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薄暗い夜更けの伊豆韮山 浄蓮の滝。
『……この身体ももう持たないわ。呪力を使い過ぎて、この有様。霊魂になり千年の時が経った。ーー私の妖力は永遠ではなかった。消え失せる』
滝に打たれ呪力を回復させている長い白髪の老婆が、皺だらけの枯れた顔を、枯れ木のような細い両手で隠し、老婆が嘆く。
『ーー政子、神通力の器に憑依するなら、今だと思うが……』
戦国武将鎧を纏った男が、老婆に近づき、声をかけた。
『……貴方は若い綺麗な娘が好きですからね。私には貴方しかいないのに。世継ぎを残すためって、浮気を繰り返した!!』
『 ………… 』
老婆が振り向き、キッと男を睨みつけた。
2人の話している内容から、老婆が北条政子で、男が源頼朝で間違いないと思う。
私は今、夢の中で千里眼を使って、2人の会話を盗み聞きしてる。
『……政子、お前が消えたら私も消える。もう1度、私は天下を取りたい。力を貸してくれ』
滝に打たれてる、枯れ木のような姿になった北条政子を、若者の姿をした源頼朝が背後から抱きしめる。
『……無理よ。神通力の器の側にはいつも人間離れした安倍晴明の力を受け継ぐ者がいる』
『ーーできる。陰陽力を使い果たさせた後に、私があの男に憑依する。政子、大和の国だけでなく、世界を手に入れよう!!』
北条政子と源頼朝は、とんでもない事を企てようとしていた。
「……そうか。千里眼なのか予知夢なのかわからないが、源頼朝と北条政子がそんな事を話していたか。記録によると北条政子は白髪の老婆ではない。ここ百年、源頼朝を見た者はいるが北条政子を見た者がいないのはそのせいかもしれないな」
2日間眠っている間に見た夢の内容を藤堂省庁と晴翔くんに話す。
「ーーお前、もっと寝ろっ!!アイツらが次に何やらかそうとしてるか、探ってこい!!」
晴翔くんは無茶苦茶だ。
2日間眠り続けたのに、疲れが取れない。
「見る対象のオーラを探してみる千里眼は神通力がなくてもできるが、会った事がない感じた事がない対象に対しての千里眼は神通力がないとできない。寿命に関わるかもしれない。現に、美桜さん、眠ってたのに疲れきっている」
神通力は未来を変える力。
神通力を持って生まれた北条政子の魂は死後千年この世に存在続け、呪力で源頼朝の魂も側にいさせた。
神通力は死者の魂をこの世に留まらせ、呪術で力を与える事ができる。
「……卑弥ちゃんは北条政子より1世代前の神通力の使い手だけど、私と同世代の姿だったよ」
卑弥ちゃんの事を思い出す。
卑弥ちゃんはいつも私の側にいて、私の事を気遣ってくれてた。怨霊ではなかった。
「ぼっちのお前の側にいて相手してくれてたのが卑弥呼だよな。悪のオーラは全く感じなかった。呪力を使わず存在しているだけだから老衰してなかったのかもな」
私のそばにいた卑弥ちゃんを晴翔くんは見てた。
「卑弥ちゃんは怨霊じゃないよ。友達だよ」
「唯一の友達だったもんな。……美桜の側にずっと居たのに急に姿を見せなくなったの、もしかしたら北条政子に狙われて呪力を吸収されて消される危険性を感じたからかもしれないな」
卑弥ちゃんは晴翔くんに祓われる事を懸念して、姿を現さなくなったんだと私は思ってた。
現に、卑弥ちゃんの事を怨霊だと陰陽師達は思ってる。
「……そうかもしれないな。美桜さんを晴翔に預けてから姿を現さなくなったのは、晴翔が最強だから任せて大丈夫だと思ったからかもしれない」
藤堂省庁が晴翔くんに同調する。
「美桜、卑弥呼に除霊しないから、俺がお前の事も護るから出てきてくれと呼びかけてくれないか?」
晴翔くんに言われ、『卑弥ちゃん、晴翔くんが卑弥ちゃんの事を除霊しないし守るって言ってくれてるから、お願い、出てきて!!』と、卑弥ちゃんに念を飛ばす。
『……美桜さん、ご無沙汰しております』
卑弥ちゃんは、半年ぶりに、私の前に姿を現してくれた。
