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継承
悲報
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――フッ、フギャァァ……
「オロチのお母さぁ~ん!、年末、またよろしくねぇ~♪」
すごすごと逃げて行くオロチに向けて、ヒカリは手を振り、楽しげに見送って見せた。
オロチの首は、消失から三日ほどで再生が始まり、一か月もすれば、元の大きさ程度まで成長を遂げると言われており、食肉として、実にコストパフォーマンスに優れている。
その事実を知った、ある学者が"オロチは、神々の牧場から、このツクモに逃げて来た獣なのではないか?"などという説を挙げたぐらいだ。
「うふふ♪、コレは煮込みに、コレは塩焼きにしてぇ……あっ!、蒲焼も良いかも♪」
ヒカリは嬉々として、切り分けられたオロチの肉を見渡し、調理方法を検討し始める。
「うぇ……今のグロい光景見たら、いくら美味しいと言われても、食べる気半減だわぁ……」
ハルは、胸をさすり、ヒカリの様子を渋い顔で見据えると、ヒカリと一緒に、枝から降りて来ていたミユへと目線を移し――
「ミユ~っ!、お久ぁ~♪」
――と、小さく横に手を振って、ウインクをする。
「……ハル様」
ミユは、その実にわざとらしい対応の意味を察し、神妙な眼差しで、近付くハルを見詰める。
「――何があったの?
アンタが、"こんな所"にまで、連れて来て貰ってるって事は……別に、寂しくて追いかけて来たってワケじゃあないでしょ?」
ハルは、顔付きを険しくとも、優しさが覗く奇妙なモノにして、ミユに丁寧に尋ねる。
「はっ、はい……実、はぁ……
ミユは、言い出しから既に嗚咽を漏らし、堪らなくなって俯いたまま、搾り出す様なか細い声で、衝撃の事実を告げる。
「――大、巫女、様がぁ……お亡くなりに、なられ、ましたぁ……」
「――っ!?、!!!!!!!!!!!」
信じ難い、驚愕の事実を伝えられたハルは、言葉も無くそのまま立ち竦んだ。
「――そっ!、そんなっ!!!、なっ……何故に、その様な事に?!」
――クバシ城へと戻ったハルは、ミユがもたらした衝撃的な悲報を、まずはシオリだけに伝えた。
彼女は、全身をワナワナと震わせ、愕然として両手で口を抑えた。
「うう……うぇつぐ、もっ、申し訳ぇ、ございませぇん、大、神官、様ぁ……」
秋分祭の夜に起きた謀反から、大巫女ユリの自害まで――伝達者としての役目を果たしたミユは、何かが決壊した様に一気に咽び泣く。
「姉様は――アンタを攻めてるワケじゃあない。
大丈夫、大丈夫だよぉ……」
同行したハルは、そのミユを抱き寄せ、彼女の背中を撫でて慰めようとする。
「――ショ、ショウ様たちの謀反で、士団長様とジョウケイ様が?
全報は本社を謀反一派に占拠されて発行停止?、クリ社は謀反に同調した神官長様の下で運営?、そして、その事態を招いた責を悔いて、おっ、大巫女様が……?」
シオリは、ミユから聞かされた、今のテンラクの現状を鸚鵡返しに振り返り――最後に挙げた、ユリの自害の部分で言葉を止め、力尽きる様にその場に膝を折った。
「――姉様、どうします?、皆に……報せますか?
