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8 side 須賀
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アメリカに赴任し、大規模農地をシティ化させるプロジェクトだけでなく、あれこれ仕事が舞い込み、俺が捌けるキャパオーバーで毎日疲れ果てていた。
渡米後、佐倉の仕事も忙しく時差もある事から電話をかける事ができず、気が効く言葉も思いつかず、ありきたりの出勤前の空の写真を撮り、毎朝LINEで送った。
赴任してから3ヶ月ぐらいは、彼女からも晩御飯の画像がLINEで送られて来てたが、社報紙で笹部と仲よさそうにしている写真を使われていた事が原因なのか、LINEが既録になっても返信がない放置されてる状態になった。
11月に入り、元部署に資料を至急送って貰おうと電話をかけた際に、同僚の口から佐倉がうちの部署に異動になり、しかも一級建築士の資格1発合格し、その他にも何個か資格取得したと聞いた。
k大の阪田ゼミ生はレベルが高いとそんな感じで聞いた気がする。
『単なる後輩だから興味ないか』
と同僚の口ぶりから、佐倉は俺とたんなる同じゼミ出身なだけで、関わりはないと言ってるんだと思った。
クリスマスプレゼントと共に、資格取得と部署異動のお祝いの手紙をそえた。
LINEでありがとうのスタンプが送られてきたが味気ない物で、彼女が俺から離れようとしている気がして不安に苛まれ、仕事に集中できなかった。
アメリカ支部の営業の無茶振りなのか、片付けたそばから新しい案件を出され、休みが取れないどころか寝る間もなく仕事が溜まる一方で、年始年末休暇を取れないのは不当だと思い、逃げるように帰国した。
クライアント達の依頼は全て頭に叩き込んでいるから、日本に帰ってから、佐倉の温もりを感じ安心できたら日本で作成しアメリカにデータを送ろう。
財布と携帯だけを持ち空港へ急ぎ、日本の佐倉がいるマンションへ向かった。
マンションに着き、彼女の部屋の鍵を開けドアを開けた。
彼女が玄関まで歩いてきて、俺は思わず抱きしめた。
抱きしめても抵抗しない彼女に安心し、ここのところ寝れてなく、一気に眠気がし、彼女の寝起きしている彼女のにおいがするシングルベッドで彼女を抱きしめて眠った。
正月をあけてもアメリカに帰るつもりはない。
仕事量の無茶振りに過労死寸前で腹も立つ。
正月明けに本社へ行き、仕事量を減らせないなら退職すると交渉しようと思う。
カシマ建設の会長と深い親交がある阪田教授にも相談のメールを送った。
気がついたら、13時から次の日の7時まで寝てしまっていて、18時間も眠っていたようだ。
彼女も同じで眠っていたようで、寝すぎてしばらく、ぼうっとして いた。
「須賀さん、いつまで日本に?」
寝ぼけているかと思ったら、ハッと俺を見上げてつぶやいた。
「いつまでかな…、俺的にはもうアメリカには帰りたくない。仕事をとりゃいいんじゃない。過労死しそうでもう無理。休み明けに本社行って、無茶振りを改善できないようなら退職して、個人事務所でも立ち上げるかな」
佐倉を抱き寄せ頭を撫でる。
佐倉ともう、離れたくない。
「今日から実家に帰ろうと思ってて、冷蔵庫に何もないの。有り合わせでご飯作れないから、ちょっと近くのコンビニまで何か食べ物買って来てもいい?」
昨日のお昼以降何も食べずに眠っていた。
でも、心が満たされたのか、不思議と空腹感を感じなかった。
「どこか、食べに行くか?」
彼女は俺と外を歩きたがらない。
理由は会社の人と一緒にいるところを見られたく無いから。
彼女が悩んでいるのを無理矢理手を引き、家から連れ出す。
休みの日はスッピンでいる佐倉。
化粧をしなくても白い透き通った肌と歯並びのいい小さいけどふっくらした口に、大きなぱっちりしたい目に、控え目でスッとした鼻。
全てが整っていて、化粧をしてもしてなくても変わらない可愛さがある。
新宿駅から近いマンションに住んでいるから飲食店はなんぼでもある。
周りの目を気にする佐倉と、会社の人に一緒にいるところを目撃され関係をオープンにしたい俺。