『……この身体ももう持たないわ。呪力を使い過ぎて、この有様。霊魂になり千年の時が経った。ーー私の妖力は永遠ではなかった。消え失せる』
滝に打たれ呪力を回復させている長い白髪の老婆が、皺だらけの枯れた顔を、枯れ木のような細い両手で隠し、老婆が嘆く。
『ーー政子、神通力の器に憑依するなら、今だと思うが……』
戦国武将鎧を纏った男が、老婆に近づき、声をかけた。
『……貴方は若い綺麗な娘が好きですからね。私には貴方しかいないのに。世継ぎを残すためって、浮気を繰り返した!!』
『 ………… 』
老婆が振り向き、キッと男を睨みつけた。
2人の話している内容から、老婆が北条政子で、男が源頼朝で間違いないと思う。
私は今、夢の中で千里眼を使って、2人の会話を盗み聞きしてる。
『……政子、お前が消えたら私も消える。もう1度、私は天下を取りたい。力を貸してくれ』
滝に打たれてる、枯れ木のような姿になった北条政子を、若者の姿をした源頼朝が背後から抱きしめる。
『……無理よ。神通力の器の側にはいつも人間離れした安倍晴明の力を受け継ぐ者がいる』
『ーーできる。陰陽力を使い果たさせた後に、私があの男に憑依する。政子、大和の国だけでなく、世界を手に入れよう!!』
北条政子と源頼朝は、とんでもない事を企てようとしていた。
「……そうか。千里眼なのか予知夢なのかわからないが、源頼朝と北条政子がそんな事を話していたか。記録によると北条政子は白髪の老婆ではない。ここ百年、源頼朝を見た者はいるが北条政子を見た者がいないのはそのせいかもしれないな」
2日間眠っている間に見た夢の内容を藤堂省庁と晴翔くんに話す。
「ーーお前、もっと寝ろっ!!アイツらが次に何やらかそうとしてるか、探ってこい!!」
晴翔くんは無茶苦茶だ。
2日間眠り続けたのに、疲れが取れない。
「見る対象のオーラを探してみる千里眼は神通力がなくてもできるが、会った事がない感じた事がない対象に対しての千里眼は神通力がないとできない。寿命に関わるかもしれない。現に、美桜さん、眠ってたのに疲れきっている」
神通力は未来を変える力。
神通力を持って生まれた北条政子の魂は死後千年この世に存在続け、呪力で源頼朝の魂も側にいさせた。
神通力は死者の魂をこの世に留まらせ、呪術で力を与える事ができる。
「……卑弥ちゃんは北条政子より1世代前の神通力の使い手だけど、私と同世代の姿だったよ」
卑弥ちゃんの事を思い出す。
卑弥ちゃんはいつも私の側にいて、私の事を気遣ってくれてた。怨霊ではなかった。
「ぼっちのお前の側にいて相手してくれてたのが卑弥呼だよな。悪のオーラは全く感じなかった。呪力を使わず存在しているだけだから老衰してなかったのかもな」
私のそばにいた卑弥ちゃんを晴翔くんは見てた。
「卑弥ちゃんは怨霊じゃないよ。友達だよ」
「唯一の友達だったもんな。……美桜の側にずっと居たのに急に姿を見せなくなったの、もしかしたら北条政子に狙われて呪力を吸収されて消される危険性を感じたからかもしれないな」
卑弥ちゃんは晴翔くんに祓われる事を懸念して、姿を現さなくなったんだと私は思ってた。
現に、卑弥ちゃんの事を怨霊だと陰陽師達は思ってる。
「……そうかもしれないな。美桜さんを晴翔に預けてから姿を現さなくなったのは、晴翔が最強だから任せて大丈夫だと思ったからかもしれない」
藤堂省庁が晴翔くんに同調する。
「美桜、卑弥呼に除霊しないから、俺がお前の事も護るから出てきてくれと呼びかけてくれないか?」
晴翔くんに言われ、『卑弥ちゃん、晴翔くんが卑弥ちゃんの事を除霊しないし守るって言ってくれてるから、お願い、出てきて!!』と、卑弥ちゃんに念を飛ばす。
『……美桜さん、ご無沙汰しております』
卑弥ちゃんは、半年ぶりに、私の前に姿を現してくれた。
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