アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ

文字の大きさ
73 / 84

73

しおりを挟む
 その時、皇帝が到着した。
「ユリナス!」
 皇帝がユリナスのそばに膝をついた。
「お前は世界を救ったのだ……なのに……」
「陛下……申し訳……ありません……」
 ユリナスが謝ろうとした。
「謝ることなどない」
 皇帝が首を振った。
「お前は英雄だ。真の英雄だ」
 久世が前に出た。
「陛下、地球の医学ならば、何とかなるかもしれません」

「地球の医学?」
 皇帝が久世を見た。
「はい」
 久世が頷いた。
「地球には、魔法とは異なる医療技術があります。火傷の治療も、かなり進んでいます」
「本当?」
 サミアが希望に満ちた目で久世を見た。
「確実とは言えませんが……可能性はあります」
 瀬崎も言った。
「しかし、すぐに地球に行かなければなりません。時間が経てば経つほど、危険です」
「わかった」
 皇帝が立ち上がった。
「側近を呼べ!最短で地球に行ける門を調べるのだ!」

 側近たちが古文書を広げ、必死に調べ始めた。
「陛下」
 一人の側近が報告した。
「テンジークに門があります」
「テンジーク?」
 皇帝が地図を見た。
「ここからどれくらいかかる?」
「馬車で三日です」
「三日か……」
 皇帝が考え込んだ。

「ただし」
 側近が続けた。
「その門は普段閉じています。強引に開けることはきっと可能ですが……」
「何か問題があるのか?」
「おそらく、二度と開かなくなるでしょう。それをテンジークが許可してくれるかは……」
 側近が申し訳なさそうに言った。
「門を開けるには、膨大なマナが必要です。テンジークの地下に蓄えられたマナを全て使い切ることになります」
「二度と開かない……」

 皇帝が呟いた。
「しかし、ユリナスを救えるなら……」
「陛下、お願いします」
 サミアが頭を下げた。
「ユリナスを救ってください」
「もちろんだ」
 皇帝が力強く頷いた。
「すぐにテンジークに使者を送れ。ユリナスを救うため、門を開けてほしいと」
「はい!」
 側近が駆け出していった。

 その時、ユリナスが弱々しく声を出した。
「陛下……」
「ユリナス、喋るな。体力を温存しろ」
 皇帝が優しく言った。
「でも……私の体は……」
 ユリナスが震える声で言った。
「このままだと……地球に着く前に……」
「何を言ってるの」
 サミアが手を握った。
「大丈夫よ、兄さん。すぐに地球に行けるから」
「三日は……持たない……」
 ユリナスが目を閉じた。
「だから……最後の手段を……使う……」
「最後の手段?」
 久世が尋ねた。
「仮死状態に……なる……」
 ユリナスが言った。
「古代魔法で……自分を……眠らせる……」

「仮死状態?」
 サミアが驚いた。
「そんなの危険すぎる!」
「でも……他に……方法が……」
 ユリナスが微笑んだ。
「大丈夫……門を抜けたら……目覚めるように……魔法をかける……」
「ユリナス……」
 クロストロフが言った。
「本当に大丈夫なのか?」
「わからない……」
 ユリナスが正直に答えた。
「でも……これしか……ない……」

 老治癒師が前に出た。
「その魔法は知っています」
 老治癒師が言った。
「古代の記録にあります。しかし、非常に危険です。目覚めない可能性もあります」
「それでも……やる……」
 ユリナスが決意を示した。
「信じて……地球の医学を……」
 サミアが泣きながら頷いた。
「わかったわ……信じる……」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

異世界ランドへようこそ

来栖とむ
ファンタジー
都内から車で1時間半。奥多摩の山中に突如現れた、話題の新名所――「奥多摩異世界ランド」。 中世ヨーロッパ風の街並みと、ダンジョンや魔王城を完全再現した異世界体験型レジャーパークだ。 26歳・無職の佐伯雄一は、ここで“冒険者A”のバイトを始める。 勇者を導くNPC役として、剣を振るい、魔物に襲われ、時にはイベントを盛り上げる毎日。 同僚には、美人なギルド受付のサーミャ、エルフの弓使いフラーラ、ポンコツ騎士メリーナなど、魅力的な“登場人物”が勢ぞろい。 ――しかしある日、「魔王が逃げた」という衝撃の知らせが入る。 「体格が似てるから」という理由で、雄一は急遽、魔王役の代役を任されることに。 だが、演技を終えた後、案内された扉の先にあったのは……本物の異世界だった! 経営者は魔族、同僚はガチの魔物。 魔王城で始まる、まさかの「異世界勤務」生活! やがて魔王の後継問題に巻き込まれ、スタンピードも発生(?)の裏で、フラーラとの恋が動き出す――。 笑えて、トキメいて、ちょっと泣ける。 現代×異世界×職場コメディ、開園!

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

【アラウコの叫び 】第2巻/16世紀の南米史

ヘロヘロデス
歴史・時代
【毎日07:20投稿】 動画制作などを視野に入れてる為、脚本として使いやすい様に、基本は会話形式で書いています。 1500年以降から300年に渡り繰り広げられた「アラウコ戦争」を題材にした物語です。 マプチェ族とスペイン勢力との激突だけでなく、 スペイン勢力内部での覇権争い、 そしてインカ帝国と複雑に様々な勢力が絡み合っていきます。 ※ 現地の友人からの情報や様々な文献を元に史実に基づいて描かれている部分もあれば、 フィクションも混在しています。 HPでは人物紹介や年表等、最新話を先行公開しています。 公式HP:アラウコの叫び youtubeチャンネル名:ヘロヘロデス insta:herohero_agency tiktok:herohero_agency

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する

エルリア
SF
35歳バツイチ。 長年勤めていた清掃会社をクビになり、その日のうちに家族にも見放され。 更にはしがない辺境のボロ商店を運営していた親が急に亡くなり、急遽その船を引き継ぐことに。 そんな中、船の奥を片づけていると倉庫の奥にヒューマノイドを発見。 それが実はアーティファクトと呼ばれる超文明の遺産だと判明したその時から彼の新たな目標が決定した。 そうだ、自分だけの星を買おう。 そこで静かに余生を過ごすんだ、そうだそうしよう。 かくして、壮大すぎる夢に向かって万能美少女ヒューマノイドとの旅が始まったのだった。

処理中です...