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第一章 浪速陰陽師、秋田美人にこける? ~秋田編 ~
第 2話 秋田到着、即確保
しおりを挟む大阪からの長旅を経て、秋田新幹線「こまち」が滑らかにホームに停止する。
道頓堀こけるは、意気揚々とJR秋田駅の改札を抜けた。
「着いたで、秋田! なんや空気が美味いわ! これは美人の匂いがプンプンするで!」
改札の正面では、巨大な「なまはげ」のオブジェがこけるを睨みつけていたが、こけるのテンションは最高潮だ。駅ビル「トピコ」や「アルス」へと向かう人々の流れを眺め、こけるは勝手に確信する。
(おる! おるで! さすが秋田、肌の白いお姉さんがようさんおる!)
こけるは服の襟を正し、さっそく駅前ロータリーでターゲットを探す。
「まずは手始めに、あのお姉さんやな」
すらりとした、色白の女性に狙いを定めたこけるは、すっと歩み寄る。
そして、人差し指を立て、キザなポーズを決めた。
「そこのきれいなお姉さん! ボクと、名物・ババヘラアイスでお茶せえへん?」
しかし、女性はドン引きした顔でこけるを一瞥し、早足で立ち去ってしまった。
「……アカン、掴みは失敗や。秋田ではババヘラアイスは『お茶』とは言わんのかもしれんな」
こけるは驚異的なポジティブさで反省すると、すぐに気持ちを切り替える。
「よーし、次や! 次のお姉さ……」
その瞬間、背後から地獄の底から響くような、しかし聞き慣れた低い声がこけるの耳元で囁いた。
「……『ボクと』、なんやて?」
「ひっ!?」
こけるは、まるでブリキの玩具のようにギギギ、と音を立てて振り返った。
そこには、大阪に置いてきたはずの恋人・舞鶴海里が、満面の笑みで仁王立ちしていた。
「か、か、海里!? なんで、なんでここにおるん!?」
「なんで……やて?」
海里はこけるの頬をむにゅっとつねり上げる。
「ウチを誰や思てんねん。こけるのそのアホ面見た瞬間から、行き先なんかお見通しや。『あきたこまち』で『秋田美人』、小学生でも思いつくわ」
「いひゃい! いひゃいれふ!(痛い! 痛いです!)」
「こけるが家飛び出して十分後に、ウチも新幹線乗ったわ。 まったく、余計な出費させよってからに」
こけるの不純な動機は、完璧にバレていた。彼のナンパ天国計画は、開始五分で音を立てて崩れ去った。
「さて」
海里はこけるの頬から手を放すと、パンパンと手を叩いた。
「秋田まで来てもうたんやから、しゃーない。観光でもしたるわ」
「えっ? ほ、ほんまか!?」
「ただし」
海里は、悪魔的な笑みを浮かべる。
「ウチをここまで来させた罰や。旅費交通費、食費、お土産代、ぜーんぶ、こけるの全額おごりやで」
「そ、そんな殺生な!」
「文句あるんか? ほら、はよ行くで。まずは秋田の美味いもん、稲庭うどんや!」
海里はこけるの首根っこを掴むと、まるで荷物のように引きずっていく。
こうして、こけるの「秋田美人ナンパ一人旅」は、海里の監視付き「浪速カップルの秋田グルメ旅行」へと、強制的に変更されたのであった。
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