寒空の下、君を買う ~君が死ぬことは俺が許さない~

白浜 海

文字の大きさ
3 / 71

交渉成立

しおりを挟む
「.......何言ってるの?」

「この10万円で俺はお前を買うって言ったんだ」

「馬鹿なの?」

「まぁ、馬鹿じゃなければこんなことは言わないわな。けど、これで死のうとしてるクラスメイトを助けられるかもしれないなら、俺は喜んで馬鹿になってやる」

 俺が言っていることが、無茶苦茶な事であるというのは百も承知だ。けど、白夢を死なせないようにするには今の俺では無茶苦茶なことしか出来ないのだ。

「はぁ.......どうして私にそこまで構うの? 私のことが好きなの? それなら、ごめんなさい」

「おい、告白もしていないのに勝手な思い込みで勝手に俺を振るな」

 いくらなんでも自意識過剰過ぎやしないか? 確かに白夢は美少女と言って差し支えないくらいには可愛いけれど。あれ? 自意識過剰でもないのか?

「だったら、どうして?」

「さっきも言っただろ。目の前に死にそうな子がいるのに見て見ぬふりできないだけだ」

「だとしても家に来ないかって、親御さんにも迷惑かかるでしょ?」

「あぁ、それなら問題ない。俺は一人暮らしだから」

「高校生で一人暮らしってそんなことあるの?」

「現に俺がそうなんだからあるんだよ」

「だったら、私と二人暮らしになるけどその事わかってるの?」

「...................」

 そういえば、そうなるんだよな.......。学校でもトップクラスと言っても過言ではないような白夢と二人暮らし.......。これって、普通に考えてもやばくないか? いや、けどこればっかりは仕方ないし.......。

「.......絶対にそこまで考えて無かったでしょ」

「そ、そんなことは、ないぞ?」

「めちゃくちゃ動揺してるし.......」

「う、うるせぇ! そんなことは、どうでもいいんだよ!」

「いや、全然どうでもよくないよ? 下手したら社会的に死ぬかもしれないんだよ?」

 くそ、ド正論じゃねぇか。けど、そんなことすらもどうでもいい。

「お前が実際に死ぬのに比べたら、社会的に死ぬくらい大したことじゃねぇよ!」

「どうして.......なんでそこまで私のためにしてくれようとするの.......?」

「お前がまだ生きることを諦めていないから」

「!? .......どうしてそう思うの?」

 白夢は確かに死ぬつもりではあるのだろう。しかし、死ぬつもりであるだけなのだ。それしか道が無いと、仕方ないことだと思ってしまっている。けど、

「まだ生きたいと思っているから、俺に今日あったことを全て今まで話したことも無かった俺に話したんじゃないのか?」

「そ、それは.......」

「それにお前、言ってたじゃん。まだ死にたくはないって」

「そんなこと、言ってない」

「あぁ、直接は言っていないな」

 けど、彼女は確かに生きたいといった彼女の願望を違う表現でちゃんと俺に言っていたのだ。俺が、白夢にそれでいいのか? と聞いた時に白夢は

゛良いか悪いで言ったら、良いとは決して言えないわね ゛

と答えたのだ。これはつまり、死にたくは無いということに間違いないはずだ。

「だとしても、あなたには」

「もう、ごちゃごちゃうるせぇな! 俺はお前を買ったんだ! つまり、お前の主様はその時点で俺なんだよ! その俺が家に来いって言ってんだからお前に拒否権なんかないんだよ!」

 自分で言っていて、本当に無茶苦茶なことを言っていると思う。日本では人身売買は認められていない? 知るかよ、そんなこと。俺が罪を被ることで白夢が助かるならそんなもんいくらでも被ってやる。

「.............ふふ」

「何笑ってんだよ.......」

「あなたって本当に無茶苦茶でバカで底なしのお人好しなのね」

「.......うるせぇ」

「買われてあげる」

「え?」

「私はあなたに買われてあげるって言ってるの」

 そう言って微笑む彼女は、さっきまで今にも消えそうな雰囲気だったのが嘘みたいだ。彼女が儚げなのは、変わらないが今すぐどうこうっていうのは無さそうだ。

「ふっ。なんでお前が上から目線なんだよ」

「それもそうね主様?」

 こうして、俺たちの二人暮らしが始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…

senko
恋愛
「一緒に、しよ?」完璧ヒロインが俺にだけベタ甘えしてくる。 地味高校生の俺は裏ではS級ハッカー。炎上するクラスの完璧ヒロインを救ったら、秘密のイチャラブ共闘関係が始まってしまった!リアルではただのモブなのに…。 クラスの隅でPCを触るだけが生きがいの陰キャプログラマー、黒瀬和人。 彼にとってクラスの中心で太陽のように笑う完璧ヒロイン・天野光は決して交わることのない別世界の住人だった。 しかしある日、和人は光を襲う匿名の「裏アカウント」を発見してしまう。 悪意に満ちた誹謗中傷で完璧な彼女がひとり涙を流していることを知り彼は決意する。 ――正体を隠したまま彼女を救い出す、と。 謎の天才ハッカー『null』として光に接触した和人。 ネットでは唯一頼れる相棒として彼女に甘えられる一方、現実では目も合わせられないただのクラスメイト。 この秘密の二重生活はもどかしくて、だけど最高に甘い。 陰キャ男子と完璧ヒロインの秘密の二重生活ラブコメ、ここに開幕!

処理中です...