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刀聖、斯く語りき
尋問
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「♪~、えっへへ♪、大金貨三十枚かぁ~!、ナニに使おうっかなぁ♪」
論功勲章の授与を終え、主殿から出てきたタマは、ニンマリとだらしない表情をして、勲金等の書状をまじまじと見詰めた。
「タマ……換金する気、満々だな」
その素振りを横目に見て、ギンは呆れる様な口調でそう言った。
「そりゃあ換えるでしょぉ~!、アタシは修行の旅の途中だから、路銀はいくら有っても足りないくらいっ!
それに、アタシは傭兵の集落である、コケツ村の娘!、戦いの手柄を挙げたら、それをお金で貰おうとするのはトーゼンだよぉ!」
タマは偉そうに、発展途上(※自称)の胸を突き出し、満面の笑みで語る。
「ギンは換えないの?、これだけあれば、故郷にい~っぱい!、食料を買って帰れるじゃない」
「俺が、買出しのためにセイクから出て来たのは、野鳥が越冬のために森に来る、冬までの食料を得るため――元々、商隊護衛の給金だけで、悠に足りる額だ。
それが、お前たちに成り行きで付き合っていたら、季節も既に秋に差し掛かっているし、護衛と義兵の給金を合わせただけでも、かなりのお釣りが残るぐらい、資金が貯まったんだ。
それこそ向こう三年、里で暮らすには、現金が要らないくらいだからな……換える必要が無い」
タマの問いに、ギンは得々と自分の懐事情を吐露する。
「あ~……欲が無いねぇ、ギンは。
しばらく、働かなくても良いぐらいだろうにさ」
タマは、お返しとばかりに、呆れた様をギンに向けて見せる。
「不労は、心身の腐りを招く……たとえ、必要が無くとも、それは一種の"獣"として、生きる意志を捨て去るのと同じだ」
ギンは突然、哲学染みたコトを言って、タマの口元に人差し指を立てる。
「うっ……なんか、重~いコトを言うなぁ。
どっかの長老と話しているみたいだよぉ~!、ギンって、ホント二十歳ぃ~?」
「――ギン殿、タマさん」
タマが、ギンのセリフと年齢の不釣合いを問うている所に、カツトシ直下の部隊に所属する侍――マタザが声を掛けてきた。
「ん~?、なぁに?」
タマが話を止めて、マタザに声掛けの意図を尋ねる。
「はっ!、大将様が、内々のご相談がお二人にあるとの事――今晩の戦勝の宴の前に、お二人と直接お会いしたいので、大将様の私室にて、しばらく待って居て下さりたいとの事です」
マタザは、直立不動に身を正し、敬礼しながら二人に用向きを伝える。
「ふぇ?、なんだろ?」
「しばらくとは、ソウタが、一緒に先程の部屋から出て来ていない事と関係があるのか?」
タマは、ロクに話した事が無い、カツトシからの指名を不思議がり、ギンはマタザの言葉から――今、主殿で行われようとしている、事柄を勘繰る。
「はい、刀聖様が何故、身分を隠して参戦されたのかを、皇軍列挙の最中、御自ら尋ねたいと、皇様の思し召しがありまして……主殿では、今、固唾を呑んで、刀聖様の御言葉を聞いている所にございます」
マタザは、深く目を閉じ、神妙な面持ちでそう答えた。
――時は、ほんの少しだけ戻って、有志隊の受勲者、つまり義兵が全員、主殿の廊下へと出た時である。
正規兵の受勲者に紛れる様に、一人だけ列に残った義兵が居た――それは、ソウタである。
「――さて、労いは終わりました。
ここからは、皆が抱いているであろう事に、今生の皇が応じ、明かしたく思います」
サトコは、険しい表情で皆を見据え――
「ソウタ――いえ、此度の戦場にて、当世の刀聖と名乗り、光刃を現眼させし者よ。
皇の御前へと、出でなさい」
――そう、強めの口調で言い放った。
「……はい」
ソウタは、それに応じてゆっくりと立ち上がり、一番上座に近い場所の真ん中へと出でて、サトコの目の前に座った。
その、堂々と立ち振る舞う姿を観て、サトコは――
「――皇の御前に、へつらわずに座に着くという事は、"自らは同列にある"との主張……」
――と、半ば睨み付ける様な容貌をして呟く。
ツクモ世界において、皇と同列に置かれる存在とは、世界の『文』を司る存在たる"大巫女"と、世界の『武』を司る存在たる"刀聖"の二人だけ――つまり、三大国の国守を凌ぐVIPである事を示している。
「――では、その証として、我が御前での、光刃現眼を所望します」
サトコは、悲しそうな表情をして、ソウタの左腰――鞘を提げた部分を指差す。
「……はい」
ソウタは、これにもゆっくりと応じて立ち上がり、柄に手を掛け、鞘に入った実刀の刀身を外し、柄から、ぬうっと光の刀を現して見せた。
