。
 その言葉に、ザルゴンの周りにいた兵士たちが動揺し始めた。
「ザルゴン様……本当にこれでいいのでしょうか」
 一人の兵士が呟いた。
「黙れ!」
 ザルゴンが怒鳴った。
「もう、引き返せないんだ!」

 ザルゴンがアークに向かって走り出した。
「させない!」
 ヨルンヘルムが駆け出した。
 クロストロフも続く。
 しかし、ザルゴンの方が速かった。
 ザルゴンがアークの前に立ち、起動装置に手を伸ばした。
「止めろ!」
 レオンハルトが叫んだ。
 ザルゴンの指が、装置のスイッチに触れようとした――
 その瞬間、一人の兵士が飛び出した。
「リーダー、やめてください!」
 兵士がザルゴンに体当たりした。

 ザルゴンがよろめき、スイッチから手が離れた。
「貴様!」
 ザルゴンが兵士を睨んだ。
 しかし、その隙にヨルンヘルムとクロストロフがザルゴンを取り押さえた。
「離せ!離せぇぇぇ!」
 ザルゴンが暴れたが、二人の力には敵わなかった。
「終わりだ、ザルゴン」
 クロストロフが言った。
 周りの兵士たちも、次々と武器を置いた。
「投降します」
 兵士たちが膝をついた。

 戦いは、終わった。
 宮殿は奪還され、ザルゴンは捕らえられた。
 アークは起動されることなく、静かにそこに立っていた。
「やった……」
 サミアが安堵のため息をついた。
「終わったのね」
「ああ」
 ユリナスが頷いた。
「ナリアは、取り戻された」
 皇帝が前に出た。
「皆、よくやってくれた」
 皇帝が兵士たち、そしてサザルンを見回した。
「これは、ナリアとプロトアが共に勝ち取った勝利だ」
「陛下……」
 サザルンが頭を下げた。
「これから、我々は新しい関係を築いていきましょう」
「ああ」
 皇帝が頷いた。
「もう、誰も虐げられることのない、真のアガルタを作ろう」
 兵士たちから歓声が上がった。

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