そういえば、今更といえば今更ながら、彼女に交際を申し込むプロセスをせずに、恋人同士のように常に寄り添ってきた事に気づく。
きちんと言葉で交際を申し込まないと、と思いつつも、居心地いい関係に甘えて曖昧なままにした。
佐倉は和食が好きだから、和食屋に入る。
10時少し過ぎた時間でまだ下準備中の所申し訳なかったが、刺身と松茸ご飯と天ぷらとそばのセットを2人注文した。
ここは会社のすぐそばで美味しいと評判の店だ。
佐倉は新鮮な刺身を口にし笑みが零れる。
サクサクのエビ天と蓮根も揚げたちで嬉しそうに口に頬張る。
その時に、佐倉のiPhoneに着メロが、
「あれ、斎藤主任からだ、ちょっとすみません」
彼女が通話ボタンを押した。
「はい、…はあ、そんな事を仰られても困ります。建築デザイン設計第1課全員が至急アメリカ支部の滞ってる仕事を日本でしてデータを送ると言われましても…」
彼女が俺を軽く睨んだ。
俺が逃亡したせいで、年末までに出さないといけない案件がそのままでアメリカの営業からヘルプが来たらしい。
俺を指名してきたから、アメリカの設計士達の感性では似せてデザインは難しく、日本の俺がいた部署に連絡が来たのだろう。
俺は佐倉のiPhoneを奪い、
「斎藤主任、ご無沙汰してます、須賀です。ご迷惑をおかけしてすみません。アメリカの営業が僕が捌けないぐらいの仕事をとって来るからさすがにもう着いていけなくて、日本に逃げ帰ってきました。
斎藤主任達に迷惑をかけられないので、この件はぼくと佐倉で片付けるので皆さんにそう伝えて下さい」
電話に俺が出た事で斎藤主任は言葉を失っていた。
一方的に俺が話し、電話を切った。
何かを言いたそうな佐倉に何も言わず、一旦佐倉の部屋に戻り、佐倉の社員証を持って佐倉の手を引き会社へ向かった。
社員証とパスワードで施錠を解除し社内に入る。
建設デザイン一課のパソコンを拝借し、アメリカ支部から届いた依頼に目を通す。
10件のはずが21件に増えていてため息が出る。
佐倉と手分けをして、なんとか1日徹夜で31日の午後に終わらせ、佐倉の名前を使ってアメリカにデータを送った。
せっかく寝だめをしたのに、次の日に徹夜で佐倉の部屋に戻ったら交代でお風呂に入りまた狭いシングルベッドで彼女を抱きしめて眠った。
渡米後、佐倉の仕事も忙しく時差もある事から電話をかける事ができず、気が効く言葉も思いつかず、ありきたりの出勤前の空の写真を撮り、毎朝LINEで送った。
赴任してから3ヶ月ぐらいは、彼女からも晩御飯の画像がLINEで送られて来てたが、社報紙で笹部と仲よさそうにしている写真を使われていた事が原因なのか、LINEが既録になっても返信がない放置されてる状態になった。
11月に入り、元部署に資料を至急送って貰おうと電話をかけた際に、同僚の口から佐倉がうちの部署に異動になり、しかも一級建築士の資格1発合格し、その他にも何個か資格取得したと聞いた。
k大の阪田ゼミ生はレベルが高いとそんな感じで聞いた気がする。
『単なる後輩だから興味ないか』
と同僚の口ぶりから、佐倉は俺とたんなる同じゼミ出身なだけで、関わりはないと言ってるんだと思った。
クリスマスプレゼントと共に、資格取得と部署異動のお祝いの手紙をそえた。
LINEでありがとうのスタンプが送られてきたが味気ない物で、彼女が俺から離れようとしている気がして不安に苛まれ、仕事に集中できなかった。
アメリカ支部の営業の無茶振りなのか、片付けたそばから新しい案件を出され、休みが取れないどころか寝る間もなく仕事が溜まる一方で、年始年末休暇を取れないのは不当だと思い、逃げるように帰国した。
クライアント達の依頼は全て頭に叩き込んでいるから、日本に帰ってから、佐倉の温もりを感じ安心できたら日本で作成しアメリカにデータを送ろう。
財布と携帯だけを持ち空港へ急ぎ、日本の佐倉がいるマンションへ向かった。
マンションに着き、彼女の部屋の鍵を開けドアを開けた。
彼女が玄関まで歩いてきて、俺は思わず抱きしめた。
抱きしめても抵抗しない彼女に安心し、ここのところ寝れてなく、一気に眠気がし、彼女の寝起きしている彼女のにおいがするシングルベッドで彼女を抱きしめて眠った。
