2 / 61
WinWinな誘い
異邦人
しおりを挟む
(げっ……外国人⁈)
公太は顔をしかめ、明らかに困った表情で身構えた。
――昨今の外国人旅行者を増やそうとする流れは、ココの様な寂れた地方都市にも波及しているらしく、街を歩く外国人の姿を見かける事は多くなった。
この近辺には、壮大なオーシャンビューを望める岬や、波が長年に渡って削った奇岩の類が並ぶ海岸線があり、それがまるでファンタジー世界の様相だと評判で、外国人観光客も増えている。
それに――その様相は今、公太が見ていたアニメの制作秘話として、ココの様相を参考にしたという監督のインタビュー記事がアニメ誌に載ったらしく、所謂『聖地』として、国内からの観光客も増えそうという見込みだ。
「あ~……どんと、すぴぃく、インぐりっしゅぅ…」
――と、公太はこめかみを引き攣らせながら、カタコトにも当たらない酷い発音の英語で、そのフードを被ったブロンド女性の尋ねにそう答えた。
「――アッ!、ニッホンゴ、ワカリマス……ダイジョブ、シャベレマス」
彼女は公太の酷い返答に、身振り手振りを交えながら、口元を緩ませてそう応じた。
「アノォ……あにめ、ミテル――オスキ、デスカ?」
彼女は公太のスマホの画面に目をやり、一時停止となってアップのまま静止している、彼女と同じブロンドの髪色であるエルフ女性の魔法使いを指差した。
(ああ~っ、『日本凄い』系番組にありがちな、アニオタ外国人かぁ……)
公太は納得した表情に変え、一度軽く頷いて……
「――ハイ、ソウデスヨ?」
――と、彼女のカタコトが伝染した体でそう答えた。
ハイテク万歳な現代の世にとって、例の記事が世界へまで拡がるのなど容易い事だ。
きっと、あの記事を知って、聖地巡礼を決め込んだアニオタ外国人旅行者なのだろうと、公太は合点していた。
「……ッ!」
彼女は軽く手を叩くと、また頬を緩めて嬉しそうな口元を覗かせると、公太の右隣に遠慮無く座って、被っていたフードを少しかき上げた。
「――っ⁉」
公太は、その彼女の積極的行動と同時に、見えた彼女の耳の形を見て驚いた。
それは――その彼女の耳は、先ほどまで画面上で動いていた、エルフ女性の魔法使いと寸分違わない、三角状の耳だったからだ。
同時に、少しではあるが見えた彼女の顔も、透き通る様な白い肌が印象的な、ハリウッド女優さながらの美形である事にも驚いては居た。
「あ~……コスプレ?、凄くリアルだね」
公太はそれが、特殊メイクの類の凝った造りのモノだと思い……
(――恐いぐらいの気合の入れようだな、どうせ聖地にまで行くなら、赴く恰好もこだわってかい……)
――と、顎に手を置いて彼女の様子をまじまじと見据えた。
「エッ⁈、アァ、ハイ……」
公太の反応に、彼女は何故か残念そうに答えると、その彼女が座った公太の右側の脚に着けられた補助装具と、左側に立てかけられた杖を見やり……
「――アノ、シツレイ、イイマス……アシ、テ、ウゴカナイ?」
――と、公太の障害を察してか、辛そうな表情でそう尋ねて来た。
「ああ……そう、脳――解る?」
公太が自分の頭を指で突き、その理由を端的に述べると、彼女は辛そうな表情のまま、強く二度頷く。
「アノォ…ワタシ、アナタ――モット、シャベリタイ……イッショ、イイ?」
彼女はそう言うと、彼の両手を手に取り、顎でエレベーターの扉を指した。
「クルマ、アリマス――イキマショウ」
(――って言われて、何となく一緒に駐車場までは来たけど……)
――と、エレベーターから降りた公太は、先を歩く彼女の背を見やりながら、少し後悔をしていた。
見知らぬ外国人の言葉を疑いもなく信じ、着いて来てしまった自分の浅はかさと同時に――信じた理由の大半を占めていたのは、微かに見えた彼女のハリウッド級の美貌に魅せられたからという、ある種の助平根性に呆れたのモノだ。
