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発端
一夜明けて
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日の出と同時に、深淵の様な夜闇が払われ、夜中の惨劇の度合いが明らかになってきたココ――ヤマカキ村。
そこには、雄々しい甲冑を纏った人馬が立っていた。
「これは――どうした事か?」
馬上に跨るその人は、見える顔からは男である事と、落ち着きを感じさせる顔立ちで、歳は30は悠に超えているという点も読み取れる。
一つ――違和感を覚える面を答えるのなら、今のセリフを聞いても解る様に、このヤマカキ村の惨状を見ても、まったく動じていないコトであろう。
更に、男が纏う甲冑も、実に不自然なシロモノである。
その甲冑は、全面全体が眩い黄金で出来ており、それは朝日に照らされ、眩しい程の輝きを放っていた。
甲冑の胸前には、大きな"鳳凰"の紋が彫られていて、スヨウの武人であることは一目両全だが、その恰好から察するに、相当な立場の人間である事も一目で解かる。
「御家方様――生きている者は、一人とて居りませぬ」
その武人の元に、周りを検分してきた部下らしい者が、側で畏まって報告した。
『御家方』というのは、ツクモの世界では最上級に数えられる敬称で、その呼び名の意味は、ツクモでは数少ない、"世襲が許された身分"の者――即ち、各国の国守のみを指す敬称である。
つまり、胸前の鳳凰の紋で解かる様に、御家方と呼ばれたこの男は――スヨウの国守、スヨウノ・ノブタツ、その人である。
「――それは承知だ、何せ、そう"命じた"のだからな。
どうしたのかと聞いたのは、死んでいるのが"村人のみ"ではなく、焼き払えと命じたはずなのに、火も上がっていない事だ」
ノブタツは臆する事無く、昨晩の襲撃が自分の指示に因るモノであるコトを、さらりと言ってのけたのである。
「"筋書"では――我がこうして、朝駆けに出掛けた所に、燻るニオイを嗅いで、この惨状に気付く手筈だったはず――それが、襲撃を命じた国境警備隊までも、一人残らず死んでいるというのは……どういう状況なのかと、聞いておるのだ」
「――逆に、警備隊が襲撃された、そう考えるのが、最も妥当でしょう。
村人を始末した後から、焼き払う前の間に……」
部下らしい男は、冷静にこの状況を分析し、満点とも言える推測を述べた。
「逆に襲撃されただと?!、それは、何者の仕業だと言うのだ?
盗賊の類と鉢合ったと仮定しても……我が軍の警備隊が、その類を相手に、皆殺しに合う程に遅れを取るとは、到底思えぬが……」
ノブタツは、その推測に納得出来ず、怪訝な表情を見せた。
「――もう一つ、とても、信じ難き事柄があります。
死んだ兵の傷口が――"同じ刀傷"なので、相手は……"たった一人"だったと推測出来ます」
部下らしい男はこめかみに冷汗を垂らし、近くに転がっていた死体の傷口を指差した。
「ふっ……バカなっ!
襲撃を命じた隊は、三十人ほども人数が居たはずなのだぞ?、それを一人でなどと――先の大戦に聞く、一人で二千のハクキ軍の一隊を、一人で壊滅させたという、刀聖の逸話でもあるまいし」
ノブタツは、呆れた顔で、部下らしい男の推測を一蹴した。
「――まあ良い、詳細の調べは、"暗衆"に任せ、我らは予定どおりにコトを運ぼう――"筋書"を少々替えてな」
――"暗衆"とは、諜報活動や秘密工作、暗殺などを担当する、軍から独立した国守直属の特殊部隊の総称である。
解り易く言えば……スパイや忍者の類を想像して貰うのが適当であろう。
ノブタツは、馬に踵を返させ、腹を蹴って駆け足の合図を送り、村から街道に至る道へと向かわせた。
それに追従しようと、部下らしい男も側に待機させていた馬に跨ろうとした時、彼の目に、側に転がっていた、"あの隊長"――中年の男の、うつ伏せとなった死体が目に留まった。
部下らしい男は、それが妙に気になり、徐に中年の男の死体を仰向けに裏返す。
(――っ?!)