「おぉぉぉぉぉっ……!!!」
ホウリ平原の戦いに参戦していない、ロクスケを始めとした文官たちから、大きなどよめきが起こる。
(――ああ、本当に、あなたが……)
サトコはうな垂れ、辛そうに目を閉じる。
「――解りました、納めてください」
「はい」
サトコの言葉に、ソウタが柄を握る握力を緩めると、風船が萎む様に、光の刀身は跡形も無く消え去った。
ソウタは、柄を鞘に仕舞った実刀に取り付け、鞘を腰から外して横に置き、再度サトコの目の前に座る。
「では、当世刀聖――あなたが、この戦に見出した"世の乱れ"とは何だったのか?、何故その末、我らに味方をしたのか――そして、何故その際、自らが刀聖である事を告げず……いえ、何故我らを"偽った"のかを、伺いたく思います!」
サトコは、後半は明らかに強い口調で、これまでにソウタが取って来た、動向の理由を問うた。
「私が見出した世の乱れとは、以前も御前で申し上げたとおり、私自身が出くわした、ヤマカキ村での事変が事にございます。
自国の民を自ら虐殺し、貴国にその濡れ衣を着せてまで開いた、此度の戦端に――大義は無いと断じた故に、それを、"人が邪へと変ず兆し"と捉えました」
ソウタはそこまでを言って、クッと顔を上げてサトコに瞳を真っ直ぐに見詰め――
「――何より、零れ落ちる貴女の決意の涙に応えるにはっ!、貴国――いえ、"貴女を援ける"事だと思うた次第にございます!」
――そう、鋭い眼差しを見せて言い切った!
「おぉぉぉぉぉっ……!!!!!」
その場でソウタの言葉を聞く、全てと言っても良い者たちが、彼の参戦理由に思わず唸る――特に、皇の護衛を任とする、第一軍団の女性武士たちなどでは、ほとんどが心を鷲掴みにされた様な思いで、彼の眼差しを見詰め頬を、頬を赤らめながら眺めていた……
(――恐ろしい!、恐ろしい技だ……これが、これが!、刀聖は美形だという、逸話の由縁っ!
惚れてしまうっ!、あんな事を真っ直ぐに言われてはっ!!)
カオリも、頬を赤らめ、ソウタの眼差しから目を移す事が出来ずにいた……
そして、一番にその"妙技"を喰らったのは――皆とよろしく、頬を赤らめ、賦抜けた表情で、ソウタの顔を見ているサトコだった。
『貴女を援ける!』
……サトコの心中には、そのソウタの言葉が5回ほど木霊し、彼のその鋭く決意に満ちた眼差しに、彼女は目線も心も奪われていた…
(これは――少々、マズイ状況ね……)
ソウタの"妙技"を上手く受け流した、稀有な存在であるキヨネは、サトコの腑抜けた表情を観て――
「――うっ!、うぅっん!」
――と、一つ、咳払いを響かせた。
その咳払いを聞いて、サトコは我に返り、首を横に振るって――
「――わっ、解りましたぁ、その思い……大変、嬉しく思いますぅ。
でっ、ですが、もう一つの疑問――何故、自らが刀聖である事を隠したのです?、あなたが当初から、身を明かしていれば――この戦自体を避ける可能性も、拡がったかもしれないというのに……」
「――それに関しては、私の不徳にございます」
サトコの改めての問いかけに、ソウタは申し訳なさそうにうな垂れた。
「――不徳、と申すという事は、個人の事情だと?」
サトコが顔をしかめて尋ねると、ソウタは小さく頷く。
「私は、光の刀を"所持は"しておりましたが、故あって、光刃を抜く事は極力控えていたのです」
「えっ?、先世からの継承を、正しく経ているのでしょう?
光の刀は、古の技術の遺産である、"意志持つ道具"である"神具――正等な継承者にしか、その刀身を晒す事は出来ぬはずです。
故に、光刃現眼せしめた事が、正しく継いだ何よりの証拠……」
サトコは、口元に手をあて、怪訝な表情を浮かべる。
"神具"とは、降臨伝承にもある、アマノツバサノオオカミを始めとする、"かつての世界"から降り立った、ツクモの民たちの先祖とされている人々が使っていたという、今では考えられない様な不思議な力を秘めた道具の事を指す。
中には、少々信じ難いが、使用者を選別する様な逸品もあり、光の刀はそういう類のモノなのだ。
「確かに、継承は正しく行われました。
光刃の柄も、それを認めてくれております――ですが、私はこの継承を承服出来ず……いえ、嫌悪すらしております故、その使用を私的に封じておったのです」
ソウタは、彼は傍らに置いた、鞘を睨み付けながらそう言った。
論功勲章の授与を終え、主殿から出てきたタマは、ニンマリとだらしない表情をして、勲金等の書状をまじまじと見詰めた。
「タマ……換金する気、満々だな」
その素振りを横目に見て、ギンは呆れる様な口調でそう言った。
「そりゃあ換えるでしょぉ~!、アタシは修行の旅の途中だから、路銀はいくら有っても足りないくらいっ!
