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寒空の下の出会い
しおりを挟む黒嶋和哉はあの日のことを決して忘れないであろう。寒空の下。1人泣いていた彼女に初めて話しかけた日のことを。
「おい、大丈夫か?」
「.......大丈夫そうに見える?」
彼女の名前は白夢みゆ。その名に恥じぬ、白くて幻想的な程にも美しく見える透き通った肌の持ち主であり、いつも儚げな表情をしている少女だ。儚げといっても、それは彼女の魅力をより一層際立たせている。その長い睫毛に隠された清く澄んだ黒目は一体どこを見ているのか、何を考えているのかさえ想像することは出来ない。彼女は、俺と同じ高校どころか、同じクラスの同級生であり、学年でもトップクラスの美少女であった。
ただ今の彼女は、俺には今にも消えてしまいそうにも見えた。だから、話したことも無い同級生に声をかけた。このままではいけないと俺の中で警鐘がなった気がしたのだ。
「いいや、見えないから話しかけたな」
「そう。あなたはお人好しなのね」
「なんで泣いてんだ?」
「私の居場所が無くなったの.......」
「何言ってんだ?」
「はぁ.......察しが悪いのね.......」
「今ので分かるわけがないだろ.......」
「私、捨てられたの」
「.......え?」
「ついさっき親に捨てられたの.......」
彼女は何を言っているんだ? 親に捨てられた? ただの親子喧嘩ではなくて? それも、2学期の終業式の日。今日は12月24日であり、気温も俺の住んでる地区だと0度を下回っていたはずだ。そんな日に追い出されたっていうのか?
「追い出されたのか?」
「いいえ」
彼女はそう言って、首を横に振る。そして、俺が考えていたよりも遥かに最悪な答えが返ってきた。
「家ももう無いの。正確には、明日取り壊されるみたい」
「!?」
彼女が言うには、学校を終え家に帰ると1枚の置き手紙と10万円の入った封筒が机の上にあったらしい。その手紙には、あなたは要らない子。この家はもう売ったから、明日から取り壊しが始まること。これからは、好きに生きなさいといったことが書かれていたそうだ。
「さすがに冗談だろ.......」
「いいえ。家の中の家具は机以外は何も残されていなかったし、取り壊し工事の人が家に訪ねて来たしね。最終確認だとかで」
「いくらなんでもそれは.......」
「けどね、これは仕方ないの」
「親が子を捨てるのに仕方ない理由なんかあるかよ!」
白夢は珍しいものを見たといった表情で俺を見てきた。
「あなたは初めて話したような、私のために怒ってくれるのね」
どうして俺がこんなにも怒っているのかは自分でも分からない。ただ1つ言えることは、この話を聞いていてひたすらに胸糞が悪くなったということだ。
「でもね、私は父とその愛人の間に生まれてしまった子だから。本当は産むつもりなんて無かったって直接言われたこともあるわ。さすがにあの時は私も死にたくなったな.......」
愛人? なんだよそれ。たとえ愛人との子であったとしても自分の子には変わりないだろうが! けど、ここで俺が怒っていても仕方ないんだよな。今すべきことは、彼女をどうしてやるかだ。
「それで、どうするんだ?」
「死ぬよ?」
「.......何言ってんだ?」
「考えてもみてよ。私にはもう帰る家はない。お金も10万円だけしかない。季節は真冬。私にどうしろって言うの?」
「10万円あるなら家でも借りれば」
「私、未成年だよ? 家なんて借りれると思う?」
「.......。それなら、施設とかに」
「施設に入るのにも時間はかかるの。すぐに入れるなんてそう甘くはないんだよ?」
「もう調べてあったのか.......」
「えぇ。産むつもりなんてなかったって言われた日にね.......これで分かったでしょ? 私は死ぬの。だから、もうこれ以上私に関わらないで」
私はもう死ぬから、関わらないでか.......。恐らく彼女は本気で死ぬことを決意している。いや、もう生きることを諦めてしまっているのかもしれない。そうなると、大変な目にあうから私には関わるなということなのだろう。自分が死にそうなのに、俺に気遣っているのか? 俺なんかよりよっぽどお人好しじゃねぇか。だったら、
「お前、俺の家に来いよ」
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