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「綾音先生、子宮口の状態見ますね……子宮頚管拡張の処置される前だったから問題ないです。開いてないですし、子宮も降りてきてない」

綾音先生からLINEがきてすぐに駆けつけたから、点滴を投与された時間は5分もなかったと思われる。
妊娠18週目は血液量の増加や血管が急激に広がる時期で心臓への負担が大きく、子宮が血管を圧迫するからめまいやふらつきを感じる。
綾音先生の発作は陣痛促進剤によるものではなく、婦人科診察台に身体を固定される時に抵抗して暴れたからだと思うから、妊娠継続は問題ない。

「……とにかく綾音が無事でよかった。呼吸困難起こしてたから死ぬんじゃないかと思って、焦った。まさか母さんがこんなやばい奴だなんて思ってもいなかった」

お腹の中の赤ちゃんにダウン症が見つかると、中絶するよう詰め寄る祖父母はいる。
大阪医療センターで産婦人科の専攻医をしていた時にそういう家族をたくさん見てきた。

真弓副院長が綾音ちゃんにしでかした同意無しの中期中絶手術は医療行為を悪用した犯罪行為だと思う。

警察に通報して刑事事件にすると、涼介院長と真弓副院長がしでかした罪が世間に知られ、安達病院は終わる。
涼真先生の事を考えると家族間のトラブルで終わらせた方がいいのかと悩んだ母は、どうするかを涼真先生と綾音先生に任せる事にした。


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