中年の男の死体には、先程調べた兵の傷口の刀傷と違い、首から下の上半身が、"特殊なモノ"でえぐられた様な、奇妙な傷口があった。
「これは――界気……か?。
しかも、刀傷とは似て否なる、なんとも面妖な傷口――やはり、一人ではなかった、というコトなのか?」
部下らしい男は片手で頭を抱え、悩みながら鞍に跨った。
この、部下らしい男の誤認が、ソウタとレンが追っ手に会わなくなるキッカケとなり、それがこの先に起きる未曾有の大戦の行く末をも、大きく揺さぶる要因となるであった。
(――陽が、昇り始めたな)
場面は替わり、追っ手からの逃亡を謀ったソウタとレンは、テンを一晩中全力で走らせ、早々に森の中を抜け、今度は、一面に広がった草原の中を駆けていた。
ソウタは、必死に腰にしがみ付いている、レンの手を軽く叩いた。
「~~っ!?、はっ……いぃ――っ?」
テンの走るスピードは、乗り慣れない者にとって、我々の語意で表せば絶叫マシーン並みの速度の様に感じられ、ソレに、固定ベルトも無い座席に座っている様な状況のレンは、ソウタの腰にしがみ付いているのが、"やっと"なのである。
「コッチを見なくてもっ!、返事もしなくても良いっ!、聞いているだけでっ!」
ソウタは、レンを気遣ってそう言うと――
「追っ手の気配が無いから、ある程度は撒けたと思う――だから、もう少ししたら、休ませてあげられるからっ!
もうちょっとだけ、耐えてくれなっ?」
レンは、返事の替わりに、ギュっとソウタの腹を抓る。
「――よしっ!、じゃあ……まだ飛ばすぜ!、ハッ!」
ソウタが、鞘をムチ代わりに使ってテンの尻を叩くと、テンはさらにスピードを上げた。
それから更に、なんと6時間ほどの間もテンは走り続けた!
ツクモの馬たちは、その広い大陸の貴重な人々の脚として対応するため、長距離向きの血統が吟味され、訓練にもそのための工夫がされている――だから、それぐらいの長時間、長距離の疾走は、彼らにとっては当たり前なのだ。
その末に辿り着いたのは――並々とした流量を誇る、大河の岸であった。
そこで、テンに脚を止めさせた、ソウタは――
「ここで休もう――で、今晩の野営も、ココで張ろうか」
――そう言って、ゆっくりと下馬した。
レンも、それに追従しようと、そぉ~と草原に足を降ろした。
「あのぉ~……ここは?」
レンは辺りをおどおどと見渡して、ソウタにそう尋ねた。
「ああ、この川は――ミモト川だよ」
ソウタは、レンに顔を向ける事無く、テンの馬具を外しながらサラッと答えた。
「――えっ?!」
対するレンは、至極驚いて、口をあんぐりと開け放った。
この川は、大陸の中心帯の東側を横断している、ツクモ最長の川、ミモト川である。
ミモト川の源流は、天船が眠っている場所とされている萬神道の聖地、クリン高原にあるセイジ湖から流れており、故に"聖地を源泉とする神聖な川"――神川とまで呼ばれる河川なのだ。
今、レンが観ている光景というのは、一般的にこのツクモの地に生まれた者なら、一度は観ておくべきだとされている、神聖な光景なのである。
「こっ!、これが"神川様"っ!」
ツクモの人々――特に、敬虔な萬神道信者は、ミモト川の事をこう呼ぶのである。
「――ってぇ?!、確か……村から、神川様の畔に至るには、馬に乗っても3日は掛かるって、行商のおじさんが――」
「うん、そうだな。
でも、今は、かなり早駆けさせたし――テンは、並みの馬よりも、かなり速いからなぁ」
驚くレンをまったく気にせず、ソウタがテンの馬具を外してやると、テンは嬉しそうに川に向って歩き出し、ガブガブと乱暴に、その"神川様"の水を飲み始めた。
「キミも、川の水でも飲んで、顔も洗ってスッキリすると良い――転んだからか、顔、泥だらけだぜ?」
ソウタに指摘され、ようやく自分の今の見た目に気付いたレンは、泥を被っていても解かるほどに真っ赤に赤面して、慌てて川辺へと走った。
