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戻れぬ場所
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「あ、あの! ここの家に住んでいたものです! まだ中に入っても大丈夫でしょうか?」
「あぁ、大丈夫だよ。けど、危なかっなねぇ。もうすぐ、取り壊しを始めてしまうところだったよ」
「すいません、ありがとうございます」
あ、危なかった.......。俺とみゆが到着した頃には既に何人かのヘルメットを付けたおじさん達が家の前に集まっていた。けど.......みゆのことを疑っていた訳では無いけど本当に取り壊されるんだな.......。住んでいた訳でもない俺でさえ寂しいものがあるのだから、住んでいたみゆはどんな気持ちなのか俺には想像もつかなかった。
「はぁはぁ.......和哉くん走るの速すぎ.......」
「あっ、悪いな。けど、ギリギリ間に合ったみたいだぞ?」
みゆが家の前にもう人がいると言った瞬間に俺はみゆをガン無視して置き去りにしてしまったのだ。
「そう.......それなら、早く済ませてしまいましょう」
みゆは、最後に足を踏み入れることになるであろう自分の家にもかかわらず普段と変わらぬ足取りで家の中に入っていく。そのまま、真っ直ぐにみゆの部屋である場所まで歩いていくのだが.......
「本当に何も残ってないな.......」
みゆの言っていた通り、家具などは物の見事にこの家から無くなっているのが分かる。学校から帰ってきて家がこんな状態になっていたら、俺なら人としてダメになってしまっていたかもしれないな.......。みゆがそうならなかったのはやっぱり、本人が前に言っていた通り、親に捨てられる覚悟をしていたからなんだろうな。
「どうしたの和哉くん? 顔が怖いよ」
「ん? あぁ、考え事だ」
考えていたことが顔に出てしまっていたようだ。思っていることがそのまま、表情に現れてしまうのは俺の悪い癖なんだよな.......。
「それって私に関すること?」
「まぁ、そうだな」
特に否定する理由もなかったので、正直に答えたのだが.......
「やっぱり、和哉くんってお人好しだね。けど、私は大丈夫だから」
「そうか.......」
「だから、しばらくここで待ってて」
「ん? どうしてだ?」
みゆは、いったん部屋の扉を開けて中を確認したあと、扉を閉めてしまった。というか、前後の会話が噛み合ってなくないか? 大丈夫だからここで待ってろ? どういう意味だ?
「ここが私の部屋なの」
「だから?」
そういうとみゆは俺の事をジトーっとした目で睨んでくる。なんでだ.......俺としては荷物持ちとして来たのだから中に入るのも自然だと思うのだが?
「普通、乙女の部屋にそう易々と入れないから」
「けど、荷物持ちとして俺は来たつもりなんだが? それとも、俺に見せられないくらい部屋の中が散らかってるのか?」
「はぁ.......和哉くんデリカシー無さすぎ。私はちゃんと自分の部屋は片付けてるから散らかってなんかない」
ますます意味が分からない。別に部屋の中が散らかってる訳でもないなら別に入れてくれてもいいと思うのだが。
「はぁ.......和哉くん。私たちはここに何を取りに来たの?」
「それは、学校で必要なものだとか着替えとかだろ?」
「そこまで分かっててなんで分からないの? 馬鹿なの?」
どうしてこんなに俺は罵倒されているんだ? 本気で意味がわからないのだが.......。
「着替えってことは下着もあるに決まってるでしょ。ここまではっきり言わせないでよ」
「あっ、なるほど.......デリカシーなくてすいませんでした.......」
これは俺が悪いわ.......そりゃ、着替えとか取りに来たんならそうなるよな.......。
「はぁ.......分かったならちょっと待ってて.......」
「.......はい」
そう言って、部屋の中に入っていったみゆが出てきたのは15分ほどたった後であった。
「お待たせ」
「ん。それで荷物は?」
「これなんだけど.......」
「お、多いな.......」
「これでも、厳選はした」
みゆが指さした方には、キャリーバッグが1つとダンボールが2つ置いてあった。数だけで言えば少ないのだが.......ダンボールがでかいのだ.......それも2つとも.......。
「学校の教科書とか、お気に入りの本とか入れてたらこうなったんだけど.......」
「待て、このダンボールの中身は全て教科書を含めて本なのか?」
「そうだけど?」
「お前.......どんだけ本読むんだよ.......」
「これでも本当に厳選した」
まぁ、それは確かにそうなんであろう。みゆの部屋にある本棚は見たところ5つあり、本棚の中には本がまだまだ入っていたのだから。
「はぁ.......仕方ねぇな.......」
「え? 和哉くん、ダンボールを2つとも持って家まで戻る気なの?」
「それ以外に方法が無いんだから仕方ないだろ」
そう言って俺は、ダンボーの上にダンボールを乗せて2つまとめて持ち上げたのだが.......