それに、アタシは傭兵の集落である、コケツ村の娘!、戦いの手柄を挙げたら、それをお金で貰おうとするのはトーゼンだよぉ!」
タマは偉そうに、発展途上(※自称)の胸を突き出し、満面の笑みで語る。
「ギンは換えないの?、これだけあれば、故郷にい~っぱい!、食料を買って帰れるじゃない」
「俺が、買出しのためにセイクから出て来たのは、野鳥が越冬のために森に来る、冬までの食料を得るため――元々、商隊護衛の給金だけで、悠に足りる額だ。
それが、お前たちに成り行きで付き合っていたら、季節も既に秋に差し掛かっているし、護衛と義兵の給金を合わせただけでも、かなりのお釣りが残るぐらい、資金が貯まったんだ。
それこそ向こう三年、里で暮らすには、現金が要らないくらいだからな……換える必要が無い」
タマの問いに、ギンは得々と自分の懐事情を吐露する。
「あ~……欲が無いねぇ、ギンは。
しばらく、働かなくても良いぐらいだろうにさ」
タマは、お返しとばかりに、呆れた様をギンに向けて見せる。
「不労は、心身の腐りを招く……たとえ、必要が無くとも、それは一種の"獣"として、生きる意志を捨て去るのと同じだ」
ギンは突然、哲学染みたコトを言って、タマの口元に人差し指を立てる。
「うっ……なんか、重~いコトを言うなぁ。
どっかの長老と話しているみたいだよぉ~!、ギンって、ホント二十歳ぃ~?」
「――ギン殿、タマさん」
タマが、ギンのセリフと年齢の不釣合いを問うている所に、カツトシ直下の部隊に所属する侍――マタザが声を掛けてきた。
「ん~?、なぁに?」
タマが話を止めて、マタザに声掛けの意図を尋ねる。
「はっ!、大将様が、内々のご相談がお二人にあるとの事――今晩の戦勝の宴の前に、お二人と直接お会いしたいので、大将様の私室にて、しばらく待って居て下さりたいとの事です」
マタザは、直立不動に身を正し、敬礼しながら二人に用向きを伝える。
「ふぇ?、なんだろ?」
「しばらくとは、ソウタが、一緒に先程の部屋から出て来ていない事と関係があるのか?」
タマは、ロクに話した事が無い、カツトシからの指名を不思議がり、ギンはマタザの言葉から――今、主殿で行われようとしている、事柄を勘繰る。
「はい、刀聖様が何故、身分を隠して参戦されたのかを、皇軍列挙の最中、御自ら尋ねたいと、皇様の思し召しがありまして……主殿では、今、固唾を呑んで、刀聖様の御言葉を聞いている所にございます」
マタザは、深く目を閉じ、神妙な面持ちでそう答えた。
――時は、ほんの少しだけ戻って、有志隊の受勲者、つまり義兵が全員、主殿の廊下へと出た時である。
正規兵の受勲者に紛れる様に、一人だけ列に残った義兵が居た――それは、ソウタである。
「――さて、労いは終わりました。
ここからは、皆が抱いているであろう事に、今生の皇が応じ、明かしたく思います」
サトコは、険しい表情で皆を見据え――
「ソウタ――いえ、此度の戦場にて、当世の刀聖と名乗り、光刃を現眼させし者よ。
皇の御前へと、出でなさい」
――そう、強めの口調で言い放った。
「……はい」
ソウタは、それに応じてゆっくりと立ち上がり、一番上座に近い場所の真ん中へと出でて、サトコの目の前に座った。
その、堂々と立ち振る舞う姿を観て、サトコは――
「――皇の御前に、へつらわずに座に着くという事は、"自らは同列にある"との主張……」
――と、半ば睨み付ける様な容貌をして呟く。
ツクモ世界において、皇と同列に置かれる存在とは、世界の『文』を司る存在たる"大巫女"と、世界の『武』を司る存在たる"刀聖"の二人だけ――つまり、三大国の国守を凌ぐVIPである事を示している。
「――では、その証として、我が御前での、光刃現眼を所望します」
サトコは、悲しそうな表情をして、ソウタの左腰――鞘を提げた部分を指差す。
「……はい」
ソウタは、これにもゆっくりと応じて立ち上がり、柄に手を掛け、鞘に入った実刀の刀身を外し、柄から、ぬうっと光の刀を現して見せた。
「おぉぉぉぉぉっ……!!!」
ホウリ平原の戦いに参戦していない、ロクスケを始めとした文官たちから、大きなどよめきが起こる。
(――ああ、本当に、あなたが……)
