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継承
遺言
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「タマの言い方で、話がズレた様だが――大神官宛に預かった物がある。
食事を喰わせて貰う前に、その用を果しておきたいのだが……」
――と、今までのやり取りには触れずに居たギンが、話に割って入って来た。
「へ?、だったら早く言えよ。
ミユちゃんが、今、会いに行ってるのが大神官様だぜ?」
ギンの申し出に、ソウタはキョトンと怪訝な表情を浮かべる。
「え~~っ!?、それなら『早く言えよ』はコッチのセリフだよぉ~!」
タマは顔をしかめ、また口を尖らせた。
「――だから、そうではないのかと言ったのだ……
それをお前は、俺のそんな忠告も聞かずに……」
ギンは大きく溜め息を吐くと、額に手を当てて、呆れ気味にうな垂れた。
「だって、ソウタと仲良いし、結構美人だし――凄い界気も使ってたから、てっきり……」
「もぉ~!、美人美人って言わないでよぉ~!、照れちゃうなぁ~!」
ヒカリは、タマからの褒め殺しを受けて、身を捩り、頬を両手で隠して満面の笑みを浮べている。
「ヒカリ……お前、実は満更でもない気持ちだろ?」
そんなヒカリに、ソウタは冷ややかな目線を送り、チクリと刺さるコメントを投げる。
「……恥ずかしいから、ここだけの話にしておいてね?」
ヒカリも、我に返った体でこめかみに冷や汗を掻き、頬を隠したまま顔を引き攣らせた。
「――ああ、丁度来たな。
大神官様っ!、ちょっとすいませんっ!」
一連のやり取りをしていた城の食堂前を、シオリとハル――そして、ミユが通る姿を見かけたソウタは、タマたちのために三人を呼び止めた。
「……ソウタ様、それに、ヒカリさん……」
呼び止めに気付いたシオリ以下三人は、振り向いて沈んだ表情のまま会釈をした。
「タマさん、ギンさん……」
シオリと手を繋いでいるミユも、ソウタの前に座っているタマたちの事に気付き、まだ頬から伝わる涙を拭い、共に会釈をした。
「――では、この御二人がミユを?
この子を、ここまで見守り、共に連れて来て頂いたご恩――評に叶う言葉が見つからない程、感謝しております」
振り向いたタマたちと、目を合わせたシオリは、深々と頭を下げて礼を述べる。
「正式な御礼は、必ず致す所存ですが、何分今は……我らも急な事態に混乱を極めている身にございます。
これから、此度の悲報を……使節団の皆へ伝えに向かう途中ゆえ、非礼を平にご容赦を……」
「いや、礼は結構だ。
俺たちも、ソウタへの用があった上での事だしな。
それに――」
シオリの丁寧な礼に、ギンは片手を掲げてそれを遠慮し、何かを言いかけるが――
「――あっ!、大神官様!
御二人は、大神官様宛の大巫女様からの書状と、御神具を託されたおられると……」
ミユは、ギンたちのもう一つの目的を思い出し、何気無く先ん出てそれをシオリに伝えた。
「!」
「ええっ!?」
「わっ!?」
「――なっ!?」
順に――ソウタは、無言のまま目を見張り、ハルは余りの驚きによろけ、ヒカリも同様に両手で口元を覆い、そして――シオリは、驚愕の表情を浮べて立ち竦んだ。
「ミッ!、ミユっ!、どーして!、それを早く言わないのよぉっ!?」
ハルは、顔を引き攣らせてミユを叱り、動揺して両手を震わせる。
「だっ、だってぇ……ハル様が、早く大神官様のトコロへと急かすし、やっと、大神官様に会えた嬉しさとかがあってぇ……」
「はぁ……大巫女様が亡くなられた事の、次に大事な事でしょうがぁ……まっ、アタシたちも、まだ、神具継承までの心配には、至っていなかったんだけど」
ミユが愚図りながら言う言い訳に、ハルは理解を示すが呆れた体で頭を抱える。
「――やっぱ、そうだよね?
"大神官様宛に"御神具が託されたって事は、次の紫珠輪の継承者は……」
「ああ、そう、だろうな……」
ハルが匂わせた紫珠輪の継承者――つまり、"次の大巫女"について、話し合うヒカリとソウタは、自然と目線を、立ち竦んでいるシオリへと向ける。
「亜人種には、話が見えんが……とりあえず、用を果たそう。
タマ、おっさん――いや、"ハヤト"から預かった物を、大神官に……」
「!?、ハっ!、ハヤトって――まさか『二刀烈警』!?
なっ、何がどーなって、御神具が二刀烈警に託されたのよぉ……」
ギンの口から出た、ハルからすれば意外な人物の名に、頭を抱えていた彼女はいっそうに混乱する
「もう!、ビックリしてばっかりで煩いなぁ。
はい、おっさんから預かった手紙と荷物――確かに渡したよ、ダイシンカン」
タマは、呆けているシオリの手に手紙と包みを押し込み、嫌味っぽくソウタの様子を見ながら手渡した。
「……」
それを受け取ったシオリは、我に返ってそれらを見詰め――
(こっ、これが……大巫女様のご遺言っ!)