「これ.......やばい.......」
「そんなの、最初から分かってたでしょ? やっぱり、馬鹿なの?」
「うるせぇ。早く行くぞ」
「え? 本気で言ってるの? 教科書以外の本はもう置いていってもいいよ。本はまた買えばいいんだし」
「うるせぇ。このダンボールの中にある本はお前の思い出の詰まった本じゃねぇのか?」
パッと見ではあるが、本棚の中にある本の冊数はまだ500冊はあるように見える。それだけの本の中から選んだということはここにあるのは何かしらの思い入れのある本ばかりなのであることは間違いないだろう。
「それは.......そうだけど.......」
「だったら、早く行くぞ。まじで早くしないと死ぬ.......」
「.......ありがとう」
こうして俺とみゆは、みゆの家を出たあと、数度の休憩を挟みながら何とか家まで戻ってきたのだ。家を出た時に、みゆが寂しそうな顔をしていたのを俺は見逃さなかった。けど、今の俺にはどうしてやることも出来ない。だから、今の俺の家がみゆにとっても少しでも安心出来る場所にしてやりたいと心から思ったのだ。
「あぁ、大丈夫だよ。けど、危なかっなねぇ。もうすぐ、取り壊しを始めてしまうところだったよ」
「すいません、ありがとうございます」
あ、危なかった.......。俺とみゆが到着した頃には既に何人かのヘルメットを付けたおじさん達が家の前に集まっていた。けど.......みゆのことを疑っていた訳では無いけど本当に取り壊されるんだな.......。住んでいた訳でもない俺でさえ寂しいものがあるのだから、住んでいたみゆはどんな気持ちなのか俺には想像もつかなかった。
「はぁはぁ.......和哉くん走るの速すぎ.......」
「あっ、悪いな。けど、ギリギリ間に合ったみたいだぞ?」
みゆが家の前にもう人がいると言った瞬間に俺はみゆをガン無視して置き去りにしてしまったのだ。
「そう.......それなら、早く済ませてしまいましょう」
みゆは、最後に足を踏み入れることになるであろう自分の家にもかかわらず普段と変わらぬ足取りで家の中に入っていく。そのまま、真っ直ぐにみゆの部屋である場所まで歩いていくのだが.......
「本当に何も残ってないな.......」
みゆの言っていた通り、家具などは物の見事にこの家から無くなっているのが分かる。学校から帰ってきて家がこんな状態になっていたら、俺なら人としてダメになってしまっていたかもしれないな.......。みゆがそうならなかったのはやっぱり、本人が前に言っていた通り、親に捨てられる覚悟をしていたからなんだろうな。
「どうしたの和哉くん? 顔が怖いよ」
「ん? あぁ、考え事だ」
考えていたことが顔に出てしまっていたようだ。思っていることがそのまま、表情に現れてしまうのは俺の悪い癖なんだよな.......。
「それって私に関すること?」
「まぁ、そうだな」
特に否定する理由もなかったので、正直に答えたのだが.......
