寒空の下、君を買う ~君が死ぬことは俺が許さない~

白浜 海

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終日

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「まさか、みゆがご飯を作ってくれているとは思わなかったよ」

「和哉くんが疲れて帰ってくると思ったから」

 素っ気ない感じに言ってくるのが、破壊力が強すぎる.......新婚さんの気持ちが結婚もしていなのにもう分かってしまった気がする.......。

「腹も減ったし、早速食べてもいいか?」

「ダメ」

「え?」

 ダメなの? 疲れて帰ってくると思ったから自分の分だけ作っておきましたってこと? 俺の分はないの? さすがにそれは辛いのだが.......。

「先にお風呂。もう沸かしてるから」

「俺、お腹すいてるんだけど?」

 今の時刻は19時半だ。12時からバイトだったのと、店長にお願いごとをするため普段より早く家を出る分お昼ご飯を食べるのも早くなっていたのでかなりの空腹状態であるのだが.......

「我慢して。早くお風呂に入らないと風邪を引くから」

「でも、」

「でももヘチマもない。早く入る」

「はい.......」

 何か.......新婚っていうよりお母さんって感じがする.......。まぁ、俺の場合は母親は俺が小さい頃に亡くなってしまっているから母親のことなんて写真でしか知らないから俺を育ててくれた祖母みたいって感じになるんだけど、現役女子高生におばあちゃんみたいってのは失礼であろう。

 それから、みゆに言われた通りにお風呂に入るも早くカレーが食べたかったので少し湯に浸かったあと、頭と体をすぐに洗い風呂から出る。

「早いのね.......」

「男の風呂なんてこんなもんだ」

「そう.......今、温め直してるからちょっと待ってて」

「了解だ」

 俺は壁にもたれてスマホを触ろうと壁に近づくとそこには恐らくみゆが買ってきたであろう布団が置いてあった。布団にもたれたい衝動に駆られたが、さすがにそれはまずいと思い布団のすぐ隣の壁にもたれてスマホを触っているとすぐにみゆから声がかかった。

「和哉くんお待たせ」

「おっ、もう出来たのか」

 みゆがカレーの入った皿を持ってきてくれたので、俺はそれを受け取って机の上に置く。みゆも自分の分のカレーを持ってきて俺の前に座る。昨日も思ったけど目の前に同じクラスの女の子がいるっていうのは落ち着かないな.......。これは慣れるものなのだろうか?

「それじゃあ、いただきます」

「いただきます」

 みゆの作ったカレーは見ただけで美味しそうだと分かるものであった。カレー屋さんのように食べやすいように野菜や肉も細かく1口大に切られていて、一般的な家で出てくるようなゴツゴツとしたお家カレーといった感じではなかった。.......野菜や肉を細かく1口大に切るのも手間だろうに.......こういった細かなところで人の性格というものは出てくるのかもしれないな。そんなことを思いながら、みゆの作ったカレーを口すると、

「なにこれ.......すげぇうまい.......」

「そう?」

「これ、市販のルーを使ってんだよな?」

「当たり前でしょ? 隠し味にヨーグルトを入れたからまろやかにはなってるかもしれないけど」

 カレーにヨーグルトだと? そんなものが合うのか? カレーの隠し味にソースといったのは聞いたことはあったがヨーグルトは初耳であった。それから俺は、ひたすら無言で食べ続けた。

「うまかった.......」

「そんなに言ってくれるなら、おかわりできるようにもっと作っとけば良かったね」

「次回からはまじで頼む!」

「次回、か.......分かった」

 そう言って微笑むみゆ。何が彼女の琴線に触れたのかは分からないが嬉しそうに微笑むみゆが見れたので良しとしよう。なんか、みゆとは昨日初めて話したっていうのが不思議なくらいに自然と話せてるよな......ていうより、みゆの態度が今日の朝から急に柔らかくなってんだよな.......なんでだろうか?

「期待してるぞ」

「それじゃあ、私お風呂に入ってくる」

「お、おう」

 昨日は、それどころじゃなかったからなんとも思わなかったけど同じ歳の女の子が家のお風呂に入ってるって考えるとこうなんか.......ねぇ? それに、すぐに出たとはいえ俺の浸かっていた湯にみゆが浸かっていると考えると.......ダメだ。これ以上はまずい。何がまずいって俺の男の子的な色々なことがまずい。これ以上考えてしまうと、俺はダメになってしまう.......。

「よし、寝よう!」

 明日は朝の5時からバイトなので今日は早く寝ておく必要があるのだ。決して、変なことを考えないようにとかそういったことではない。みゆが今お風呂に入ってると考えると寝れないなんてことはなく、今日は一睡もしていなかったためか俺は布団に横になるとすぐに睡魔が訪れて眠ってしまった。

「あれ、和哉くん? もう寝たの?」

「くぅ.......」

「.......本当に寝てる。朝から私の家から荷物を持ってきてからすぐにアルバイトに行ってたしね.......本当に私のためにありがとね.......」

 お風呂上がりのみゆに、優しく頭を撫でられていた事を俺は知る由もなく眠っていた。

「和哉くん、おやすみなさい」

 そう言って優しく微笑みながらみゆも眠りにつくのであった。
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