寒空の下、君を買う ~君が死ぬことは俺が許さない~

白浜 海

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騒然

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「なぁ、和哉」

「なんだ?」

「今日から短縮授業じゃん? ということで、放課後遊びに行こうぜ?」

 慎也の言う通り今日から短縮授業になる。すなわち、テスト期間に続きバイトのオンパレードなのだ。あと、10日もしないうちに春休みに突入するから更にバイト漬けの日々が送れるのだ! それにしても早いな.......1月は行く、2月は逃げる、3月は去るとはよく言ったものだ。気持ち的にはまだ冬休みが明けたばかりなのにもう春休みに入ろうとしている。

「悪いな、今日はバイトだ」

「別に今日じゃなくてもいいから遊びに行こうぜ?」

「えぇ.......」

「なんでそんなに露骨に嫌そうにするんだよ! たまには俺にもかまってよ!」

 たまには俺にもかまってよって現在進行形でかまってるじゃん? あと、男のかまってちゃんは需要は低いと思うぞ?

「バイトのない日は家でゆっくりしたいじゃん?」

「もうすぐ春休みだしいくらでもゆっくりできるだろ!」

「春休みはバイト漬けだ」

「お前は友情とバイトだとバイト優先なのかよ!」

「当たり前だろ?」

「この薄情者!?」

 慎也が本気で嘆いてしまっているが、こればっかりは仕方ない。俺も遊びたくないのか? と聞かれれば遊びたいに決まっている。しかし、週5のバイトが確定している(俺の中で)春休みなのでバイトのない日くらいはゆっくりしたいのだ.......。

「お前.......俺はともかくとしても、白夢さんとも出かけてやれよ.......? 同じ家に住んでるんだし.......」

「なんでだよって言いたいところではあるが、その約束ならもうあるから大丈夫だ」

 みゆがお寿司を作ってくれた日に約束したのだ。というか、みゆの機嫌を治すために約束させられたのだ。あと、クレープも食べに行く約束もあるし俺って意外と多忙なのか?

「なんで白夢さんは良くて俺はダメなんだよ.......」

「あれは仕方なかったんだ.......。まぁ、今度飯くらいなら一緒に行くか?」

「まじで!?」

「別に嫌なら嫌で構わないが」

「絶対に行く!」

 なんで慎也は飯のひとつでここまでテンションが上がっているのだろうか? 別に慎也なら俺以外にも友達はいくらでもいるだろうに.......あれ? そういえば、慎也って俺以外といるところってほとんど見たことないかも? 慎也って意外と俺と同じでぼっち気質だったりするのか? まぁ、そんなことはどうでもいいか。

「それ、私も一緒に行っていい?」

「ん? みゆか。もちろんって.......え?」

 すごく自然に話しかけてきたから、俺も自然に返しそうになってしまった.......。みゆが教室で話しかけてくるなんて.......当人の俺でさえこれだけ驚いているのだから、他のクラスメイト達はもっと驚いたことだろう。その証拠に教室にいた全員が会話をやめて俺達の方を凝視していた。そりゃあ、いきなり今まで誰とも話そうとしないでずっと本ばかり読んでいたみゆが自分から話に入っていくなんて思わなかっただろう。俺が知る限りみゆが自分からクラスの中で話しかけたのはこれが初めてのことだと思う。あと、10日程でクラス替えだというのにな?

「ダメ?」

「ダメじゃないけど.......いいよな、慎也?」

「あ、あぁ。俺も全然構わないぞ?」

「それじゃあ、白夢さんも一緒にご飯行こっか?」

 俺がそう言うと何故だか、すごく不満そうな顔をされた。いや、うん。分かるよ? 名前呼びじゃなかったのが不服なんだろ? けどさ、仕方なく無い? さっきは自然すぎで名前で呼んじゃったけど、きっと誰もその事には気付いてないはずだから。そういった意味の籠ったアイコンタクトを送るとみゆは頷いてくれた。よかった.......通じたみたいだ.......。

「加賀くんありがとう。和哉くんはなんで苗字なの? いつもみたいに名前で呼んで」

 うん、全く通じてなかった。さっきの頷きは何だったの? クラスのみんなももしかしてあの2人.......みたいな感じのことばっか言ってるし。いやまぁ、誰だってそう思うよな? 俺も他のクラスメイトの立場ならそう思うだろうし。実際はそういった関係ではないんだけど。けどまぁ、ここまでされたらもう無理だよな.......。

「急にどうしたんだみゆ?」

 俺がみゆのことを名前で呼ぶとクラスメイト達はやっぱりみたいな反応してるけど、もう無視しよう。いちいち気にしてたら俺の身が持たない気がする。

「.......楽しそうに話しているとを見ると羨ましかったから」

「そ、そうか.......」

 なんでそんなに急に恥ずかしがるんだよ.......本当にやめて欲しい.......まじで心臓に悪いから.......。クラスの男子達も白夢さんのことは可愛いとは思っていたけど、あんな顔もできたなんて.......とか言ってみゆに魅入られてるし。けど、その気持ちはよく分かる。でも、なんでだろうか? みゆのこういった可愛い所は他の男子たちに見られたくないと思ってしまっている俺がいる。これが、独占欲というやつだろうか? みゆと付き合っている訳でも無いのに独占欲を出す俺って.......自分勝手がすぎるよな。

「あの、お2人さん? 完全に俺の存在忘れてるよな? そんな甘々なやり取りをするのは俺のいないところでしてもらっていい? 俺泣いちゃうよ?」

「ん? あぁ、すまん。忘れてたわ。あと、甘々なやり取りなんてしてないと思うぞ?」

「正直すぎやしないか! あと、甘ったるすぎて砂糖吐きそうだったわ!」

 慎也の言葉に周りのクラスメイト達もうんうんと頷いている気がするがきっと気のせいだろう。きっと、そうに違いない。

 それから少しすると担任の教師が教室に入ってきて、朝のホームルームが始まった。ホームルームが終われば俺は色々なやつから詰め寄られるのだろうかとも思ったがそんな心配は杞憂に終わった。そもそも俺に話しかけてくるようなやつなんて慎也しかいなかったし、その慎也は俺とみゆが2人暮らしをしていることは知っているので今更なのだから何も聞いてくることは無いし。

 みゆの方を見てみると、何人かの女子に話を聞かれているみたいだけどいつも通りの澄まし顔でやり取りをしていると思ったら、みゆが顔を赤らめると女子達はキャーキャーとはしゃいでいた。女子は恋バナが大好きだというのは本当だったんだな.......。帰ったらみゆにどんな話をしていたのか聞こう。2人暮らしをしていることは言っていないだろうが、俺に関することには違いないだろうから俺も聞く権利はきっとあるはずだ。というか、何を言われたのか怖いので絶対に聞こうと俺は心に決めたのだった。
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