寒空の下、君を買う ~君が死ぬことは俺が許さない~

白浜 海

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値段以上の価値

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「私.......回転寿司って初めてきた.......」

 俺とみゆは話していた通りお寿司を食べに回転寿司に来ていた。順番を待ってから席に着くと、いつもの儚げな瞳を少しキラキラとさせていた。

「いつも回らない寿司屋に行ってたのか?」

「ううん。私、外食ってほとんどしたこと無かったから.......」

 そうでした.......。みゆの家庭環境は複雑だし、みゆは誰かといること自体、学校で見るのは稀なタイプの人だから外食なんてする機会がほとんどなかったのだろう.......思いっきり地雷を踏んでしまった。

「.......そうか。それなら、今日は思いっきり楽しむしかないな」

「楽しむ?」

「一応、遊びの一環で飯を食いに来てんだから楽しまないとな」

「そうだったね」

 回転寿司で楽しむってなんなのか言ってて俺もよく分からないが、とりあえず寿司を食べとけばいいのだろう。

「早速食べていこうぜ」

「そうだね」

 そう言って俺は、ちょうど流れてきていたエビを取る。みゆは少し待ってからサーモンを取っていた。

「久しぶりに寿司とか食べたけどやっぱ美味いな」

「回転寿司のお寿司って、思ってたより美味しいんだね。これで100円なのはすごい.......」

 みゆはみゆで満足そうにしているので良かったのだが、俺はここで1つ疑問に思うことがあった。

「みゆって、寿司は普段どこで食べてたんだ?」

 回転寿司は初めてだって言ってたし、外食もほとんどしたことがないなら寿司なんて食べる機会なんてほとんどない気がするのだが.......スーパーとかで買ってたのかな? などと思っていたら、

「そんなの、作ってるに決まってるじゃない?」

「...................」

 え? 寿司って自分で作って食べるもんだっけ? 俺の記憶が正しければ寿司を握るにも修行とかしないといけなかったような.......

「寿司って素人が作れたの.......?」

「酢飯を作って、それを握ったあとネタを乗せるだけじゃない? おにぎりみたいなものでしょ?」

 確かに言われてみるとそうなんだが.......普通の人は寿司をおにぎりと同列に語ったりはしないだろう。

「.......そうか」

「和哉くんってたまにおかしなこと言うよね?」

 今回においては、おかしなことを言っているのは絶対にみゆなのだが何も言うまい.......。というか、たまにおかしなこと言ってるけ俺? .......お前を買うとか言ってる時点でだいぶやばかったわ。

「それなら、今度作ってくれよ」

「和哉くんの家で?」

「おう」

「分かった。和哉くんがそう言うなら」

 みゆが初めて俺の家に来た日に晩飯を作ってあげた時に、みゆから色々と言われたけど絶対俺よりもみゆの方が料理に関するスペック高いよな?

「その代わり.......」

「ん?」

「和哉くんにも今度作って欲しい.......」

 え? 俺にも寿司を作れって言うのか? そんなもの、無理に決まっているだろ。

「俺、さすがに寿司は作れんぞ?」

「お寿司じゃなくてもいい」

「なんでもいいのか?」

 そう聞くと、みゆは控えめながらも首を縦に振った。別にそれくらいなら言われなくてもするつもりだったけど、みゆの料理スペックなら自分で作った方が美味しいものを食べると思うのだが.......。

「そういうことなら、明日もバイトは早朝のしふとだから明日の夜ご飯は俺が作るよ」

「本当!?」

 すごい勢いで反応されてしまった.......そんなに嬉しいもんなのだろうか?

「お、おう」

「約束だからね?」

「分かったよ。けど、あまり期待しすぎるなよ? なんか、みゆの期待値が高すぎる気がするから.......」

「大丈夫。和哉くんの料理は優しい味がするの」

「優しい味?」

「うん」

 優しい味というのは、よく分からないが無性に照れくさくなってしまう。なんでだろうか?
 それからも他愛ない話をしながら、寿司を食べて店をあとにする。

「本当にお金出してもらってよかったの?」

「いいんだよ。一応、みゆの歓迎会ってことに俺の中ではしてるし」

「そういうことなら、ありがとう」

「おう」

「また行きたいね」

「え?」

「今日は楽しかったから」

 そう言って微笑むみゆは本当に美しかった。この笑顔が見れたのだから、あの寿司代には値段以上の価値があったと思う俺であった。
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