レンは、川の流れに向けて一礼し、深く合掌してから、その流水を手酌で採って、バシャバシャと顔を洗い始めた。
(――さて、俺もあの娘を驚かせない顔にしなきゃな)
ソウタが、レンの目線から顔を背ける様に徹していたのは、村での戦闘で浴びた返り血で、恐ろしい形相になっているのは、明白だと思えたからだった。
お互い、顔を洗い終え、荷物を降ろした場所に集まると、ソウタは、改めて見るレンの姿に……一瞬、言葉を失った。
川の水で清められ、夜闇の下ではなく、日の下で観るレンの容姿は――目鼻立ちはハッキリとしていて、田舎の村娘には似合わない、気品も感じる整った顔立ちである。
だが、川の水で荒く洗われ、まだ濡れている無造作に垂れた長い髪から、その育ちの素朴さも感じさせ、漂う風体からも、若干の幼さを覗かせる――"美少女"と呼ぶのが、一番適当であろうと思える女性だった。
彼女の事を、最初"女"と呼称したのは、語り手の失策であったと恥じよう。
その原因は――あの侍たちが"上玉"と評した様に、その身体のラインに尽きるだろう。
背格好も、身体の造りも、総体的には小振りであるが、全体のシルエットは妙な艶かしさも秘めていて、そういうギャップが、色香と化している様にも感じる。
「……?、ソウタさん?」
レンは、突然黙り込んだソウタの顔を、不思議そうに覗き込んだ。
ソウタは、ハッ!となって我に返り、照れ臭そうに――
「――いっ!、いや、なんでもない……濡れたままだとマズイから、すぐ火を点けるからさ」
――平然を装って、界気を使って火を起こす準備を始めた。
「――荷物の中に、星石があるから、出してくれるか?
それと、薪になりそうなモノも、拾ってくれると助かる」
「あっ、はい……」
レンに用を言い付けて、側から離したソウタは、彼女がしがみ付いていた、自分の腰の部分を揉んで、ちょっと赤面していた。
そこには、雄々しい甲冑を纏った人馬が立っていた。
「これは――どうした事か?」
馬上に跨るその人は、見える顔からは男である事と、落ち着きを感じさせる顔立ちで、歳は30は悠に超えているという点も読み取れる。
一つ――違和感を覚える面を答えるのなら、今のセリフを聞いても解る様に、このヤマカキ村の惨状を見ても、まったく動じていないコトであろう。
更に、男が纏う甲冑も、実に不自然なシロモノである。
その甲冑は、全面全体が眩い黄金で出来ており、それは朝日に照らされ、眩しい程の輝きを放っていた。
甲冑の胸前には、大きな"鳳凰"の紋が彫られていて、スヨウの武人であることは一目両全だが、その恰好から察するに、相当な立場の人間である事も一目で解かる。
「御家方様――生きている者は、一人とて居りませぬ」
その武人の元に、周りを検分してきた部下らしい者が、側で畏まって報告した。
『御家方』というのは、ツクモの世界では最上級に数えられる敬称で、その呼び名の意味は、ツクモでは数少ない、"世襲が許された身分"の者――即ち、各国の国守のみを指す敬称である。
つまり、胸前の鳳凰の紋で解かる様に、御家方と呼ばれたこの男は――スヨウの国守、スヨウノ・ノブタツ、その人である。
「――それは承知だ、何せ、そう"命じた"のだからな。
どうしたのかと聞いたのは、死んでいるのが"村人のみ"ではなく、焼き払えと命じたはずなのに、火も上がっていない事だ」
ノブタツは臆する事無く、昨晩の襲撃が自分の指示に因るモノであるコトを、さらりと言ってのけたのである。
「"筋書"では――我がこうして、朝駆けに出掛けた所に、燻るニオイを嗅いで、この惨状に気付く手筈だったはず――それが、襲撃を命じた国境警備隊までも、一人残らず死んでいるというのは……どういう状況なのかと、聞いておるのだ」
「――逆に、警備隊が襲撃された、そう考えるのが、最も妥当でしょう。
村人を始末した後から、焼き払う前の間に……」
部下らしい男は、冷静にこの状況を分析し、満点とも言える推測を述べた。
「逆に襲撃されただと?!、それは、何者の仕業だと言うのだ?
