救世主は元彼 もう一度彼女にしてくれますか?

鳴宮鶉子

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関係を終わらせないといけない

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拓人兄と付き合う事になり、渉とのセフレな関係を終わらさないといけないと思ったわたし……。

金曜日の夜に渉に飲みに誘われたけど拓人兄と家族ぐるみで料亭 縁に行く事になったから断った。

「愛菜ちゃんと拓人が遂に付き合う事になって嬉しいよ」

拓人のお父さんはうちの副社長を務めてる。父がBMWに一緒に働いてた拓人兄のお父さんを半ば脅して口説き落として連れてきた。

「愛菜が28で拓人は31だから結婚適齢期出し、すぐに結婚するか?」

付き合う事になったけれど、仕事の後にデートや食事をしたり恋人らしい事は全くしてない。

「付き合うの決めて3日目で、拓人兄とそんな関係になってないから」

「幼馴染で育ったんだから問題ないだろ?今日から拓人のマンションに同棲するから?デキ婚でもいいわ!!」

デリカシーのかけらもない父の太ももを母がつねり、「イテーー」と叫び父は黙った。

「愛菜とこれから関係をゆっくり作っていきます」

食事を終えたら解散した。
明日の朝、拓人兄が車で迎えにきてくれる。行き先は決まってないけれど、ドライブに行く。

土曜日は碧南海浜水族館に連れて行って貰い、日曜日は午後から名古屋駅前まで出て、映画を観てからグランドプリンセスホテル名古屋の最上階にあるフレンチレストランでディナーをとった。
拓人兄は紳士的にわたしをエスコートしてくれる。
清い交際をスタートさせた。

「桐谷さん、社長令嬢って本当?しかも菅野係長と婚約をしたって本当?」

月曜日、会社へ行くと部署内で噂をされてた。

料亭 縁でわたしと拓人兄が双方の両親と食事をしてるのを誰かが目撃したらしく、結納を交わしたと勘違いされてた。

「社長の娘なのは確かだけど、菅野係長とは婚約はしてないです」

席に着き、パソコンの電源を入れる。
そして、仕事が忙しいという空気を醸し出す。

「愛菜とは結婚前提でお付き合いをしてるよ」

部署内に入ってきた拓人兄がそんな発言をするから、どよめきが起きた。

「……愛菜。堂々と付き合おう。隠れて付き合わなくても大丈夫。愛菜は俺の許嫁だから、小さい時から愛菜を守るためだけに俺はいた。愛菜に一言でも陰口をいう奴がいたら、そいつは地方の工場勤務にする」

会社から帰ってから、母に拓人兄の許嫁発言について聞いたら、子供の時に冗談でそういうやりとりをした事があったらしい……。

父は、『拓人はうちの会社を大きくするために俺や親父と同じハーバード大学へ行ってBMWで修行してきた男。拓人なら、愛菜を任せられる』と言って、わたしが拓人兄と結婚する事を望んでるようだった。

“愛菜、今週の金曜の夜は空いてる?”

水曜日の夜に渉からLINEメッセージがきた。
付き合いはじめてすぐに親を含む食事会をしたり、会社でわたしとの交際を大っぴらに話し、しかも許嫁発言をした拓人兄に対して、好きかも知れないと思った気持ちは冷めてた。

……でも、会社のみんなも両親達も、わたしと拓人兄が結婚前提に付き合ってると思ってしまった。


ーー  金曜日の夜
知立駅近くのタワーマンションに拓人兄が住んでいるから、渉が住んでる土橋駅に行く事にした。

「土橋駅にも居酒屋ビルがあるんだね」

「大きな駅の側にはどこでもあるだろっ」

海鮮居酒屋の中に入り、適当に料理を食べながらビールを飲む。
今日は名鉄に乗って帰らないといけないから酔っ払えない。
飲みたい気分だけど、ちびちびとビールを口にした。

仕事の話題で盛り上がり、料理を食べ終えたところで、

「……渉、あのね、わたし、実はデンタの社長令嬢で、父の親友で副社長の息子と結婚前提で付き合うようになったのだから……」

「そっか……愛菜がデンタの御令嬢なのは知ってた。社長の名字が桐谷でトミタに出入りしてる愛菜がデンタの社長令嬢だと言う噂が流れてたから。
わかった。もうこの後の関係は終わりだな。
たまに食事だけでも行こうな。愛菜は大学時代に一緒に学んだ友だから」

「…… うん」

食事を終え、駅の改札まで渉に見送られ、別れた。
渉と友達としての関係は変わらない。
……でも、今までみたいに週末に会えなくなる事を悲しく感じた。



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