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染色体異常がでる要因 1

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強制中期中絶事件から1ヶ月後。

涼介院長と真弓副院長と絶縁し、警察に突き出されたくなかったら今後一切関わってくるなと親子の縁を切り、安達病院を去った涼真先生、瀬戸父の口添えで京都大学附属病院の生殖医療センターで働く事になり、久保教授の後釜として生殖医療分野の教授を目指し始めた。

私の母と瀬戸父先生にしでかした凍結した卵子と精子の悪用と、真弓副院長が綾音先生のお腹の中の赤ちゃんを中絶しようとした事が赦せず、涼真先生は2人がしでかした事の証拠を揃え、警察に渡そうとしていた。
だけど、涼真先生と夫婦としてやっていく事を決めた綾音先生が、警察沙汰にすると涼真先生が築いてきた医師としての立場も失ってしまうと汚名になる事を公にしたくないと止めた。


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綾音先生に誘われて、涼真先生と暮らしている賃貸マンションに一輝先生と遊びにきた。

土曜日のお昼時。
綾音先生がホットプレートでチーズタッカルビと、にらたっぷりの豚肉チヂミにチャプチェと手作りの韓国料理を振る舞ってくれた。

「久保教授、変人だと思っていたけど、京都大学の生殖医療分野の教授なだけあって知識量が半端ない」

大学6年生の時に臨床実習で4週間、京都大学附属病院の生殖医療センターにお世話になった。
大学附属病院だから体外受精と顕微受精の件数は多く、久保教授以外の生殖医療専門医の先生方と培養士さん達から優しく丁寧にマニアックな事まで色々教えて貰ったのを覚えてる。

言動が変人すぎる久保教授が私の遺伝子上の父親かもしれないという現実が受け入れられず、臨床実習が苦痛だったのを覚えてる。


「久保教授曰く、俺と綾音の子供が21トリソミーだったの同じ疾患遺伝子を持っていた事が有力らしい」

染色体異常は高齢による卵子と精子の質の低下が原因と言われている。
20代の時より疾患遺伝子が卵子と精子に多く引き継がれ、パートナーと疾患遺伝子が合ってしまい、染色体異常が発現してしまうらしい。

人は父と母から遺伝子を1組ずつ受け取る2倍体。
遺伝子疾患を引き起こす遺伝子は通常劣性で、父と母から受け取る遺伝子の組の両方にその遺伝子が含まれていなければ発現しない。



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