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それぞれの大義
無双国守
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「――ふん、気付いておったか……上出来じゃ」
編み笠男も、口元を楽しげに緩ませ、ソウタに値踏みをする様な事を言う。
「宿場――いんや、旅籠の内から尾行してただろ?、丁稚に掏りまでさせてさぁ?」
ギリギリと鍔迫り合いをしながら、ソウタは眼光を鋭くさせて、柄に力を込める。
編み笠男の刀を弾いたソウタは、一旦、距離を取ろうと後ろに下がるが――
「おや?、我と刃を交えるのは――イヤ、かのぉっ!?」
編み笠男は、大きくは体勢を崩しておらず、まさに返す刀の様相で、下段からソウタへ斬撃を見舞う!
(――っ!?、体幹強ぇっ!、おまけに、速ぇぞぉ?!)
ソウタは、編み笠男の瞬錬な動きに驚き、体を退きながら目を見張る。
「ちぃっ!」
編み笠男の斬撃を再び受け止めたソウタは、距離を取るどころか、更に詰め寄られた事に苛立つ。
編み笠男は、一切攻撃を緩めず、次から次へとソウタに斬撃を打ち込む!
(ほう――やるな。
これだけ崩しにかかっても、楽に捌き続けるとは)
(なんだコイツ?、これだけの連撃しながら、息一つ乱してねぇぞぉ?!)
編み笠男は、感心した様子でニヤけ、ソウタは、相手の力量に困惑して顔を歪める。
そんな状況の最中、先に刃を引いたの編み笠男――ソウタの刀身から、二つ半程度離れた位置にまで下がる。
距離を取った編み笠男は、低い姿勢で構え――刀を、素早く鞘に収めた。
(……退いた?!、いや――"居合い"か!)
編み笠男の意図に気付いたソウタも、ジリジリと自分も低い姿勢を取り、編み笠男の居合い抜きに備える。
(コイツぁ……出し惜しみは、出来ねぇかもな)
これまでの編み笠男の動きや、彼の醸す雰囲気に、ソウタは光の刀を抜く覚悟を決めて、実刀の刀身を外し、光刃を晒した!
「ふむ、やっと、抜いてくれたか」
光の刀を見ても、編み笠男はまったく動じず――逆に、そんな戯れ言を呟き、嬉しそうに口元を緩める。
「――てぇこたぁ、俺が光刃を持ってると、見越して襲って来たのかい?、随分と酔狂なお侍さんだ」
ソウタは、編み笠男の反応と、聴こえた呟きに呆れ、苦笑を浮べてこめかみを震わせる。
――編み笠男は、笑顔のまま、低い姿勢で一気に駆け出す!
対したソウタは動かず、近付いて来る編み笠男の手元に意識を集中させ、足下には地面に根を張った様に力を込めさせる。
猛然と鞘の中を刃に奔らせ、編み笠男の刀が抜かれ――ソウタは光の刀を、刃ごと編み笠男を斬り伏せる勢いで振り被る!
光の刀は――編み笠男の刀を圧し折り、光刃はそのまま編み笠男の首筋へと向かう!
「――くぅ!」
――が!、まさに紙一重のタイミングで、編み笠男は上半身を仰け反らせて光刃を避けた!
「くっ……はぁ!」
二人は、密着に近い体で交差し、そのまま互いに動きを止めた。
編み笠男は、切っ先を折られた刀をダラリと下げ、ソウタは、振り抜いた光刃を天に向けたまま静止する――両者共に、渾身の一撃を放った故であろう。
「――えっ!?」
振り抜かれた光の刃を受け、蒸発された形で編み笠を失った男の素顔を見て――ソウタは、驚愕の声を挙げ、慌てて交差状態を解き、後ろへと下がる。
「やれやれ――結構な業物に、相当な界気を込めたつもりだったのだがな。
あっさりと折られるとは……流石は、当世の刀聖と光の太刀か」
そう呟く編み笠――いや、"謎の男"は、見事に折られた愛刀の惨状を、まじまじと見詰めた。
「なぁるほど、アンタ――いや、貴殿なら、刀聖とここまで殺り合えても納得だ」
ソウタは苦笑し、眼前の謎の男に敬意を表して、光の刀を下げる。
そう――この謎の男は、ツクモの者なら誰もが知っていて、誰もが認める武勇を誇る男だった。
「十五年前、三大会前の大武会――当時、スヨウの"次期国守"の身に有りながら、素性を隠してそれに出場――駿足の居合いを武器に、見事優勝を掻っ攫った――」
ソウタは、冷や汗を頬に垂らしながら、そう呟いて、ゴクリと生唾を呑み――
「――『無双国守』、スヨウノ・ノブタツ!」
――眼前に立つ、先日までの敵国の君主と対峙した。
「ふっ……そなたの様な若人でも、我の若気の到りを知っておるのか……恥ずかしいのう」
ノブタツは破顔し、折られた刀を鞘に仕舞う。
「――御家方様っ!」
行商や、巡礼者に扮した、近衛や暗衆と思しき一団が、ソウタと対峙する君主の身を案じ、木立の辺りに慌てて参じた。
「これこれ――我一人で良いと、言うたであろう?」
わらわらと集まってきた、近衛たちの慌て様に、ノブタツは苦笑いを見せる。
「それに――光の太刀の姿も、観ていたのであろう?