(――まだ、少なからずそんな気持ちを持ってるんだねぇ……こんなカラダなクセに。
万が一……んにゃ、億がイチでこの美人と『どうにか』なったとしたって、こんな片麻痺のカラダじゃ、”ナニ”も出来ねぇってのにさぁ……)
公太は軽く苦笑いを覗かせながら、フードと繋がっている大きめのパーカー越しの背から見ても、抜群のスタイルを覗かせている彼女の肢体を見据える。
(……気合入れてコスって来たのは良いけど、流石にそのままで駅前を歩くのはヤバいから、急遽パーカーを買ったんだろうな。
コレ、商店街の洋品店でざっと5年前から未だに終わらない、在庫処分閉店セールのワゴンで見たヤツだぞ……きっと。
外人相手にボロい商売しやがって……日本を貶めてんじゃねぇよ、あそこのオバちゃん)
――と、公太はその魅惑の肢体から話題を逸らすつもりで、彼女の服装とその経緯の推察を始めた。
(――まっ、まあ、日本よりも海外の方が、ボランティア精神が根深いって言うしぃ……だから、善意で車で送ってくれるってんだろう…
けっ!、決して俺はっ!、『別の』ボランティアを期待してたワケじゃないぞっ!?)
公太が大きく首を横に振り、話題を転じても未だ拭えない助平根性と戦っていると――
「アノ……」
彼女は、車が止まってはいない、角のスペースの上に立ち止まり、くるりと身を翻した。
「――ゴメンナサイ、クルマ、ウソ……デズ」
――と、辛そうに涙混じりの声で言った。
公太は顔をしかめ、明らかに困った表情で身構えた。
――昨今の外国人旅行者を増やそうとする流れは、ココの様な寂れた地方都市にも波及しているらしく、街を歩く外国人の姿を見かける事は多くなった。
この近辺には、壮大なオーシャンビューを望める岬や、波が長年に渡って削った奇岩の類が並ぶ海岸線があり、それがまるでファンタジー世界の様相だと評判で、外国人観光客も増えている。
それに――その様相は今、公太が見ていたアニメの制作秘話として、ココの様相を参考にしたという監督のインタビュー記事がアニメ誌に載ったらしく、所謂『聖地』として、国内からの観光客も増えそうという見込みだ。
「あ~……どんと、すぴぃく、インぐりっしゅぅ…」
――と、公太はこめかみを引き攣らせながら、カタコトにも当たらない酷い発音の英語で、そのフードを被ったブロンド女性の尋ねにそう答えた。
「――アッ!、ニッホンゴ、ワカリマス……ダイジョブ、シャベレマス」
彼女は公太の酷い返答に、身振り手振りを交えながら、口元を緩ませてそう応じた。
「アノォ……あにめ、ミテル――オスキ、デスカ?」
彼女は公太のスマホの画面に目をやり、一時停止となってアップのまま静止している、彼女と同じブロンドの髪色であるエルフ女性の魔法使いを指差した。
(ああ~っ、『日本凄い』系番組にありがちな、アニオタ外国人かぁ……)
公太は納得した表情に変え、一度軽く頷いて……
「――ハイ、ソウデスヨ?」
――と、彼女のカタコトが伝染した体でそう答えた。
ハイテク万歳な現代の世にとって、例の記事が世界へまで拡がるのなど容易い事だ。
きっと、あの記事を知って、聖地巡礼を決め込んだアニオタ外国人旅行者なのだろうと、公太は合点していた。
「……ッ!」
彼女は軽く手を叩くと、また頬を緩めて嬉しそうな口元を覗かせると、公太の右隣に遠慮無く座って、被っていたフードを少しかき上げた。
「――っ⁉」
公太は、その彼女の積極的行動と同時に、見えた彼女の耳の形を見て驚いた。
それは――その彼女の耳は、先ほどまで画面上で動いていた、エルフ女性の魔法使いと寸分違わない、三角状の耳だったからだ。
