broken Heart 〜もう、誰も愛せない〜

鳴宮鶉子

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まさかのヘッドハンティング

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「望月さん、今日は早く上がれたし、夕食、ご一緒しませんか?」

わたしの送り迎え当番は、中津MGと、他社なのに黒崎MGが、ほぼ、引き受けてくれた。

理由は、車通勤が許可されてるのがMGクラス以上だから。
車で送り迎えした方が、頼翔と接触する可能性が減るからと、上司の2人が引き受けてくれた。

「はい。ご一緒させて下さい」

中島MGと黒崎MGは、大学時代の同級生で、大学院修士課程の時は、同じ教授について専門的な事を学んだらしい。
トミタからデンタに週3回出向してくる黒崎MGが、出向時は、わたしの送り迎えをかって出てくれて、色々話してくれた。

ちなみに、中島MGは、わたしと2人きりの時は、いつもの毒舌は出ず、無言になる。


黒崎MGは車を走らせ、ちょっと遠い所にある、ひつまぶしで有名店に連れて行ってくれた。
この前は、味噌煮込みうどんの有名店に連れて行ってくれて、いつも、美味しいご飯を食べに連れて行ってくれる。

ちなみに、中島MGが「腹減った」と連れて行ってくれるのは、す◯家か吉●屋……。

「無理して全部食べなくていいからね。まだ、本調子じゃないんだから」

黒崎MGは、いつもわたしに優しくしてくれる。

車で送り迎えして貰うようになり、1ヶ月経った。

後、1ヶ月で、わたしは退職する。

中島MGが人事部長に掛け合い、最後の1日でも、退職を取り消せるようにしてくれた。

仕事を辞めるかどうか、わたしの中で揺れてた。
それぐらい、この1ヶ月間が充実していて、仕事も楽しく思えてたから。


「望月さん、デンタを退職したらどうするの?」

いつもは、愛車のインプレッサで観光地巡りをした話を聞かせてくれる時間なのに、わたしの今後について聞かれて、戸惑う。

「しばらくはゆっくりしようと思ってます。そして、また、働きたいと思えるようになったら、就職活動しようと思ってます」

今のわたしは、頼翔と関係を切りたくて、デンタを退職したいという、思いしかない。
だから、その先に、どうするかなんて、考えてない。

「あのさ、トミタのパワートレイン開発部に来ない?ヘッドハンティングという形で、人事部には話をつけてる」

黒崎MGからの、まさかの、トミタのエリート部署に引き抜きの話を持ちかけられた。


「ありがとうございます。とても嬉しいです。実は、デルタを退職した後の事は全く考えてませんでした。ただ、頼翔から離れたくて、それだけしか考えられなくて……」

「思い出さないで、もう、忘れよう。デンタを退職したら、俺の元で働けばいい。この話は、これで終わりにしよう。退職してから、働きたくなったら、俺のプライベートの携帯電話に連絡を入れて」

わたしの顔色が暗くなったのか、空気が読める黒崎MGは、話題変更をしてくれた。

だから、美味しいひつまぶしのレディースサイズを、全て食べ切る事ができた。

デンタを退職しても、今の仕事内容と同じ事を、トミタで、できると思ったら、嬉しかった。

黒崎MGに、感謝した。

ひつまぶしを堪能し、黒崎MGは、わたしを家まで送り届けてくれる。

わたしの母も、トミタのエリートMGで、知的な端整な顔立ちをした、背も高く、俳優のような容貌の黒崎MGを、気に入ってる。

ちなみに、中島MGも、見てくれはおいい。
ちょい悪な、可愛い系の顔立ちをして、背も高く、黒崎MGと2人で並ぶと、絵になる。

ハンサムな上司に、毎日、車で送り迎えして貰ってるわたし。

女性社員からの冷たい視線が怖いけれど、デンタでの最後の、良い思い出になった。





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