――ゴクリと生唾を呑み、まずハラハラと書状の封を開けた。
『――シオリ、この書状と報せは、貴女にとっては寝耳に水の出来事であり、その始末を、貴女に押し付ける事となる、酷なモノである事を許してください』
そんな書き出しから始まった、ユリの遺言には――シオリが詳しくは知らない、此度の謀反へと通じたヨシノブとショウの因縁から始まる、テンラクで起きた事の顛末と仔細が綴らていた。
そして、その末尾には――
『――当世大巫女たるユリは、シオリへとこの紫珠輪を継ぎ、このツクモの"先導者"たる大任を終え、次世の大任を貴女に委ねます。
シオリ――今までありがとう。
そして、この世界と、そこに暮らす人々に、喜びと平穏が訪れる様にと、皆を導く、賢明な新しき大巫女であって欲しいと、切に願います』
――と、記されていた。
「――大巫女、さまぁ……」
ユリがしたためた、遺言書を読み終えたシオリは、大粒の涙でその書状を濡らした。
「……」
その様子を見ていたソウタは、食堂のテーブルからスッと立ち上がり――
「貴女に――紫珠輪を継承するという旨の書状なんですね?」
――と、ユリの遺言の中身を尋ねた。
「……はい、どうぞお読みください。
ソウタ殿――いえ、"刀聖様"にでしたら、読ませても良いモノでしょう」
そう言って、書状をシオリから手渡されたソウタは、一通り書状の文面を読み終えると、それをたたみながら、ジッと彼女の顔を見詰めた。
「刀聖様――私に、私にその様な大任が、果たして務まるのでしょうか?」
「それは――俺が言えた事ではありませんが、同じく神具を継いだ者として、ココに継承の意を表す書状と、所持者不在の神具が揃っている以上は、先にやらなければならない事があります」
戸惑うシオリの問い掛けに、ソウタはキッパリとそう答えると――
「シオリさん――悪いが、使節団の皆に、大巫女崩御の悲報を伝えるのは、後回しにして貰います。
んで、まずは俺と一緒にアヤコ様の下へ……」
そう言って、シオリのか細い手を掴み、アヤコの私室への廊下を歩き出す。
「あっ!、ちょっ!、ソウタ殿!、姉様!」
「――ハル、皆のトコ行って、場を繋いどいてくれ。
"継承を済ませた後"の方が、皆もハナシが解り易いだろうからな」
呼び止めるハルに、ソウタは振り向かないままにそう指示をすると、躊躇うシオリを、まるで引き摺る様に足を速めた。
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――と、今までのやり取りには触れずに居たギンが、話に割って入って来た。
「へ?、だったら早く言えよ。
ミユちゃんが、今、会いに行ってるのが大神官様だぜ?」
ギンの申し出に、ソウタはキョトンと怪訝な表情を浮かべる。
「え~~っ!?、それなら『早く言えよ』はコッチのセリフだよぉ~!」
タマは顔をしかめ、また口を尖らせた。
「――だから、そうではないのかと言ったのだ……
それをお前は、俺のそんな忠告も聞かずに……」
ギンは大きく溜め息を吐くと、額に手を当てて、呆れ気味にうな垂れた。
「だって、ソウタと仲良いし、結構美人だし――凄い界気も使ってたから、てっきり……」
「もぉ~!、美人美人って言わないでよぉ~!、照れちゃうなぁ~!」
ヒカリは、タマからの褒め殺しを受けて、身を捩り、頬を両手で隠して満面の笑みを浮べている。
「ヒカリ……お前、実は満更でもない気持ちだろ?」
そんなヒカリに、ソウタは冷ややかな目線を送り、チクリと刺さるコメントを投げる。
「……恥ずかしいから、ここだけの話にしておいてね?」
ヒカリも、我に返った体でこめかみに冷や汗を掻き、頬を隠したまま顔を引き攣らせた。
「――ああ、丁度来たな。
大神官様っ!、ちょっとすいませんっ!」
一連のやり取りをしていた城の食堂前を、シオリとハル――そして、ミユが通る姿を見かけたソウタは、タマたちのために三人を呼び止めた。
「……ソウタ様、それに、ヒカリさん……」
呼び止めに気付いたシオリ以下三人は、振り向いて沈んだ表情のまま会釈をした。
「タマさん、ギンさん……」
シオリと手を繋いでいるミユも、ソウタの前に座っているタマたちの事に気付き、まだ頬から伝わる涙を拭い、共に会釈をした。
「――では、この御二人がミユを?
この子を、ここまで見守り、共に連れて来て頂いたご恩――評に叶う言葉が見つからない程、感謝しております」
振り向いたタマたちと、目を合わせたシオリは、深々と頭を下げて礼を述べる。
「正式な御礼は、必ず致す所存ですが、何分今は……我らも急な事態に混乱を極めている身にございます。
これから、此度の悲報を……使節団の皆へ伝えに向かう途中ゆえ、非礼を平にご容赦を……」
「いや、礼は結構だ。
俺たちも、ソウタへの用があった上での事だしな。
それに――」
シオリの丁寧な礼に、ギンは片手を掲げてそれを遠慮し、何かを言いかけるが――
「――あっ!、大神官様!
