寒空の下、君を買う ~君が死ぬことは俺が許さない~

白浜 海

文字の大きさ
2 / 71

交渉開始

しおりを挟む
「本気で言ってるの?」

「当たり前だろ」

 今の白夢みたいな境遇のやつに冗談でこんなことが言えるわけがないだろう。彼女が嘘をついている可能性もまだあるが、恐らくそれは無い。彼女は既にこの異常な現実を受け止めているように見える。それに、死ぬと言った時の彼女の目には迷いなど無いように見えた。

「そんなことしてもあなたに得はないよ?」

「目の前に今にも死にそうな子がいるのに、それを見て見ぬふりできるほど、俺は人間やめてねぇよ」

「そう.......なら、私の両親は人間をやめてしまっているの?」

「人間をやめてるかどうかは知らねぇが、人の親であることはやめている」

 例えどんな理由があろうとも、実の娘を放り出す時点で親でいる権利なんてあるはずがない。俺の心情的にはそんなやつ、人間すらやめていると言ってやりたいが彼女にそれを直接告げることは間違っているような気がした。

「それもそうかもね.......」

「そういうことだ」

「けど、その申し出は受けられないわ」

「なんでだよ!」

「あなたが私と同じ立場だったとして、あなたはその提案を受け入れられる?」

「.......それは」

 確かに、自分が親に捨てられたとして1人泣いていたところに同じクラスメイトではあるが話したこともない相手から家に来いと言われてついていくだろうか? 白夢の目には、俺は傷心につけ込んで良くないことをしようとしている男にしか写っていないのかもしれない。

「分かってくれた? あなたは善意で私に言ってくれているのだろうけど、はいそうですかと言って私もあなたにはついて行けないわ」

「じゃあ、お前はどうするんだよ」

「だから、さっきから言ってるでしょ? 私は死ぬよ」

「.......っ」

 白夢は本気で死ぬ気だ。そんな彼女を俺はどうすることも出来ない。説得しようにも、俺には分が悪すぎた。正論で返されたら何も反論なんて出来ないのだから。

「もう分かったでしょ? 私のことは放っておいて。あなたとは同じクラスに通ってるだけで話したのも今日が初めて。私が死んだところであなたの生活には何も支障はでないはずよ。3学期になったら私が教室にいないだけなんだから」

「お前はそれでいいのか?」

 一瞬、白夢が動揺したようにも見えた。しかし、微々たる変化でしか無かったから俺の気の所為なのかもしれない。

「良いか悪いかで聞かれたら、良いとは決して言えないわね。けど、どうしようもないから仕方ないでしょ?」

 やっぱり、彼女は死にたくは無いのだ。ただ、生きることを諦めただけ。そんな彼女をただ、関わりが少ないというだけで放っておけるだろうか? 否だ! 俺は何としても白夢を連れ帰る。彼女を死なせたりなんかしない! そう今決めた!

「お前、もう死ぬ気ならその10万円俺にくれよ」

「? あなたはこの、10万円が欲しくて私を連れ帰ろうとしていたの?」

「あぁ、そうだよ。それに、お前がそれを持っていても勿体ないだけだろ」

 彼女は一旦悩む素振りを見せてから俺に10万円が入っているであろう封筒を差し出してきた。

「確かに、もうすぐ死ぬ私よりあなたに使ってもらった方がいいわ」

 そして、俺はその封筒を受け取った。封筒の中身を確認してみるとそこにはしっかり10万円が入っていた。

「それじゃ、この10万円でお前を買うわ」

「...................」

 この時、初めて白夢は感情を露にした。彼女が俺に初めて見せた感情は戸惑いであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ

桜庭かなめ
恋愛
 高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。  あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。  3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。  出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2026.1.21)  ※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

処理中です...