盗賊の類と鉢合ったと仮定しても……我が軍の警備隊が、その類を相手に、皆殺しに合う程に遅れを取るとは、到底思えぬが……」
ノブタツは、その推測に納得出来ず、怪訝な表情を見せた。
「――もう一つ、とても、信じ難き事柄があります。
死んだ兵の傷口が――"同じ刀傷"なので、相手は……"たった一人"だったと推測出来ます」
部下らしい男はこめかみに冷汗を垂らし、近くに転がっていた死体の傷口を指差した。
「ふっ……バカなっ!
襲撃を命じた隊は、三十人ほども人数が居たはずなのだぞ?、それを一人でなどと――先の大戦に聞く、一人で二千のハクキ軍の一隊を、一人で壊滅させたという、刀聖の逸話でもあるまいし」
ノブタツは、呆れた顔で、部下らしい男の推測を一蹴した。
「――まあ良い、詳細の調べは、"暗衆"に任せ、我らは予定どおりにコトを運ぼう――"筋書"を少々替えてな」
――"暗衆"とは、諜報活動や秘密工作、暗殺などを担当する、軍から独立した国守直属の特殊部隊の総称である。
解り易く言えば……スパイや忍者の類を想像して貰うのが適当であろう。
ノブタツは、馬に踵を返させ、腹を蹴って駆け足の合図を送り、村から街道に至る道へと向かわせた。
それに追従しようと、部下らしい男も側に待機させていた馬に跨ろうとした時、彼の目に、側に転がっていた、"あの隊長"――中年の男の、うつ伏せとなった死体が目に留まった。
部下らしい男は、それが妙に気になり、徐に中年の男の死体を仰向けに裏返す。
(――っ?!)
中年の男の死体には、先程調べた兵の傷口の刀傷と違い、首から下の上半身が、"特殊なモノ"でえぐられた様な、奇妙な傷口があった。
「これは――界気……か?。
しかも、刀傷とは似て否なる、なんとも面妖な傷口――やはり、一人ではなかった、というコトなのか?」
部下らしい男は片手で頭を抱え、悩みながら鞍に跨った。
この、部下らしい男の誤認が、ソウタとレンが追っ手に会わなくなるキッカケとなり、それがこの先に起きる未曾有の大戦の行く末をも、大きく揺さぶる要因となるであった。
(――陽が、昇り始めたな)
場面は替わり、追っ手からの逃亡を謀ったソウタとレンは、テンを一晩中全力で走らせ、早々に森の中を抜け、今度は、一面に広がった草原の中を駆けていた。
ソウタは、必死に腰にしがみ付いている、レンの手を軽く叩いた。
「~~っ!?、はっ……いぃ――っ?」
テンの走るスピードは、乗り慣れない者にとって、我々の語意で表せば絶叫マシーン並みの速度の様に感じられ、ソレに、固定ベルトも無い座席に座っている様な状況のレンは、ソウタの腰にしがみ付いているのが、"やっと"なのである。
「コッチを見なくてもっ!、返事もしなくても良いっ!、聞いているだけでっ!」
ソウタは、レンを気遣ってそう言うと――
「追っ手の気配が無いから、ある程度は撒けたと思う――だから、もう少ししたら、休ませてあげられるからっ!
もうちょっとだけ、耐えてくれなっ?」
レンは、返事の替わりに、ギュっとソウタの腹を抓る。
「――よしっ!、じゃあ……まだ飛ばすぜ!、ハッ!」
ソウタが、鞘をムチ代わりに使ってテンの尻を叩くと、テンはさらにスピードを上げた。
それから更に、なんと6時間ほどの間もテンは走り続けた!