つまり、うぬらが束になっても、まったく歯が立たぬのは必至の相手――大人しく、退いておるのが賢明であろうて?」
「かっ!、勝てぬ相手とて、丸越しの君主を放って置いては、ツクモ武士の名折れにございますっ!」
呆れ気味の君主の言葉に、近衛の一人は、恐怖からか声を震わせて応じる。
「どうして――スヨウ国守が、街道に居るのさ?」」
ソウタは、光の刀を敵意を放つ護衛たちの方へ向けながら、意外過ぎる眼前のVIPに訳を質す。
「なぁに、此度の戦に関して、大巫女様への弁明の帰りに――龍の紋の荷を抱えた、コウオウの使者らしき者が居ると聞き、その使者に立ったという刀聖に、ちと挨拶をと思うてな」
ノブタツは腕組みをして、一言ずつ頷きながら、意図を答える。
「……」
ソウタは、飄々としたノブタツの返答に、苛立ちを模様して、柄の握りを強める。
その様子を見やり、ノブタツは――
「――どうじゃ刀聖?、とりあえず……光の太刀を収めてはくれぬか?
及び腰ばかりとはいえ、五人の直衛を付けた無双国守と死合うのは――そなたとて鎧袖一触、とは行かぬであろう?
中腹の宿場にて、粗末とはなるであろうが、一席設ける故――我に付き合うてはくれぬか?」
――と、柔和な物腰で、休戦を提案する。
ソウタはその提案に、ノブタツの顔を一点に睨みながら――
「……わかった」
――と、光刃を収めながら応えた。
編み笠男も、口元を楽しげに緩ませ、ソウタに値踏みをする様な事を言う。
「宿場――いんや、旅籠の内から尾行してただろ?、丁稚に掏りまでさせてさぁ?」
ギリギリと鍔迫り合いをしながら、ソウタは眼光を鋭くさせて、柄に力を込める。
編み笠男の刀を弾いたソウタは、一旦、距離を取ろうと後ろに下がるが――
「おや?、我と刃を交えるのは――イヤ、かのぉっ!?」
編み笠男は、大きくは体勢を崩しておらず、まさに返す刀の様相で、下段からソウタへ斬撃を見舞う!
(――っ!?、体幹強ぇっ!、おまけに、速ぇぞぉ?!)
ソウタは、編み笠男の瞬錬な動きに驚き、体を退きながら目を見張る。
「ちぃっ!」
編み笠男の斬撃を再び受け止めたソウタは、距離を取るどころか、更に詰め寄られた事に苛立つ。
編み笠男は、一切攻撃を緩めず、次から次へとソウタに斬撃を打ち込む!
(ほう――やるな。
これだけ崩しにかかっても、楽に捌き続けるとは)
(なんだコイツ?、これだけの連撃しながら、息一つ乱してねぇぞぉ?!)
編み笠男は、感心した様子でニヤけ、ソウタは、相手の力量に困惑して顔を歪める。
そんな状況の最中、先に刃を引いたの編み笠男――ソウタの刀身から、二つ半程度離れた位置にまで下がる。
距離を取った編み笠男は、低い姿勢で構え――刀を、素早く鞘に収めた。
(……退いた?!、いや――"居合い"か!)
編み笠男の意図に気付いたソウタも、ジリジリと自分も低い姿勢を取り、編み笠男の居合い抜きに備える。
(コイツぁ……出し惜しみは、出来ねぇかもな)
これまでの編み笠男の動きや、彼の醸す雰囲気に、ソウタは光の刀を抜く覚悟を決めて、実刀の刀身を外し、光刃を晒した!
