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無自覚のデレ
しおりを挟む昨日の顛末と俺の相談を武宮さんと慎也の2人に聞いてもらったところで昼休みもそろそろ終わるといった時間になったので教室に戻っていく。慎也とはクラスが違うので途中で別れて武宮さんと一緒に教室に入ると、
「「「黒嶋くん!!」」」
「はい?」
なぜだか女子3人が俺の方へと寄ってくる。その後ろから少し申し訳なさそうな顔でみゆが着いてきているのでそういうことなのだろう。みゆの事だから俺の事を悪く言ったりはしてないだろうけど一体何を話したんだ.......。
「「「黒嶋くんはもっとデレなよ!!」」」
「.......は?」
「あっ、私もそれは思う」
本当にみゆは何を話したんだ? 何を話したら俺にデレろ何て話したことも無い女子達に言われるような展開になるんだ? そして何ナチュラルに武宮さんは賛同してるんだろうか。
「私達は前に校内新聞に書いてあった記事みたいに2人はもっと甘々な2人だと思ってたのに!」
「そうだよ! あの記事に書いてあるみたいなことはほとんどないなんて信じられないよ!」
「それどころか最近少し揉めちゃったんだって? 本当にあの記事を読んでキュンキュンしてた私の純情を返してよ!」
「あっ、私は席に戻ってるね」
「逃げるな」
「.......はい」
校内新聞で見た記事のようにって言われてもあの記事に書いてある8割.......いや9割は嘘なのだからそのことについて責められる俺は理不尽極まりないのだが。それに、純情を返してだの言われても返して欲しければそこで俯いている武宮さんに返してもらってくれ。その本人が逃げようとしたからちゃんと捕まえといてあげたから。
「武宮さん。頼んでいいよね?」
「.......はい。実はあの校内新聞を書いたのは私なんだけど」
「武宮さんだったんだ!?」
「うん。それでね2人には取材させてもらったんだけど.......彼氏さんがヘタレなせいで記事にするようなことがあんまりなかったの.......だから、話を少し盛った記事になっちゃったの。ごめんなさい!」
「「「まぁ、ヘタレな彼氏だし仕方ないよねぇ.......」」」
おい待て、なんでそうなる。そしてなぜ、女子3人組もそれで納得している。というか、
「武宮さん? あの記事が少し盛っただけだって?」
「え? うん」
水族館なんて行ったことも無いのに行った扱いにした挙句に俺がキスを迫ったとか書いてあったよな? あれを少しで済ましてしまうのは本気で神経を疑うぞ.......。
「私達はあの記事が盛っててもそうでなくても関係無いんだよ!」
「そうだよ! もっとデレてあげなよ!」
「白夢さんが可哀想だよ!」
「いや、別に私は今のままの和哉くんでも」
「「「ダメ!!!」」」
一体何が彼女達をここまで突き動かすのだろうか? それに、デレてあげてなんて言われても俺は何をすればいいんだろうか?
「なぁ、そうは言うが俺にどうしろってんだ?」
「そりゃあ、もっと積極的に手を繋いであげたり?」
「抱きしめてあげたり?」
「愛を囁いてあげたり?」
それなら結構している気もするのだが.......。抱きしめてあげるっていうのはしたことないかもしれないけど手を繋ぐくらいならしょっちゅうだし、愛を囁くっていうのは.......
「なぁ、みゆ」
「なに?」
「好きだ」
「私もだよ?」
「これでいいのか?」
「「「「.....................................」」」」
え? 何でそんな目で見てくるんだ? 愛を囁けっていうから言っただけなのに。ご期待に答えた結果、すごいジト目を向けられるって理不尽じゃないか?
「何このバカップル.......」
「何で平然としているんだろうねこの2人は.......」
「これがリア充の余裕なの.......?」
「みゆちゃんと黒嶋くんだからね.......」
「3人ともさっき言ってた意味分かってくれた?」
さっき言ってた意味? 一体なんの事だ? 昼休みに何かはなしていたのだろうか?
「うん......和哉くんは素でデレているってのはよく分かったよ」
「私達としてはもっと分かりやすくデレるべきだと思ってたけどこれはこれでありなのかもしれないね」
「だね。傍から見ると分かりにくいけどちゃんと彼氏してたんだね」
「何言ってんだ?」
「「「しかも、無自覚なんだもんね」」」
この3人はさっきから本当に何を言っているんだ? みゆと武宮さんを見てもうんうんと頷いているし。俺の事について話しているはずなのに俺だけ蚊帳の外みたいだ。おかしくないか?
「けど、白夢さんはこれがいいんだよね?」
「うん」
「そっかぁ。それならもう私達がとやかく言えないね」
「だね。黒嶋くんも急にごめんね?」
「いや、まぁいいけど」
結局何が何だか分からないままこの場は解散となり午後の授業が始まるのだった。
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