寒空の下、君を買う ~君が死ぬことは俺が許さない~

白浜 海

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尋問

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「まず最初に確認だけど彼女なの?」

「いや、そんなんじゃないけど.......」

 俺は今、みゆと向かい合うような形で座っていた。もちろん、正座で座っている。なんでなの?

「本当?」

「本当だ。というか、俺は年齢=彼女いない歴だ.......」

「それならいいんだけど.......」

「ということで、カレー食べたい」

 俺が年齢=彼女いない歴がいい理由については甚だ疑問だが、今はそんなことよりもカレーだ! ずっと、カレーの美味しそうな匂いが部屋の中に充満しており俺の食欲をひたすらに刺激してくるのだ。部屋の外までいい匂いをさせておいて、部屋の中に入ってもカレーを食べさせてくれないなんて生殺しにも程がある.......。

「カレーは後でちゃんと食べさせてあげるから、今はお話の時間」

「はい.......」

 別に食べながら話してもいいと思うのだが、多分それは許されないだろう.......なんでか分からないけど、みゆが微妙に不機嫌なのだ。さっきから雰囲気も尋問官みたいで質問する度にピリピリしてるし.......。

「その女の子とはどういった関係なの?」

「同じコンビニでバイトしてる、中学生の頃の同級生みたいな感じかな?」

「中学生の頃の同級生.......その子とは中学生の頃から仲が良かったの?」

「うーん.......まぁ、よく話すような仲ではあったと思う。というか、俺はなんで尋問されてるの?」

 本当になんでなの? 今のこの状況が浮気した夫が妻に問いただされているようにしか思えないんだけど.......。別に浮気なんかしてないし、そもそもみゆと俺はそういった関係では一切無いはずなのに.......。

「今は大丈夫そうだけど.......危ないかもしれない.......」

「あの~みゆさん? 何を1人でボソボソ言ってるの? もうそろそろカレー食べたいんだけど?」

「最後に1つだけ教えて」

「はい」

「和哉くんはその子のことが好きなの?」

「まぁ、好きか嫌いかで聞かれたら好きかな」

 秋風の事は仲のいい友達くらいに思っているし、バイト先でもシフトの時間が被ることも多いからよく話すしな。俺がしばらくバイトを休んでいた間は俺の代わりに働いてくれたみたいだし、嫌う要素なんて全く無いからな。

「!? .......それって、異性として好きってこと?」

「まぁ、そうなるのかな?」

 異性として好きかというのは、異性の友達として好きなのかということだろう。それなら、もちろん秋風のことは異性として好きということになるだろう。って、なんかみゆの顔が急に会社をクビになったサラリーマンみたいになってるんだけど.......なんで?

「そんな.......和哉くんに好きな人がいたなんて.......」

「別に俺にも好きな人くらいいるだろ! みゆのことも俺は好きだぞ?」

「!? 急にそんな不意打ちって.......和哉くん?」

「なんだ?」

「一応確認したいんだけど.......異性として好きっていうのは和哉くんの中でどう解釈したの?」

「そんなの異性の友達に決まってるだろ?」

「はぁ.............」

 なんか、すごく呆れられてる? さっきまで今にも死にそうな顔だったのが今度はありえないものを見たっといった感じの顔になっている。.......なんか、みゆの表情がコロコロ変わるのがおもしろいな。家に来たばかりの頃だと、たまに少し笑うくらいでそれ以外はずっと真顔って感じだったのに.......それだけ俺に気を許してくれたということなのか? それなら、純粋に嬉しいものがある。拾ってきた猫に懐かれてきた人の気持ちってこんな感じなのかな?

「なんで俺はそんなに呆れられてるの?」

「もういい.......和哉くんだしね.......」

「えーと.......カレー食べてもいい?」

「温め直すから少し待ってて」

「やった!」

 やっとカレーが食べられる! もう俺のお腹は限界だった。空腹の状態で美味しそうなカレーの匂いが充満する部屋で30分も生殺しにあっていたのだからいまから食べるカレーは絶対に美味しいに決まっている! まぁ、みゆのカレーはいつ食べても美味しいんだけど。ずっとソワソワしながら待っているとみゆが カレーをご飯によそって持ってきてくれた。

「それじゃ、いただきます!」

「いただきます」

 みゆのカレーは相も変わらず最高に美味しかった。前に食べた時も思ったのだが、これは本当に市販のものから作られているのだろうか? 同じ材料を使ったとしてもここまで美味しいカレーを俺は作れる自信が無い。それから俺はカレーを2回程おかわりした。

「ごちそうさま」

「お粗末さまでした。和哉くん、本当にカレー好きなんだね」

「確かに俺はカレーは好きだが、その中でもみゆのカレーは最高だからな」

 そう言うとみゆは照れてしまったたのか、顔をほんのり赤らめながら俯いてしまった。たまに見せるこういった仕草がたまらなく可愛く見えてしまうのは、多分俺は悪くない。普段はクールな感じのみゆなんだが、照れたり微笑んだりするとギャップ萌えというやつなのだろうか? とにかく、可愛く見えてしまうのだ。さっきから何が言いたいかと言うと、こういった不意打ちは心臓に悪いのでやめてください.......。

「あっ、そういえば」

「どうかしたの?」

「今度クレープ食べに行くか?」

「.......いきなりなんで?」

「だって、みゆもクレープが食べたかったんだろ?」

 クレープを奢ったという話をしたらみゆは急に不機嫌になってしまったのだろう。それなら、お詫びというわけでは無いが今度クレープを食べに行こう思っていたのだ。

「.......和哉くんの馬鹿」

「今回のは本当になんで!?」

 なんか、ここ最近みゆに罵られるというか馬鹿呼ばわりされることが格段に増えてないか? このまま、俺が変な趣味に目覚めてしまったらどう責任を取ってくれるのだ? まぁ、そんなことにはならないんだが.......俺は目覚めないからな!

 あと、クレープはやっぱり食べに行くそうだ。やっぱり、食べたかったんじゃん.......それなのになんで俺は馬鹿呼ばわりなんだ? .......解せん。
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