アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ

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 ユリナスは呪文を唱え始めた。
 古代の言葉が、静かに紡がれていく。
 ユリナスの体が、微かに光り始めた。青白い光が、体全体を包み込んでいく。
「ユリナス……」
 サミアが手を握りしめた。
「必ず……戻ってきてね……」
「約束……する……」
 ユリナスが最後の力を振り絞って答えた。
「また……みんなと……」
 光が強くなっていく。
 ユリナスの呼吸が、徐々にゆっくりになっていく。
 心臓の鼓動も、弱くなっていく。

「兄さん!」
 サミアが叫んだ。
 しかし、もう遅かった。
 ユリナスの呼吸が止まった。
 心臓も、動きを止めた。
「ユリナス……ユリナス……」
 サミアが泣き崩れた。

「大丈夫です」
 老治癒師がサミアの肩に手を置いた。
「仮死状態になっただけです。まだ、魂は体の中にいます」
「本当に……?」
 サミアが涙で濡れた顔を上げた。
「はい。しかし、時間がありません」
 老治癒師が真剣な表情で言った。
「できるだけ早く、地球に連れて行かなければなりません」

「すぐに馬車の準備を!」
 皇帝が命じた。
「最速でテンジークに向かうのだ!」
 兵士たちが慌ただしく動き出した。
「私も行きます」
 サミアが立ち上がった。
「当然だ」
 クロストロフが頷いた。
「俺たちも一緒に行く」
「地球まで?」
 久世が驚いた。
「ああ」
 ヨルンヘルムが大剣を担いだ。
「こいつを一人にはできねえよ」
「ありがとう……」
 サミアが二人を見た。

「では、急ぎましょう」
 瀬崎が言った。
「一刻を争います」
 眠ったユリナスが、担架に乗せられた。
 その顔は安らかだが、生気が感じられない。
「ユリナス、必ず助けるから」
 サミアが手を握った。
「待っていてね」
 皇帝が馬車のそばに立った。
「ユリナス、お前は我がナリアの英雄だ」
 皇帝が敬礼した。
「必ず、無事に戻ってこい」

 馬車が動き出した。
 ユリナスを乗せた馬車が、テンジークに向かって走り出した。
 時間との戦いが、始まった。
 果たして、ユリナスは地球で目覚めることができるのか。
 そして、地球の医学は、アークの力が残留する傷を治すことができるのか。
 すべては、これからの数日間にかかっていた。
 一行は、希望と不安を胸に、テンジークへの道を急いだ。
 夕日が沈み、夜が訪れた。
 しかし、馬車は止まることなく、走り続けた。
 ユリナスの命を繋ぐために。
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