一応、今は、オロチ狩りに出た四人と、ソウタ殿たちを通した、アヤコ様以外には――事を秘する様にと、願い出ましたけど……」
「――報せましょう。
これは、この世界にとっての一大事です。
私たちだけで、御せる事柄ではありませんから」
険しい表情で対応を問うハルに、シオリは凛とした表情で応じ、その彼女の頬には一筋の涙が滴っていた。
「はぁ……何だか、オロチ料理を振舞うどころじゃなくなったね」
クバシ城の広い厨房に立ち、寸胴に入ったスープを掻き混ぜている、ヒカリは溜め息を吐いて、天井に刺さった金具に引っ掛けられている、提灯の灯りを見上げた。
「……そうだな、俺たちにとっても――スグルが討たれた、ってのは訃報だしな」
食材が満載された大箱を抱え、厨房に入って来たソウタは、大箱を作業代に置くと、箱に入っていた果物を一つ手に取り、悔しげにそれを握った。
「ソウちゃん、食材ありがとね。
こんな時に――こき使うみたいで、悪いけど」
「気にするな、今は……何かをしてねぇと、落ち着かない気分だしな」
ソウタはそう言うと、つまみ食い承知でその果物を二つに割り、その片割れをヒカリに差し出す。
「それ――好き、だったよね、スグルくん」
「ああ、そうだ。
コレ――丁度、秋分の季節に熟れるんだよな」
二人は、涙を流しながら、その果物を一口ずつ噛み、それを士団員として、懸命に一人の少女を守ろうとして果てた、烈士スグルへの弔いとした。
「こっ、これが――オロチ料理?」
城の食堂に腰掛けて居るタマは、目の前に並んだオロチ料理を見やり、ゴクッと生唾を飲んだ。
「むぅ……確かに、これは狩る前の様子からでは想像出来ない、美味そうなニオイがするな」
彼女の隣に座るギンも、皿の上に乗った料理が発する芳醇な香りを嗅いで、顎に手を置きながら唸って見せる。
「腹――減ってるだろう?、たぁ~んと好きなだけ食え」
タマの前に座ったソウタは、膳に対して両手を拡げ、二人に食事を薦めた。
「そうそう。
宴席ってワケには成らなくなっちゃって、せっかく狩った、オロチのお肉が勿体無いからさ」
――と、ソウタの隣に座ったヒカリも、笑顔で二人に料理を取り分けてやる。
「――ありがと。
でぇ~もぉ~!、食べる前に、訊いておきたいコトがあるんだけどぉ~?」
ヒカリから、小皿を受け取ったタマは、上から下までヒカリの姿を舐め回す様に凝視し、不満気に頬を膨らませながら――
「――凄い美人だっていう、"ダイシンカン"って……アンタのコト?」
――と、値踏みする様な目付きで睨み、ヒカリに素性を尋ねた。
「へっ!?、私が――"凄い美人の大神官様ぁ?!"、違う違うっ!、全然違うよぉ~!」
ヒカリは、猛然と否定するが、表情は何故か綻び、照れ臭そうな様子に加え、嬉しそうな様子も滲ませている。
「え~?、だってソウタとミョ~に仲良いしさぁ?
見方によっちゃあ、美人かなぁと思うし……」
タマは、ジロジロとヒカリの顔を見回し、悔しげに口を尖らせる。
(――あっ!、この娘……)
ヒカリは、そのタマの様子に何かが引っ掛かり、何故か嬉しそうに微笑む。
「おい――どーして、俺と仲良いのが、お前の大神官の判別材料なんだよ?」
ソウタは、タマの発言に疑問を呈し、顔をしかめて尋ねた。
「だって、こんなトコまで一緒に旅をする仲だよ?
どうせまた、その"凄い美人"を"ドクガ"に掛けたんだろうと思って……」
「!?、どっ!、毒牙って……どこで、そんな言葉を覚えたんだぁ?!」
タマの使った物騒な言葉に、ソウタは眉間にシワを寄せる。
「ふ~ん……ソウちゃんって、"外"では、そんなコトもしてるんだぁ~?、意外ぃ~!」
ヒカリは、驚いた表情で口元を抑え、ニヤニヤと面白そうにソウタの顔を覗く。
「!、いっ!、いやぁ……そんなコトしてねぇっての!」