正月をあけてもアメリカに帰るつもりはない。
仕事量の無茶振りに過労死寸前で腹も立つ。
正月明けに本社へ行き、仕事量を減らせないなら退職すると交渉しようと思う。
カシマ建設の会長と深い親交がある阪田教授にも相談のメールを送った。
気がついたら、13時から次の日の7時まで寝てしまっていて、18時間も眠っていたようだ。
彼女も同じで眠っていたようで、寝すぎてしばらく、ぼうっとして いた。
「須賀さん、いつまで日本に?」
寝ぼけているかと思ったら、ハッと俺を見上げてつぶやいた。
「いつまでかな…、俺的にはもうアメリカには帰りたくない。仕事をとりゃいいんじゃない。過労死しそうでもう無理。休み明けに本社行って、無茶振りを改善できないようなら退職して、個人事務所でも立ち上げるかな」
佐倉を抱き寄せ頭を撫でる。
佐倉ともう、離れたくない。
「今日から実家に帰ろうと思ってて、冷蔵庫に何もないの。有り合わせでご飯作れないから、ちょっと近くのコンビニまで何か食べ物買って来てもいい?」
昨日のお昼以降何も食べずに眠っていた。
でも、心が満たされたのか、不思議と空腹感を感じなかった。
「どこか、食べに行くか?」
彼女は俺と外を歩きたがらない。
理由は会社の人と一緒にいるところを見られたく無いから。
彼女が悩んでいるのを無理矢理手を引き、家から連れ出す。
休みの日はスッピンでいる佐倉。
化粧をしなくても白い透き通った肌と歯並びのいい小さいけどふっくらした口に、大きなぱっちりしたい目に、控え目でスッとした鼻。
全てが整っていて、化粧をしてもしてなくても変わらない可愛さがある。
新宿駅から近いマンションに住んでいるから飲食店はなんぼでもある。
周りの目を気にする佐倉と、会社の人に一緒にいるところを目撃され関係をオープンにしたい俺。
そういえば、今更といえば今更ながら、彼女に交際を申し込むプロセスをせずに、恋人同士のように常に寄り添ってきた事に気づく。
きちんと言葉で交際を申し込まないと、と思いつつも、居心地いい関係に甘えて曖昧なままにした。
佐倉は和食が好きだから、和食屋に入る。
10時少し過ぎた時間でまだ下準備中の所申し訳なかったが、刺身と松茸ご飯と天ぷらとそばのセットを2人注文した。
ここは会社のすぐそばで美味しいと評判の店だ。
佐倉は新鮮な刺身を口にし笑みが零れる。
サクサクのエビ天と蓮根も揚げたちで嬉しそうに口に頬張る。
その時に、佐倉のiPhoneに着メロが、
「あれ、斎藤主任からだ、ちょっとすみません」
彼女が通話ボタンを押した。
「はい、…はあ、そんな事を仰られても困ります。建築デザイン設計第1課全員が至急アメリカ支部の滞ってる仕事を日本でしてデータを送ると言われましても…」
彼女が俺を軽く睨んだ。
俺が逃亡したせいで、年末までに出さないといけない案件がそのままでアメリカの営業からヘルプが来たらしい。
俺を指名してきたから、アメリカの設計士達の感性では似せてデザインは難しく、日本の俺がいた部署に連絡が来たのだろう。
俺は佐倉のiPhoneを奪い、
「斎藤主任、ご無沙汰してます、須賀です。ご迷惑をおかけしてすみません。アメリカの営業が僕が捌けないぐらいの仕事をとって来るからさすがにもう着いていけなくて、日本に逃げ帰ってきました。
斎藤主任達に迷惑をかけられないので、この件はぼくと佐倉で片付けるので皆さんにそう伝えて下さい」
電話に俺が出た事で斎藤主任は言葉を失っていた。
一方的に俺が話し、電話を切った。
何かを言いたそうな佐倉に何も言わず、一旦佐倉の部屋に戻り、佐倉の社員証を持って佐倉の手を引き会社へ向かった。
社員証とパスワードで施錠を解除し社内に入る。
建設デザイン一課のパソコンを拝借し、アメリカ支部から届いた依頼に目を通す。
10件のはずが21件に増えていてため息が出る。
佐倉と手分けをして、なんとか1日徹夜で31日の午後に終わらせ、佐倉の名前を使ってアメリカにデータを送った。
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