御二人は、大神官様宛の大巫女様からの書状と、御神具を託されたおられると……」
ミユは、ギンたちのもう一つの目的を思い出し、何気無く先ん出てそれをシオリに伝えた。
「!」
「ええっ!?」
「わっ!?」
「――なっ!?」
順に――ソウタは、無言のまま目を見張り、ハルは余りの驚きによろけ、ヒカリも同様に両手で口元を覆い、そして――シオリは、驚愕の表情を浮べて立ち竦んだ。
「ミッ!、ミユっ!、どーして!、それを早く言わないのよぉっ!?」
ハルは、顔を引き攣らせてミユを叱り、動揺して両手を震わせる。
「だっ、だってぇ……ハル様が、早く大神官様のトコロへと急かすし、やっと、大神官様に会えた嬉しさとかがあってぇ……」
「はぁ……大巫女様が亡くなられた事の、次に大事な事でしょうがぁ……まっ、アタシたちも、まだ、神具継承までの心配には、至っていなかったんだけど」
ミユが愚図りながら言う言い訳に、ハルは理解を示すが呆れた体で頭を抱える。
「――やっぱ、そうだよね?
"大神官様宛に"御神具が託されたって事は、次の紫珠輪の継承者は……」
「ああ、そう、だろうな……」
ハルが匂わせた紫珠輪の継承者――つまり、"次の大巫女"について、話し合うヒカリとソウタは、自然と目線を、立ち竦んでいるシオリへと向ける。
「亜人種には、話が見えんが……とりあえず、用を果たそう。
タマ、おっさん――いや、"ハヤト"から預かった物を、大神官に……」
「!?、ハっ!、ハヤトって――まさか『二刀烈警』!?
なっ、何がどーなって、御神具が二刀烈警に託されたのよぉ……」
ギンの口から出た、ハルからすれば意外な人物の名に、頭を抱えていた彼女はいっそうに混乱する
「もう!、ビックリしてばっかりで煩いなぁ。
はい、おっさんから預かった手紙と荷物――確かに渡したよ、ダイシンカン」
タマは、呆けているシオリの手に手紙と包みを押し込み、嫌味っぽくソウタの様子を見ながら手渡した。
「……」
それを受け取ったシオリは、我に返ってそれらを見詰め――
(こっ、これが……大巫女様のご遺言っ!)
――ゴクリと生唾を呑み、まずハラハラと書状の封を開けた。
『――シオリ、この書状と報せは、貴女にとっては寝耳に水の出来事であり、その始末を、貴女に押し付ける事となる、酷なモノである事を許してください』
そんな書き出しから始まった、ユリの遺言には――シオリが詳しくは知らない、此度の謀反へと通じたヨシノブとショウの因縁から始まる、テンラクで起きた事の顛末と仔細が綴らていた。
そして、その末尾には――
『――当世大巫女たるユリは、シオリへとこの紫珠輪を継ぎ、このツクモの"先導者"たる大任を終え、次世の大任を貴女に委ねます。
シオリ――今までありがとう。
そして、この世界と、そこに暮らす人々に、喜びと平穏が訪れる様にと、皆を導く、賢明な新しき大巫女であって欲しいと、切に願います』
――と、記されていた。
「――大巫女、さまぁ……」
ユリがしたためた、遺言書を読み終えたシオリは、大粒の涙でその書状を濡らした。
「……」
その様子を見ていたソウタは、食堂のテーブルからスッと立ち上がり――
「貴女に――紫珠輪を継承するという旨の書状なんですね?」
――と、ユリの遺言の中身を尋ねた。
「……はい、どうぞお読みください。
ソウタ殿――いえ、"刀聖様"にでしたら、読ませても良いモノでしょう」
そう言って、書状をシオリから手渡されたソウタは、一通り書状の文面を読み終えると、それをたたみながら、ジッと彼女の顔を見詰めた。
「刀聖様――私に、私にその様な大任が、果たして務まるのでしょうか?」
「それは――俺が言えた事ではありませんが、同じく神具を継いだ者として、ココに継承の意を表す書状と、所持者不在の神具が揃っている以上は、先にやらなければならない事があります」
戸惑うシオリの問い掛けに、ソウタはキッパリとそう答えると――
「シオリさん――悪いが、使節団の皆に、大巫女崩御の悲報を伝えるのは、後回しにして貰います。
んで、まずは俺と一緒にアヤコ様の下へ……」
そう言って、シオリのか細い手を掴み、アヤコの私室への廊下を歩き出す。
「あっ!、ちょっ!、ソウタ殿!、姉様!」
「――ハル、皆のトコ行って、場を繋いどいてくれ。
"継承を済ませた後"の方が、皆もハナシが解り易いだろうからな」
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