ツクモの馬たちは、その広い大陸の貴重な人々の脚として対応するため、長距離向きの血統が吟味され、訓練にもそのための工夫がされている――だから、それぐらいの長時間、長距離の疾走は、彼らにとっては当たり前なのだ。
その末に辿り着いたのは――並々とした流量を誇る、大河の岸であった。
そこで、テンに脚を止めさせた、ソウタは――
「ここで休もう――で、今晩の野営も、ココで張ろうか」
――そう言って、ゆっくりと下馬した。
レンも、それに追従しようと、そぉ~と草原に足を降ろした。
「あのぉ~……ここは?」
レンは辺りをおどおどと見渡して、ソウタにそう尋ねた。
「ああ、この川は――ミモト川だよ」
ソウタは、レンに顔を向ける事無く、テンの馬具を外しながらサラッと答えた。
「――えっ?!」
対するレンは、至極驚いて、口をあんぐりと開け放った。
この川は、大陸の中心帯の東側を横断している、ツクモ最長の川、ミモト川である。
ミモト川の源流は、天船が眠っている場所とされている萬神道の聖地、クリン高原にあるセイジ湖から流れており、故に"聖地を源泉とする神聖な川"――神川とまで呼ばれる河川なのだ。
今、レンが観ている光景というのは、一般的にこのツクモの地に生まれた者なら、一度は観ておくべきだとされている、神聖な光景なのである。
「こっ!、これが"神川様"っ!」
ツクモの人々――特に、敬虔な萬神道信者は、ミモト川の事をこう呼ぶのである。
「――ってぇ?!、確か……村から、神川様の畔に至るには、馬に乗っても3日は掛かるって、行商のおじさんが――」
「うん、そうだな。
でも、今は、かなり早駆けさせたし――テンは、並みの馬よりも、かなり速いからなぁ」
驚くレンをまったく気にせず、ソウタがテンの馬具を外してやると、テンは嬉しそうに川に向って歩き出し、ガブガブと乱暴に、その"神川様"の水を飲み始めた。
「キミも、川の水でも飲んで、顔も洗ってスッキリすると良い――転んだからか、顔、泥だらけだぜ?」
ソウタに指摘され、ようやく自分の今の見た目に気付いたレンは、泥を被っていても解かるほどに真っ赤に赤面して、慌てて川辺へと走った。
レンは、川の流れに向けて一礼し、深く合掌してから、その流水を手酌で採って、バシャバシャと顔を洗い始めた。
(――さて、俺もあの娘を驚かせない顔にしなきゃな)
ソウタが、レンの目線から顔を背ける様に徹していたのは、村での戦闘で浴びた返り血で、恐ろしい形相になっているのは、明白だと思えたからだった。
お互い、顔を洗い終え、荷物を降ろした場所に集まると、ソウタは、改めて見るレンの姿に……一瞬、言葉を失った。
川の水で清められ、夜闇の下ではなく、日の下で観るレンの容姿は――目鼻立ちはハッキリとしていて、田舎の村娘には似合わない、気品も感じる整った顔立ちである。
だが、川の水で荒く洗われ、まだ濡れている無造作に垂れた長い髪から、その育ちの素朴さも感じさせ、漂う風体からも、若干の幼さを覗かせる――"美少女"と呼ぶのが、一番適当であろうと思える女性だった。
彼女の事を、最初"女"と呼称したのは、語り手の失策であったと恥じよう。
その原因は――あの侍たちが"上玉"と評した様に、その身体のラインに尽きるだろう。
背格好も、身体の造りも、総体的には小振りであるが、全体のシルエットは妙な艶かしさも秘めていて、そういうギャップが、色香と化している様にも感じる。
「……?、ソウタさん?」
レンは、突然黙り込んだソウタの顔を、不思議そうに覗き込んだ。
ソウタは、ハッ!となって我に返り、照れ臭そうに――
「――いっ!、いや、なんでもない……濡れたままだとマズイから、すぐ火を点けるからさ」
――平然を装って、界気を使って火を起こす準備を始めた。
「――荷物の中に、星石があるから、出してくれるか?
それと、薪になりそうなモノも、拾ってくれると助かる」
「あっ、はい……」
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