サトコはうな垂れ、辛そうに目を閉じる。
「――解りました、納めてください」
「はい」
サトコの言葉に、ソウタが柄を握る握力を緩めると、風船が萎む様に、光の刀身は跡形も無く消え去った。
ソウタは、柄を鞘に仕舞った実刀に取り付け、鞘を腰から外して横に置き、再度サトコの目の前に座る。
「では、当世刀聖――あなたが、この戦に見出した"世の乱れ"とは何だったのか?、何故その末、我らに味方をしたのか――そして、何故その際、自らが刀聖である事を告げず……いえ、何故我らを"偽った"のかを、伺いたく思います!」
サトコは、後半は明らかに強い口調で、これまでにソウタが取って来た、動向の理由を問うた。
「私が見出した世の乱れとは、以前も御前で申し上げたとおり、私自身が出くわした、ヤマカキ村での事変が事にございます。
自国の民を自ら虐殺し、貴国にその濡れ衣を着せてまで開いた、此度の戦端に――大義は無いと断じた故に、それを、"人が邪へと変ず兆し"と捉えました」
ソウタはそこまでを言って、クッと顔を上げてサトコに瞳を真っ直ぐに見詰め――
「――何より、零れ落ちる貴女の決意の涙に応えるにはっ!、貴国――いえ、"貴女を援ける"事だと思うた次第にございます!」
――そう、鋭い眼差しを見せて言い切った!
「おぉぉぉぉぉっ……!!!!!」
その場でソウタの言葉を聞く、全てと言っても良い者たちが、彼の参戦理由に思わず唸る――特に、皇の護衛を任とする、第一軍団の女性武士たちなどでは、ほとんどが心を鷲掴みにされた様な思いで、彼の眼差しを見詰め頬を、頬を赤らめながら眺めていた……
(――恐ろしい!、恐ろしい技だ……これが、これが!、刀聖は美形だという、逸話の由縁っ!
惚れてしまうっ!、あんな事を真っ直ぐに言われてはっ!!)
カオリも、頬を赤らめ、ソウタの眼差しから目を移す事が出来ずにいた……
そして、一番にその"妙技"を喰らったのは――皆とよろしく、頬を赤らめ、賦抜けた表情で、ソウタの顔を見ているサトコだった。
『貴女を援ける!』
……サトコの心中には、そのソウタの言葉が5回ほど木霊し、彼のその鋭く決意に満ちた眼差しに、彼女は目線も心も奪われていた…
(これは――少々、マズイ状況ね……)
ソウタの"妙技"を上手く受け流した、稀有な存在であるキヨネは、サトコの腑抜けた表情を観て――
「――うっ!、うぅっん!」
――と、一つ、咳払いを響かせた。
その咳払いを聞いて、サトコは我に返り、首を横に振るって――
「――わっ、解りましたぁ、その思い……大変、嬉しく思いますぅ。
でっ、ですが、もう一つの疑問――何故、自らが刀聖である事を隠したのです?、あなたが当初から、身を明かしていれば――この戦自体を避ける可能性も、拡がったかもしれないというのに……」
「――それに関しては、私の不徳にございます」
サトコの改めての問いかけに、ソウタは申し訳なさそうにうな垂れた。
「――不徳、と申すという事は、個人の事情だと?」
サトコが顔をしかめて尋ねると、ソウタは小さく頷く。
「私は、光の刀を"所持は"しておりましたが、故あって、光刃を抜く事は極力控えていたのです」
「えっ?、先世からの継承を、正しく経ているのでしょう?
光の刀は、古の技術の遺産である、"意志持つ道具"である"神具――正等な継承者にしか、その刀身を晒す事は出来ぬはずです。
故に、光刃現眼せしめた事が、正しく継いだ何よりの証拠……」
サトコは、口元に手をあて、怪訝な表情を浮かべる。
"神具"とは、降臨伝承にもある、アマノツバサノオオカミを始めとする、"かつての世界"から降り立った、ツクモの民たちの先祖とされている人々が使っていたという、今では考えられない様な不思議な力を秘めた道具の事を指す。
中には、少々信じ難いが、使用者を選別する様な逸品もあり、光の刀はそういう類のモノなのだ。
「確かに、継承は正しく行われました。
光刃の柄も、それを認めてくれております――ですが、私はこの継承を承服出来ず……いえ、嫌悪すらしております故、その使用を私的に封じておったのです」
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