同時に、少しではあるが見えた彼女の顔も、透き通る様な白い肌が印象的な、ハリウッド女優さながらの美形である事にも驚いては居た。
「あ~……コスプレ?、凄くリアルだね」
公太はそれが、特殊メイクの類の凝った造りのモノだと思い……
(――恐いぐらいの気合の入れようだな、どうせ聖地にまで行くなら、赴く恰好もこだわってかい……)
――と、顎に手を置いて彼女の様子をまじまじと見据えた。
「エッ⁈、アァ、ハイ……」
公太の反応に、彼女は何故か残念そうに答えると、その彼女が座った公太の右側の脚に着けられた補助装具と、左側に立てかけられた杖を見やり……
「――アノ、シツレイ、イイマス……アシ、テ、ウゴカナイ?」
――と、公太の障害を察してか、辛そうな表情でそう尋ねて来た。
「ああ……そう、脳――解る?」
公太が自分の頭を指で突き、その理由を端的に述べると、彼女は辛そうな表情のまま、強く二度頷く。
「アノォ…ワタシ、アナタ――モット、シャベリタイ……イッショ、イイ?」
彼女はそう言うと、彼の両手を手に取り、顎でエレベーターの扉を指した。
「クルマ、アリマス――イキマショウ」
(――って言われて、何となく一緒に駐車場までは来たけど……)
――と、エレベーターから降りた公太は、先を歩く彼女の背を見やりながら、少し後悔をしていた。
見知らぬ外国人の言葉を疑いもなく信じ、着いて来てしまった自分の浅はかさと同時に――信じた理由の大半を占めていたのは、微かに見えた彼女のハリウッド級の美貌に魅せられたからという、ある種の助平根性に呆れたのモノだ。
(――まだ、少なからずそんな気持ちを持ってるんだねぇ……こんなカラダなクセに。
万が一……んにゃ、億がイチでこの美人と『どうにか』なったとしたって、こんな片麻痺のカラダじゃ、”ナニ”も出来ねぇってのにさぁ……)
公太は軽く苦笑いを覗かせながら、フードと繋がっている大きめのパーカー越しの背から見ても、抜群のスタイルを覗かせている彼女の肢体を見据える。
(……気合入れてコスって来たのは良いけど、流石にそのままで駅前を歩くのはヤバいから、急遽パーカーを買ったんだろうな。
コレ、商店街の洋品店でざっと5年前から未だに終わらない、在庫処分閉店セールのワゴンで見たヤツだぞ……きっと。
外人相手にボロい商売しやがって……日本を貶めてんじゃねぇよ、あそこのオバちゃん)
――と、公太はその魅惑の肢体から話題を逸らすつもりで、彼女の服装とその経緯の推察を始めた。
(――まっ、まあ、日本よりも海外の方が、ボランティア精神が根深いって言うしぃ……だから、善意で車で送ってくれるってんだろう…
けっ!、決して俺はっ!、『別の』ボランティアを期待してたワケじゃないぞっ!?)
公太が大きく首を横に振り、話題を転じても未だ拭えない助平根性と戦っていると――
「アノ……」
彼女は、車が止まってはいない、角のスペースの上に立ち止まり、くるりと身を翻した。
「――ゴメンナサイ、クルマ、ウソ……デズ」
――と、辛そうに涙混じりの声で言った。
10
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
【村スキル】で始まる異世界ファンタジー 目指せスローライフ!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は村田 歩(ムラタアユム)
目を覚ますとそこは石畳の町だった
異世界の中世ヨーロッパの街並み
僕はすぐにステータスを確認できるか声を上げた
案の定この世界はステータスのある世界
村スキルというもの以外は平凡なステータス
終わったと思ったら村スキルがスタートする
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる