流れ者のソウタ

緋野 真人

文字の大きさ
4 / 207
発端

一夜明けて

しおりを挟む
日の出と同時に、深淵の様な夜闇が払われ、夜中の惨劇の度合いが明らかになってきたココ――ヤマカキ村。

そこには、雄々しい甲冑を纏った人馬が立っていた。


「これは――どうした事か?」

馬上に跨るその人は、見える顔からは男である事と、落ち着きを感じさせる顔立ちで、歳は30は悠に超えているという点も読み取れる。

一つ――違和感を覚える面を答えるのなら、今のセリフを聞いても解る様に、このヤマカキ村の惨状を見ても、まったく動じていないコトであろう。


更に、男が纏う甲冑も、実に不自然なシロモノである。


その甲冑は、全面全体が眩い黄金で出来ており、それは朝日に照らされ、眩しい程の輝きを放っていた。

甲冑の胸前には、大きな"鳳凰"の紋が彫られていて、スヨウの武人であることは一目両全だが、その恰好から察するに、相当な立場の人間である事も一目で解かる。


御家方おやかた様――生きている者は、一人とて居りませぬ」

その武人の元に、周りを検分してきた部下らしい者が、側で畏まって報告した。


『御家方』というのは、ツクモの世界では最上級に数えられる敬称で、その呼び名の意味は、ツクモでは数少ない、"世襲が許された身分"の者――即ち、各国の国守のみを指す敬称である。

つまり、胸前の鳳凰の紋で解かる様に、御家方と呼ばれたこの男は――スヨウの国守、スヨウノ・ノブタツ、その人である。


「――それは承知だ、何せ、そう"命じた"のだからな。

どうしたのかと聞いたのは、死んでいるのが"村人のみ"ではなく、焼き払えと命じたはずなのに、火も上がっていない事だ」

ノブタツは臆する事無く、昨晩の襲撃が自分の指示に因るモノであるコトを、さらりと言ってのけたのである。


「"筋書"では――われがこうして、朝駆けに出掛けた所に、燻るニオイを嗅いで、この惨状に気付く手筈だったはず――それが、襲撃を命じた国境警備隊までも、一人残らず死んでいるというのは……どういう状況なのかと、聞いておるのだ」

「――逆に、警備隊が襲撃された、そう考えるのが、最も妥当でしょう。

村人を始末した後から、焼き払う前の間に……」

部下らしい男は、冷静にこの状況を分析し、満点とも言える推測を述べた。

「逆に襲撃されただと?!、それは、何者の仕業だと言うのだ?

盗賊の類と鉢合ったと仮定しても……我が軍の警備隊が、その類を相手に、皆殺しに合う程に遅れを取るとは、到底思えぬが……」

ノブタツは、その推測に納得出来ず、怪訝な表情を見せた。


「――もう一つ、とても、信じ難き事柄があります。

死んだ兵の傷口が――"同じ刀傷"なので、相手は……"たった一人"だったと推測出来ます」

部下らしい男はこめかみに冷汗を垂らし、近くに転がっていた死体の傷口を指差した。

「ふっ……バカなっ!

襲撃を命じた隊は、三十人ほども人数が居たはずなのだぞ?、それを一人でなどと――先の大戦に聞く、一人で二千のハクキ軍の一隊を、一人で壊滅させたという、刀聖の逸話でもあるまいし」

ノブタツは、呆れた顔で、部下らしい男の推測を一蹴した。

「――まあ良い、詳細の調べは、"暗衆あんしゅう"に任せ、我らは予定どおりにコトを運ぼう――"筋書"を少々替えてな」


――"暗衆"とは、諜報活動や秘密工作、暗殺などを担当する、軍から独立した国守直属の特殊部隊の総称である。

解り易く言えば……スパイや忍者の類を想像して貰うのが適当であろう。


ノブタツは、馬に踵を返させ、腹を蹴って駆け足の合図を送り、村から街道に至る道へと向かわせた。


それに追従しようと、部下らしい男も側に待機させていた馬に跨ろうとした時、彼の目に、側に転がっていた、"あの隊長"――中年の男の、うつ伏せとなった死体が目に留まった。

部下らしい男は、それが妙に気になり、徐に中年の男の死体を仰向けに裏返す。

(――っ?!)

中年の男の死体には、先程調べた兵の傷口の刀傷と違い、首から下の上半身が、"特殊なモノ"でえぐられた様な、奇妙な傷口があった。


「これは――界気……か?。

しかも、刀傷とは似て否なる、なんとも面妖な傷口――やはり、一人ではなかった、というコトなのか?」


部下らしい男は片手で頭を抱え、悩みながら鞍に跨った。

この、部下らしい男の誤認が、ソウタとレンが追っ手に会わなくなるキッカケとなり、それがこの先に起きる未曾有の大戦の行く末をも、大きく揺さぶる要因となるであった。






(――陽が、昇り始めたな)

場面は替わり、追っ手からの逃亡を謀ったソウタとレンは、テンを一晩中全力で走らせ、早々に森の中を抜け、今度は、一面に広がった草原の中を駆けていた。


ソウタは、必死に腰にしがみ付いている、レンの手を軽く叩いた。

「~~っ!?、はっ……いぃ――っ?」

テンの走るスピードは、乗り慣れない者にとって、我々の語意で表せば絶叫マシーン並みの速度の様に感じられ、ソレに、固定ベルトも無い座席に座っている様な状況のレンは、ソウタの腰にしがみ付いているのが、"やっと"なのである。


「コッチを見なくてもっ!、返事もしなくても良いっ!、聞いているだけでっ!」

ソウタは、レンを気遣ってそう言うと――

「追っ手の気配が無いから、ある程度は撒けたと思う――だから、もう少ししたら、休ませてあげられるからっ!

もうちょっとだけ、耐えてくれなっ?」

レンは、返事の替わりに、ギュっとソウタの腹を抓る。

「――よしっ!、じゃあ……まだ飛ばすぜ!、ハッ!」

ソウタが、鞘をムチ代わりに使ってテンの尻を叩くと、テンはさらにスピードを上げた。


それから更に、なんと6時間ほどの間もテンは走り続けた!


ツクモの馬たちは、その広い大陸の貴重な人々の脚として対応するため、長距離向きの血統が吟味され、訓練にもそのための工夫がされている――だから、それぐらいの長時間、長距離の疾走は、彼らにとっては当たり前なのだ。

その末に辿り着いたのは――並々とした流量を誇る、大河の岸であった。


そこで、テンに脚を止めさせた、ソウタは――

「ここで休もう――で、今晩の野営も、ココで張ろうか」

――そう言って、ゆっくりと下馬した。


レンも、それに追従しようと、そぉ~と草原に足を降ろした。

「あのぉ~……ここは?」

レンは辺りをおどおどと見渡して、ソウタにそう尋ねた。

「ああ、この川は――ミモト川だよ」

ソウタは、レンに顔を向ける事無く、テンの馬具を外しながらサラッと答えた。

「――えっ?!」

対するレンは、至極驚いて、口をあんぐりと開け放った。


この川は、大陸の中心帯の東側を横断している、ツクモ最長の川、ミモト川である。


ミモト川の源流は、天船が眠っている場所とされている萬神道の聖地、クリン高原にあるセイジ湖から流れており、故に"聖地を源泉とする神聖な川"――神川しんせんとまで呼ばれる河川なのだ。

今、レンが観ている光景というのは、一般的にこのツクモの地に生まれた者なら、一度は観ておくべきだとされている、神聖な光景なのである。


「こっ!、これが"神川様"っ!」

ツクモの人々――特に、敬虔な萬神道信者は、ミモト川の事をこう呼ぶのである。


「――ってぇ?!、確か……村から、神川様の畔に至るには、馬に乗っても3日は掛かるって、行商のおじさんが――」

「うん、そうだな。

でも、今は、かなり早駆けさせたし――テンは、並みの馬よりも、かなり速いからなぁ」

驚くレンをまったく気にせず、ソウタがテンの馬具を外してやると、テンは嬉しそうに川に向って歩き出し、ガブガブと乱暴に、その"神川様"の水を飲み始めた。


「キミも、川の水でも飲んで、顔も洗ってスッキリすると良い――転んだからか、顔、泥だらけだぜ?」

ソウタに指摘され、ようやく自分の今の見た目に気付いたレンは、泥を被っていても解かるほどに真っ赤に赤面して、慌てて川辺へと走った。

レンは、川の流れに向けて一礼し、深く合掌してから、その流水を手酌で採って、バシャバシャと顔を洗い始めた。


(――さて、俺もあのを驚かせない顔にしなきゃな)

ソウタが、レンの目線から顔を背ける様に徹していたのは、村での戦闘で浴びた返り血で、恐ろしい形相になっているのは、明白だと思えたからだった。


お互い、顔を洗い終え、荷物を降ろした場所に集まると、ソウタは、改めて見るレンの姿に……一瞬、言葉を失った。


川の水で清められ、夜闇の下ではなく、日の下で観るレンの容姿は――目鼻立ちはハッキリとしていて、田舎の村娘には似合わない、気品も感じる整った顔立ちである。

だが、川の水で荒く洗われ、まだ濡れている無造作に垂れた長い髪から、その育ちの素朴さも感じさせ、漂う風体からも、若干の幼さを覗かせる――"美少女"と呼ぶのが、一番適当であろうと思える女性だった。


彼女の事を、最初"女"と呼称したのは、語り手の失策であったと恥じよう。


その原因は――あの侍たちが"上玉"と評した様に、その身体のラインに尽きるだろう。

背格好も、身体の造りも、総体的には小振りであるが、全体のシルエットは妙な艶かしさも秘めていて、そういうギャップが、色香と化している様にも感じる。


「……?、ソウタさん?」

レンは、突然黙り込んだソウタの顔を、不思議そうに覗き込んだ。


ソウタは、ハッ!となって我に返り、照れ臭そうに――

「――いっ!、いや、なんでもない……濡れたままだとマズイから、すぐ火を点けるからさ」

――平然を装って、界気を使って火を起こす準備を始めた。


「――荷物の中に、星石があるから、出してくれるか?

それと、薪になりそうなモノも、拾ってくれると助かる」

「あっ、はい……」

レンに用を言い付けて、側から離したソウタは、彼女がしがみ付いていた、自分の腰の部分を揉んで、ちょっと赤面していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

処理中です...