「ふむ、やっと、抜いてくれたか」
光の刀を見ても、編み笠男はまったく動じず――逆に、そんな戯れ言を呟き、嬉しそうに口元を緩める。
「――てぇこたぁ、俺が光刃を持ってると、見越して襲って来たのかい?、随分と酔狂なお侍さんだ」
ソウタは、編み笠男の反応と、聴こえた呟きに呆れ、苦笑を浮べてこめかみを震わせる。
――編み笠男は、笑顔のまま、低い姿勢で一気に駆け出す!
対したソウタは動かず、近付いて来る編み笠男の手元に意識を集中させ、足下には地面に根を張った様に力を込めさせる。
猛然と鞘の中を刃に奔らせ、編み笠男の刀が抜かれ――ソウタは光の刀を、刃ごと編み笠男を斬り伏せる勢いで振り被る!
光の刀は――編み笠男の刀を圧し折り、光刃はそのまま編み笠男の首筋へと向かう!
「――くぅ!」
――が!、まさに紙一重のタイミングで、編み笠男は上半身を仰け反らせて光刃を避けた!
「くっ……はぁ!」
二人は、密着に近い体で交差し、そのまま互いに動きを止めた。
編み笠男は、切っ先を折られた刀をダラリと下げ、ソウタは、振り抜いた光刃を天に向けたまま静止する――両者共に、渾身の一撃を放った故であろう。
「――えっ!?」
振り抜かれた光の刃を受け、蒸発された形で編み笠を失った男の素顔を見て――ソウタは、驚愕の声を挙げ、慌てて交差状態を解き、後ろへと下がる。
「やれやれ――結構な業物に、相当な界気を込めたつもりだったのだがな。
あっさりと折られるとは……流石は、当世の刀聖と光の太刀か」
そう呟く編み笠――いや、"謎の男"は、見事に折られた愛刀の惨状を、まじまじと見詰めた。
「なぁるほど、アンタ――いや、貴殿なら、刀聖とここまで殺り合えても納得だ」
ソウタは苦笑し、眼前の謎の男に敬意を表して、光の刀を下げる。
そう――この謎の男は、ツクモの者なら誰もが知っていて、誰もが認める武勇を誇る男だった。
「十五年前、三大会前の大武会――当時、スヨウの"次期国守"の身に有りながら、素性を隠してそれに出場――駿足の居合いを武器に、見事優勝を掻っ攫った――」
ソウタは、冷や汗を頬に垂らしながら、そう呟いて、ゴクリと生唾を呑み――
「――『無双国守』、スヨウノ・ノブタツ!」
――眼前に立つ、先日までの敵国の君主と対峙した。
「ふっ……そなたの様な若人でも、我の若気の到りを知っておるのか……恥ずかしいのう」
ノブタツは破顔し、折られた刀を鞘に仕舞う。
「――御家方様っ!」
行商や、巡礼者に扮した、近衛や暗衆と思しき一団が、ソウタと対峙する君主の身を案じ、木立の辺りに慌てて参じた。
「これこれ――我一人で良いと、言うたであろう?」
わらわらと集まってきた、近衛たちの慌て様に、ノブタツは苦笑いを見せる。
「それに――光の太刀の姿も、観ていたのであろう?
つまり、うぬらが束になっても、まったく歯が立たぬのは必至の相手――大人しく、退いておるのが賢明であろうて?」
「かっ!、勝てぬ相手とて、丸越しの君主を放って置いては、ツクモ武士の名折れにございますっ!」
呆れ気味の君主の言葉に、近衛の一人は、恐怖からか声を震わせて応じる。
「どうして――スヨウ国守が、街道に居るのさ?」」
ソウタは、光の刀を敵意を放つ護衛たちの方へ向けながら、意外過ぎる眼前のVIPに訳を質す。
「なぁに、此度の戦に関して、大巫女様への弁明の帰りに――龍の紋の荷を抱えた、コウオウの使者らしき者が居ると聞き、その使者に立ったという刀聖に、ちと挨拶をと思うてな」
ノブタツは腕組みをして、一言ずつ頷きながら、意図を答える。
「……」
ソウタは、飄々としたノブタツの返答に、苛立ちを模様して、柄の握りを強める。
その様子を見やり、ノブタツは――
「――どうじゃ刀聖?、とりあえず……光の太刀を収めてはくれぬか?
及び腰ばかりとはいえ、五人の直衛を付けた無双国守と死合うのは――そなたとて鎧袖一触、とは行かぬであろう?
中腹の宿場にて、粗末とはなるであろうが、一席設ける故――我に付き合うてはくれぬか?」
――と、柔和な物腰で、休戦を提案する。
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「……わかった」
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