まるで――ソウタは、浮気がバレた夫の如く、焦った体でヒカリに弁明を始める。
「いっ、一緒に旅して来たと言っても、お互い仕事の旅。
第一、あの超絶美人と俺が如何こうとか、ありえねぇ空想してんなよっ!、タマ――おめぇは、草子の読み過ぎだっ!」
ソウタは呆れた様子で、タマの額を指差しして彼女の間違った推測を正した。
「あっ、ちなみに私――ソウちゃんとは、幼馴染のヒカリだよ。
よろしくね……タマちゃん♪」
ヒカリは、名を確かめる体で、タマにやっとの自己紹介をする。
「へっ?、そうなんだ――じゃあ、もしかして……」
そのヒカリの自己紹介に、"何か"を感じ取った様子で、タマはヒカリの顔に指を指す
「――そ♪、多分……私、タマちゃんの『センパイ』かも♪」
女二人は、そんな暗号染みた会話をし、互いに含み笑いを見せ合った。
「オロチのお母さぁ~ん!、年末、またよろしくねぇ~♪」
すごすごと逃げて行くオロチに向けて、ヒカリは手を振り、楽しげに見送って見せた。
オロチの首は、消失から三日ほどで再生が始まり、一か月もすれば、元の大きさ程度まで成長を遂げると言われており、食肉として、実にコストパフォーマンスに優れている。
その事実を知った、ある学者が"オロチは、神々の牧場から、このツクモに逃げて来た獣なのではないか?"などという説を挙げたぐらいだ。
「うふふ♪、コレは煮込みに、コレは塩焼きにしてぇ……あっ!、蒲焼も良いかも♪」
ヒカリは嬉々として、切り分けられたオロチの肉を見渡し、調理方法を検討し始める。
「うぇ……今のグロい光景見たら、いくら美味しいと言われても、食べる気半減だわぁ……」
ハルは、胸をさすり、ヒカリの様子を渋い顔で見据えると、ヒカリと一緒に、枝から降りて来ていたミユへと目線を移し――
「ミユ~っ!、お久ぁ~♪」
――と、小さく横に手を振って、ウインクをする。
「……ハル様」
ミユは、その実にわざとらしい対応の意味を察し、神妙な眼差しで、近付くハルを見詰める。
「――何があったの?
アンタが、"こんな所"にまで、連れて来て貰ってるって事は……別に、寂しくて追いかけて来たってワケじゃあないでしょ?」
ハルは、顔付きを険しくとも、優しさが覗く奇妙なモノにして、ミユに丁寧に尋ねる。
「はっ、はい……実、はぁ……
ミユは、言い出しから既に嗚咽を漏らし、堪らなくなって俯いたまま、搾り出す様なか細い声で、衝撃の事実を告げる。
「――大、巫女、様がぁ……お亡くなりに、なられ、ましたぁ……」
「――っ!?、!!!!!!!!!!!」
信じ難い、驚愕の事実を伝えられたハルは、言葉も無くそのまま立ち竦んだ。
「――そっ!、そんなっ!!!、なっ……何故に、その様な事に?!」
――クバシ城へと戻ったハルは、ミユがもたらした衝撃的な悲報を、まずはシオリだけに伝えた。
彼女は、全身をワナワナと震わせ、愕然として両手で口を抑えた。
「うう……うぇつぐ、もっ、申し訳ぇ、ございませぇん、大、神官、様ぁ……」
秋分祭の夜に起きた謀反から、大巫女ユリの自害まで――伝達者としての役目を果たしたミユは、何かが決壊した様に一気に咽び泣く。
「姉様は――アンタを攻めてるワケじゃあない。
大丈夫、大丈夫だよぉ……」
同行したハルは、そのミユを抱き寄せ、彼女の背中を撫でて慰めようとする。
「――ショ、ショウ様たちの謀反で、士団長様とジョウケイ様が?
全報は本社を謀反一派に占拠されて発行停止?、クリ社は謀反に同調した神官長様の下で運営?、そして、その事態を招いた責を悔いて、おっ、大巫女様が……?」
シオリは、ミユから聞かされた、今のテンラクの現状を鸚鵡返しに振り返り――最後に挙げた、ユリの自害の部分で言葉を止め、力尽きる様にその場に膝を折った。
「――姉様、どうします?、皆に……報せますか?