「やっぱり、和哉くんってお人好しだね。けど、私は大丈夫だから」
「そうか.......」
「だから、しばらくここで待ってて」
「ん? どうしてだ?」
みゆは、いったん部屋の扉を開けて中を確認したあと、扉を閉めてしまった。というか、前後の会話が噛み合ってなくないか? 大丈夫だからここで待ってろ? どういう意味だ?
「ここが私の部屋なの」
「だから?」
そういうとみゆは俺の事をジトーっとした目で睨んでくる。なんでだ.......俺としては荷物持ちとして来たのだから中に入るのも自然だと思うのだが?
「普通、乙女の部屋にそう易々と入れないから」
「けど、荷物持ちとして俺は来たつもりなんだが? それとも、俺に見せられないくらい部屋の中が散らかってるのか?」
「はぁ.......和哉くんデリカシー無さすぎ。私はちゃんと自分の部屋は片付けてるから散らかってなんかない」
ますます意味が分からない。別に部屋の中が散らかってる訳でもないなら別に入れてくれてもいいと思うのだが。
「はぁ.......和哉くん。私たちはここに何を取りに来たの?」
「それは、学校で必要なものだとか着替えとかだろ?」
「そこまで分かっててなんで分からないの? 馬鹿なの?」
どうしてこんなに俺は罵倒されているんだ? 本気で意味がわからないのだが.......。
「着替えってことは下着もあるに決まってるでしょ。ここまではっきり言わせないでよ」
「あっ、なるほど.......デリカシーなくてすいませんでした.......」
これは俺が悪いわ.......そりゃ、着替えとか取りに来たんならそうなるよな.......。
「はぁ.......分かったならちょっと待ってて.......」
「.......はい」
そう言って、部屋の中に入っていったみゆが出てきたのは15分ほどたった後であった。
「お待たせ」
「ん。それで荷物は?」
「これなんだけど.......」
「お、多いな.......」
「これでも、厳選はした」
みゆが指さした方には、キャリーバッグが1つとダンボールが2つ置いてあった。数だけで言えば少ないのだが.......ダンボールがでかいのだ.......それも2つとも.......。
「学校の教科書とか、お気に入りの本とか入れてたらこうなったんだけど.......」
「待て、このダンボールの中身は全て教科書を含めて本なのか?」
「そうだけど?」
「お前.......どんだけ本読むんだよ.......」
「これでも本当に厳選した」
まぁ、それは確かにそうなんであろう。みゆの部屋にある本棚は見たところ5つあり、本棚の中には本がまだまだ入っていたのだから。
「はぁ.......仕方ねぇな.......」
「え? 和哉くん、ダンボールを2つとも持って家まで戻る気なの?」
「それ以外に方法が無いんだから仕方ないだろ」
そう言って俺は、ダンボーの上にダンボールを乗せて2つまとめて持ち上げたのだが.......
「これ.......やばい.......」
「そんなの、最初から分かってたでしょ? やっぱり、馬鹿なの?」
「うるせぇ。早く行くぞ」
「え? 本気で言ってるの? 教科書以外の本はもう置いていってもいいよ。本はまた買えばいいんだし」
「うるせぇ。このダンボールの中にある本はお前の思い出の詰まった本じゃねぇのか?」
パッと見ではあるが、本棚の中にある本の冊数はまだ500冊はあるように見える。それだけの本の中から選んだということはここにあるのは何かしらの思い入れのある本ばかりなのであることは間違いないだろう。
「それは.......そうだけど.......」
「だったら、早く行くぞ。まじで早くしないと死ぬ.......」
「.......ありがとう」
こうして俺とみゆは、みゆの家を出たあと、数度の休憩を挟みながら何とか家まで戻ってきたのだ。家を出た時に、みゆが寂しそうな顔をしていたのを俺は見逃さなかった。けど、今の俺にはどうしてやることも出来ない。だから、今の俺の家がみゆにとっても少しでも安心出来る場所にしてやりたいと心から思ったのだ。
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