寒空の下、君を買う ~君が死ぬことは俺が許さない~

白浜 海

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「和哉.......あんた.......詐欺にでもあったのかい?」

「帰ってきたばかりの孫に対してご挨拶だなばあちゃん。あと、どういう意味だ?」

「あんたなんかにこんな可愛い彼女なんかできるかいな」

 確かに俺もそれは思うけども、実際にできちゃったんだし一緒に暮らしちゃってる訳だし.......。ばあちゃんの言う通り、みゆって俺にはもったいないくらいには可愛いんだよなぁ。最近なんか前より可愛くなった気がするし.......あれ? 俺って詐欺とかあってないよな?

「は、初めまして.......白夢みゆと申します.......」

「これはこれはご丁寧にどうも。そこの愚息の祖母の黒嶋千代です。これだけは確認しとかないといけねぇんだが、本当に和哉の彼女さんなのかい?」

「だから、そう言ってるだろ?」

「あんたはおだまり! ばあちゃんはあんたの彼女さんに聞いてるんだよ!」

「わ、私は和哉くんとお付き合いさせてもらっています」

「.......嘘は言っていないように見えるね。なら、和哉のことを好きになった理由を3つほど答えてごらんなさい」

 いきなりばあちゃんは何を言っているのだろうか? というか、そんなこと俺の目の前で言われたらさすがに気まずくなるんですけど?

「俺.......先に家入ってていいか?」

「和哉はそこに黙って立ってなさい」

「.......はい」

 昔からなぜかばあちゃんの言うことには逆らえないんだよな.......。これが年寄りの威光というやつなのだろうか?

「本当に和哉の彼女さんなら3つくらい簡単に言えるだろう?」

「.......無理です」

「へぇ.......」

 え? 無理って3つも俺のいいところなんてないってこと? え? まじで? 泣いちゃうよ? なんで俺たち付き合ってるの? 本当に詐欺なの? 

「私は和哉くんだから好きになったんです。優しいだとか、かっこいいだとかそんな有り体なことは言いたくありません。なので、私の答えは和哉くんだから好きになった。それだけなので3つも答えることはできません」

「!?」

 やばい.......そんな真っ直ぐな目で当たり前の事のように堂々とそんなことを本人の前で言うのはやめて欲しい.......。もう嬉しいのやら恥ずかしいのやらで頭がおかしくなりそうだし、さっきから心臓もバクバクしすぎているため、血液の周りが良くなり過ぎて全身が熱いのだ。

「和哉。あんた、どうやってこんなに可愛くて礼儀も正しい子にここまで惚れさせたんだい?」

「.......分からん」

「まぁ、どうせあんたの事だから考え無しに行動しただけなんだろうしね」

 ぐうの音も出ないな.......。俺はばあちゃんの言う通り自分が正しいと思ったことだけをしてきたわけだし.......。

「白夢さんといったかい?」

「はい」

「合格だよ」

「?」

「あんたになら和哉を任せられそうだ。これからもうちの愚息を頼むよ?」

「はい! もちろんです!」

「うん。いい返事だ。さっ、早く家に上がりな。いつまでも客人を家の外に立たせて置く訳にはいかないからね」

 そう言ってばあちゃんは家の中に入っていく。.......本当に好き勝手しすぎじゃないだろうか?

「いいおばあちゃんだね」

「そうか?」

「和哉くんのことを本当に大事に思っているのが分かるから」

 まぁ、ばあちゃんがみゆのことを試すようなことをしたのも間違いなく俺の事を思ってのことなのだろうからそればっかりは否定できないな。両親を早くに亡くした俺を育ててくれたのはばあちゃんだし、本当にばあちゃんには感謝しかないからな。

「それにしてもよかったわい」

「なにが?」

「赤飯が無駄にならずに済みそうだ」

「それはやめてくれて言ったよな!?」

 感謝はしてるんだけど.......こういうところだけは本当に直して欲しい。うん、まじで。
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