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愛しい君に side蓮翔
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ハーバードで心臓血管手術を学ぶ日々の中、いつも俺の心の中に咲良がいた。
高遠助教授の紹介で家庭教師を3年間受け持った、綾瀬咲良。
色の白い華奢な桜の花のようなあどけない女子高生だった。
子供から大人に変わる3年間、週2~3勉強を見てきた。
パッチワークが得意な子で、ぬいぐるみも手縫いで作り上げる器用な子だった。
勉強の合間に仕上げた作品に囲まれた部屋。
外科医の資質があると感じた。
父親が旭化成の社長だから創薬に進む思っていたが、咲良は俺と同じ外科医を目指すと言っていた。
咲良と過ごす時間が俺にとっての癒しだった。
心臓外科医として成功するために、学業を首席で卒業するために寝る間を惜しんで勉強をした。
大学5年からハーバードに転学したのはオペ技術を本場で学びたかったからだ。
咲良の東大理III合格が決まった日、俺は彼女にハーバードに行く事を伝えた。
咲良は泣いた。
でも、『頑張ってきて』と笑った。
咲良の部屋で最後に会った日。
『わたしの初めてを貰って下さい。最後の思い出に御褒美で下さい』
3年間、咲良と過ごす中で、俺にとっても咲良が愛しい人になっていた。
この3年間、俺には彼女がいた。
告白されてタイプだったら付き合い、飽きたら放置し別れる。
咲良に手を出さないための捌け口に付き合っていた。
家庭教師失格。
俺は最後の日に咲良を抱いた。
しかも、初めての咲良に何度も何度も避妊具を二箱分使い切るほどに。
避妊はしたが避妊になってなかったかもしれない。
10年後、高遠先生に呼ばれて、東京大学付属病院の心臓外科医兼助教授として日本に帰ってきた。
咲良に会いたい。
日本に帰国したとある夜中。
寝ようとしたら高遠先生から電話がかかってきた。
『順天堂大学病院に至急行ってくれ。
心臓外科で患者が重篤、今いるのは1年目の専門医と救急で担当だった咲良だけみたいで手に負えないらしい』
「すぐに向います」
ハンガーにかけていたスーツを着て、すぐにマンションを出てタクシーに乗って順天堂大学付属病院へ向かった。
心臓外科のオペ室に入ると咲良がレントゲン写真を見ていた。
10年後の咲良は、想像以上にきれいになっていた。
オペ終了後に咲良に話しかけようと思ったら、咲良は救急医療科に呼ばれて行ってしまった。
オペした患者を口実に、しばらく心臓外科医局に居座ったが咲良は来ず、高遠先生の呼び出しで東医大に戻る事にした。
オペをする際、患者の心臓に縫われた跡は細く丁寧で咲良らしさを感じた。
咲良の応急処置は的確だった。
その事を伝えたかった。
高遠先生にお願いして食事に誘ったが咲良は来なかった。
咲良にまた会いたい。
高遠助教授の紹介で家庭教師を3年間受け持った、綾瀬咲良。
色の白い華奢な桜の花のようなあどけない女子高生だった。
子供から大人に変わる3年間、週2~3勉強を見てきた。
パッチワークが得意な子で、ぬいぐるみも手縫いで作り上げる器用な子だった。
勉強の合間に仕上げた作品に囲まれた部屋。
外科医の資質があると感じた。
父親が旭化成の社長だから創薬に進む思っていたが、咲良は俺と同じ外科医を目指すと言っていた。
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大学5年からハーバードに転学したのはオペ技術を本場で学びたかったからだ。
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咲良は泣いた。
でも、『頑張ってきて』と笑った。
咲良の部屋で最後に会った日。
『わたしの初めてを貰って下さい。最後の思い出に御褒美で下さい』
3年間、咲良と過ごす中で、俺にとっても咲良が愛しい人になっていた。
この3年間、俺には彼女がいた。
告白されてタイプだったら付き合い、飽きたら放置し別れる。
咲良に手を出さないための捌け口に付き合っていた。
家庭教師失格。
俺は最後の日に咲良を抱いた。
しかも、初めての咲良に何度も何度も避妊具を二箱分使い切るほどに。
避妊はしたが避妊になってなかったかもしれない。
10年後、高遠先生に呼ばれて、東京大学付属病院の心臓外科医兼助教授として日本に帰ってきた。
咲良に会いたい。
日本に帰国したとある夜中。
寝ようとしたら高遠先生から電話がかかってきた。
『順天堂大学病院に至急行ってくれ。
心臓外科で患者が重篤、今いるのは1年目の専門医と救急で担当だった咲良だけみたいで手に負えないらしい』
「すぐに向います」
ハンガーにかけていたスーツを着て、すぐにマンションを出てタクシーに乗って順天堂大学付属病院へ向かった。
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オペ終了後に咲良に話しかけようと思ったら、咲良は救急医療科に呼ばれて行ってしまった。
オペした患者を口実に、しばらく心臓外科医局に居座ったが咲良は来ず、高遠先生の呼び出しで東医大に戻る事にした。
オペをする際、患者の心臓に縫われた跡は細く丁寧で咲良らしさを感じた。
咲良の応急処置は的確だった。
その事を伝えたかった。
高遠先生にお願いして食事に誘ったが咲良は来なかった。
咲良にまた会いたい。
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