寒空の下、君を買う ~君が死ぬことは俺が許さない~

白浜 海

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約束

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「あぁ、うん。確かに魚は美味しいよな」

「それがどうかしたの?」

「どうかしたというかなんというか.......」

「?」

「まぁ、要するに俺が言いたいのは.......2人で水族館に行かないか?」

「行く!」

「即決だな.......」

 まさかみゆがここまで食い気味に反応するとは思わなかった.......。けど、それだけいきたいっねことでいいんだよな? それなら、俺としてはお詫びのつもりではあるのだけれど一緒に楽しむしかなさそうだ。

「うん。私まだ水族館とか行ったことないから行ってみたかったから」

「小学生の頃とかに遠足とかで行かなかったのか?」

「私の通っていた小学校では行かなかったの。水族館じゃなくて動物園だったから」

「なるほど。それなら、思いっきり楽しむしかないな」

「うん。今からもう楽しみだよ」

 そう言ってみゆは本当に楽しみにしているらしくニコニコとしている。まさかここまで水族館に魅力を感じてくれるとは.......。かくいう俺も水族館には小学生の頃に行った遠足でしか行ったことがないので少し楽しみであったりする。

「それじゃあ、今週はさすがに無理だから来週の土曜日なら大丈夫そうか?」

「大丈夫だと思う」

「それなら来週の土曜日ということで」

「1週間もあるしお魚さんの勉強しておかないとね」

「魚の勉強?」

「うん。ちゃんと調べておいた方が楽しめると思って」

「みゆは真面目だなぁ」

 水族館に行くからといって魚について調べてから行こうだなんて思う人は世の中にどれだけいるだろうか? けどまぁ確かにみゆの言う通りある程度の知識があった方が楽しめるというのも間違いないでは無いだろう。これは水族館だけに関わらず他の何事においても共通して言えることではあるのだろうけど。

「そういうことなら俺も」

「和哉くんはダメ」

「え?」

「和哉くんには私が教えてあげるからダメだよ?」

「お、おう.......」

 なんだろうこの破壊力は.......上目遣いでただダメと言われただけなはずなのに.......それだけのはずなのに.......胸が締め付けられてしまうようなこの感覚は.......。まぁ、つまり何が言いたいかって言うとみゆが可愛すぎてやばい。
 本当になんでか知らないけど.......いやまぁ、心当たりはありすぎるんだけども.......最近のみゆが以前にも増して可愛く見えて仕方ない。このままだと俺の心臓が本当にもちそうに無いから慣れないといけないんだけど何年経ってもみゆのこの急な不意打ちは慣れる気がしない.......。

「ところで、なんでいきなり水族館なの?」

「.......それはまぁ、ほら?」

「?」

「最初はお詫びのつもりだったんだけど.......」

「だったけど?」

「今はもうお詫びとかじゃなくてみゆと一緒に水族館に行きたいと思ってるので.......お詫びはまた別の機会で」

「別にそんなのいらないよ? 私は和哉くんがいてくれるだけでいいんだから。お詫びなんて気にしないで?」

「そうは言っても.......みゆは何か欲しい物とかないのか?」

「う~ん.......あっ、」

「なにかあるのか?」

「欲しいものというか.......何か和哉くんとお揃いのが欲しい」

「!?」

 あぁ.......神様.......あなたは俺のことが嫌いなのですか? 大好きなのですか? 俺を殺したいのか幸せにしたいのかどっちなんですか.......このままだと本当にショック死してしまいます.......。

「.......ダメ?」

「いや、みゆがそれがいいって言うならそれでいいんだけど」

「だったらそれがいい!」

「お、おう。だったら水族館に行った時にでも何かお揃いで買うか?」

「うん! 約束だよ?」

「あぁ、約束だ」

 俺がそう言うとみゆは花が咲いたかのような笑顔を俺に見せてくれる。俺はこの瞬間に自分の生まれてきた意味を理解した。俺はこの笑顔を見るために生まれてきたのだろう。.......天国の父さん、母さん、あなた達の息子は今すごく幸せです。
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