アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ

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 その時、皇帝が到着した。
「ユリナス!」
 皇帝がユリナスのそばに膝をついた。
「お前は世界を救ったのだ……なのに……」
「陛下……申し訳……ありません……」
 ユリナスが謝ろうとした。
「謝ることなどない」
 皇帝が首を振った。
「お前は英雄だ。真の英雄だ」
 久世が前に出た。
「陛下、地球の医学ならば、何とかなるかもしれません」

「地球の医学?」
 皇帝が久世を見た。
「はい」
 久世が頷いた。
「地球には、魔法とは異なる医療技術があります。火傷の治療も、かなり進んでいます」
「本当?」
 サミアが希望に満ちた目で久世を見た。
「確実とは言えませんが……可能性はあります」
 瀬崎も言った。
「しかし、すぐに地球に行かなければなりません。時間が経てば経つほど、危険です」
「わかった」
 皇帝が立ち上がった。
「側近を呼べ!最短で地球に行ける門を調べるのだ!」

 側近たちが古文書を広げ、必死に調べ始めた。
「陛下」
 一人の側近が報告した。
「テンジークに門があります」
「テンジーク?」
 皇帝が地図を見た。
「ここからどれくらいかかる?」
「馬車で三日です」
「三日か……」
 皇帝が考え込んだ。

「ただし」
 側近が続けた。
「その門は普段閉じています。強引に開けることはきっと可能ですが……」
「何か問題があるのか?」
「おそらく、二度と開かなくなるでしょう。それをテンジークが許可してくれるかは……」
 側近が申し訳なさそうに言った。
「門を開けるには、膨大なマナが必要です。テンジークの地下に蓄えられたマナを全て使い切ることになります」
「二度と開かない……」

 皇帝が呟いた。
「しかし、ユリナスを救えるなら……」
「陛下、お願いします」
 サミアが頭を下げた。
「ユリナスを救ってください」
「もちろんだ」
 皇帝が力強く頷いた。
「すぐにテンジークに使者を送れ。ユリナスを救うため、門を開けてほしいと」
「はい!」
 側近が駆け出していった。

 その時、ユリナスが弱々しく声を出した。
「陛下……」
「ユリナス、喋るな。体力を温存しろ」
 皇帝が優しく言った。
「でも……私の体は……」
 ユリナスが震える声で言った。
「このままだと……地球に着く前に……」
「何を言ってるの」
 サミアが手を握った。
「大丈夫よ、兄さん。すぐに地球に行けるから」
「三日は……持たない……」
 ユリナスが目を閉じた。
「だから……最後の手段を……使う……」
「最後の手段?」
 久世が尋ねた。
「仮死状態に……なる……」
 ユリナスが言った。
「古代魔法で……自分を……眠らせる……」

「仮死状態?」
 サミアが驚いた。
「そんなの危険すぎる!」
「でも……他に……方法が……」
 ユリナスが微笑んだ。
「大丈夫……門を抜けたら……目覚めるように……魔法をかける……」
「ユリナス……」
 クロストロフが言った。
「本当に大丈夫なのか?」
「わからない……」
 ユリナスが正直に答えた。
「でも……これしか……ない……」

 老治癒師が前に出た。
「その魔法は知っています」
 老治癒師が言った。
「古代の記録にあります。しかし、非常に危険です。目覚めない可能性もあります」
「それでも……やる……」
 ユリナスが決意を示した。
「信じて……地球の医学を……」
 サミアが泣きながら頷いた。
「わかったわ……信じる……」
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