一応、今は、オロチ狩りに出た四人と、ソウタ殿たちを通した、アヤコ様以外には――事を秘する様にと、願い出ましたけど……」
「――報せましょう。
これは、この世界にとっての一大事です。
私たちだけで、御せる事柄ではありませんから」
険しい表情で対応を問うハルに、シオリは凛とした表情で応じ、その彼女の頬には一筋の涙が滴っていた。
「はぁ……何だか、オロチ料理を振舞うどころじゃなくなったね」
クバシ城の広い厨房に立ち、寸胴に入ったスープを掻き混ぜている、ヒカリは溜め息を吐いて、天井に刺さった金具に引っ掛けられている、提灯の灯りを見上げた。
「……そうだな、俺たちにとっても――スグルが討たれた、ってのは訃報だしな」
食材が満載された大箱を抱え、厨房に入って来たソウタは、大箱を作業代に置くと、箱に入っていた果物を一つ手に取り、悔しげにそれを握った。
「ソウちゃん、食材ありがとね。
こんな時に――こき使うみたいで、悪いけど」
「気にするな、今は……何かをしてねぇと、落ち着かない気分だしな」
ソウタはそう言うと、つまみ食い承知でその果物を二つに割り、その片割れをヒカリに差し出す。
「それ――好き、だったよね、スグルくん」
「ああ、そうだ。
コレ――丁度、秋分の季節に熟れるんだよな」
二人は、涙を流しながら、その果物を一口ずつ噛み、それを士団員として、懸命に一人の少女を守ろうとして果てた、烈士スグルへの弔いとした。
「こっ、これが――オロチ料理?」
城の食堂に腰掛けて居るタマは、目の前に並んだオロチ料理を見やり、ゴクッと生唾を飲んだ。
「むぅ……確かに、これは狩る前の様子からでは想像出来ない、美味そうなニオイがするな」
彼女の隣に座るギンも、皿の上に乗った料理が発する芳醇な香りを嗅いで、顎に手を置きながら唸って見せる。
「腹――減ってるだろう?、たぁ~んと好きなだけ食え」
タマの前に座ったソウタは、膳に対して両手を拡げ、二人に食事を薦めた。
「そうそう。
宴席ってワケには成らなくなっちゃって、せっかく狩った、オロチのお肉が勿体無いからさ」
――と、ソウタの隣に座ったヒカリも、笑顔で二人に料理を取り分けてやる。
「――ありがと。
でぇ~もぉ~!、食べる前に、訊いておきたいコトがあるんだけどぉ~?」
ヒカリから、小皿を受け取ったタマは、上から下までヒカリの姿を舐め回す様に凝視し、不満気に頬を膨らませながら――
「――凄い美人だっていう、"ダイシンカン"って……アンタのコト?」
――と、値踏みする様な目付きで睨み、ヒカリに素性を尋ねた。
「へっ!?、私が――"凄い美人の大神官様ぁ?!"、違う違うっ!、全然違うよぉ~!」
ヒカリは、猛然と否定するが、表情は何故か綻び、照れ臭そうな様子に加え、嬉しそうな様子も滲ませている。
「え~?、だってソウタとミョ~に仲良いしさぁ?
見方によっちゃあ、美人かなぁと思うし……」
タマは、ジロジロとヒカリの顔を見回し、悔しげに口を尖らせる。
(――あっ!、この娘……)
ヒカリは、そのタマの様子に何かが引っ掛かり、何故か嬉しそうに微笑む。
「おい――どーして、俺と仲良いのが、お前の大神官の判別材料なんだよ?」
ソウタは、タマの発言に疑問を呈し、顔をしかめて尋ねた。
「だって、こんなトコまで一緒に旅をする仲だよ?
どうせまた、その"凄い美人"を"ドクガ"に掛けたんだろうと思って……」
「!?、どっ!、毒牙って……どこで、そんな言葉を覚えたんだぁ?!」
タマの使った物騒な言葉に、ソウタは眉間にシワを寄せる。
「ふ~ん……ソウちゃんって、"外"では、そんなコトもしてるんだぁ~?、意外ぃ~!」
ヒカリは、驚いた表情で口元を抑え、ニヤニヤと面白そうにソウタの顔を覗く。
「!、いっ!、いやぁ……そんなコトしてねぇっての!」
まるで――ソウタは、浮気がバレた夫の如く、焦った体でヒカリに弁明を始める。
「いっ、一緒に旅して来たと言っても、お互い仕事の旅。
第一、あの超絶美人と俺が如何こうとか、ありえねぇ空想してんなよっ!、タマ――おめぇは、草子の読み過ぎだっ!」
ソウタは呆れた様子で、タマの額を指差しして彼女の間違った推測を正した。
「あっ、ちなみに私――ソウちゃんとは、幼馴染のヒカリだよ。
よろしくね……タマちゃん♪」
ヒカリは、名を確かめる体で、タマにやっとの自己紹介をする。
「へっ?、そうなんだ――じゃあ、もしかして……」
そのヒカリの自己紹介に、"何か"を感じ取った様子で、タマはヒカリの顔に指を指す
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