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仁義
敬虔
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「――よぉ~しっ!、後は、荷の積み直しだぁ~っ!」
そんな威勢のいい声が飛び交い、多くの水夫たちが出航準備を勤しんでいる、風聖丸が停泊するツツキの港へと向かうソウタとシオリは――彼は淡々と、彼女は静々と並んで歩き、潮風が燻る桟橋を進んでいた。
(こっ、これって、何だか……デート、みたいだわ……)
――歩きながら、ソウタの横顔を眺める恰好のシオリは、何故か頬を赤らめ、上目遣いに何度も彼の表情を窺う。
「おっ!、おぉ~いっ!、タツゴロウさぁ~んっ!」
そんなシオリの熱を帯びた視線には気付かず、風聖丸の甲板に姿を認めたタツゴロウに、ソウタは大きく手を振ってアピールする。
「――あぁん?、おぉ~っ!、ソウタじゃねぇかぁっ!、久し振りだなぁ~っ!」
タツゴロウは、目を落としていた海図を避け、ソウタのアピールに応えて手を振り返した。
「へへ――昔馴染みで、つい呼び捨てにしちまったが、刀聖サマに無礼な挨拶をしちまったなぁ」
桟橋から甲板へと移って来たソウタに、タツゴロウは開口一番、頭に手を当ててバツ悪そうに、ソウタに対する言動をまずは詫びた。
「なぁに言ってんのさぁ。
おらぁ、そうやって、バレた途端に態度を変えられるのが、一番イヤだから隠してたのさ――気は遣わんでよ」
ソウタは渋い顔をして、面倒そうに腰に提げた光刃を睨む。
「しっかし、いつもの様にオウビの港に風聖丸を還してみたら、街中でおめぇが刀聖サマだったていうウワサで持ち切りでよ。
海賊退治のために、この船に乗せてやった、あの箆棒に強ぇガキが――まさか、今の刀聖サマだったとは恐れ入ったぜ」
タツゴロウは、咥えたキセルに火を付けながら、まじまじとソウタの顔をニヤニヤと見据え、そう言った。
タツゴロウが言ったとおり、ソウタは、この風聖丸に乗船した事がある。
それはオリエから、流者仕事として請けたオウビ周辺の船荷を狙い、それこそ商船漁船問わずに襲い、荷を奪っていくという海賊――『海星団』対策として、ツクモ中の港をオウビから西へと順に、時計周りで世界を一周する、約二ヶ月の航路の間、荷の護衛として乗船していた。
その海星団とは、出航早々オウビの沖で出くわし、ソウタの活躍で海賊たちは一網打尽。
ソウタは、生け捕りにした海星団の連中を連行してオウビへと戻る事となり、二ヶ月の仕事の予定は、連行を含めても、僅か五日で終える事となった。
ソウタはこの時、航路に入っているツツキに寄る事も已む無しと覚悟を決めていたし、オリエも彼を一度は、故郷に帰らせるために画策した仕事の依頼だったが、見事にそれは水泡に帰していた。
「――あれからどうだい?、海星団はさ?」
「ああ、逃がしてやったり、結局放免になった奴らの中には、ヨクセで雇う事になった奴も多くてよ。
それからは、海賊騒ぎもトンと無くなったぜ」
タツゴロウは、キセルからトンと灰を落とすと、ニヤッと笑い――
「――へへ♪、おめぇがお嬢に言ったらしいな?
『――仕事を貰えて、暮らせるだけの給金さえ貰えんなら、賊に戻る奴ぁめっきり減ると思いますよ?』
――ってよ、港に来る途中にも、結構居たろ?、おめぇの知った顔が」
――そう言って、桟橋や甲板の上を闊歩している、水夫たちの顔を見渡す。
「――そーいやそうだね。
どおりでさっきから、ミョ~にビビられてるから……そうじゃねぇかとは思ってたよ」
ソウタも、やり返す様にニヤッと笑い、卓の上に出されている乾き物を一つ口に運んだ。
(――治安問題を解決させる発想が、とても大局的だわ。
旅の流者に、身を窶している御方だとは――思えない一面をお持ちなのね)
横で、二人の会話を聞くシオリは、感心した様でソウタの横顔を見やる。
「――んで、箆棒に綺麗ぇな大神官サマを侍らせて、ソウタは俺に何の用だ?」
「ああ、ちょいと"急ぎ"で、オウビまで行きてぇ――俺と、シオリさん、"更に諸々"ざっと十人ぐらいのメンツを、風聖丸に乗せて欲しいんだ」
魂胆を見透かした様な表情でのタツゴロウの問いに、ソウタは微塵の躊躇いも覗かせない雰囲気で乗船依頼を述べた。
「――さっき、ハッキリ聞いたワケじゃあねぇが……この美人の大神官サマが、大巫女様の御神具を継いだらしいってウワサを、半舷休息に出たウチの水夫たちが話してるのが聞こえた。
その絡みの"急ぎ"――か?」
「そうだ――ココじゃあ、占報をする事が出来ないんでね。
これから、ハクキの港を周る手筈なのは承知だが――事は急を要してるんで、直接オウビに向かって欲しい……何とか頼めないか?」
船上暮らしで伸びた顎鬚を撫で、依頼の理由を咀嚼しながら邪推するタツゴロウに、ソウタは緊急さを並べ立て、タツゴロウのシワの多い顔をジッと見詰める。
「この世界の皆様に、伝えなければならない事が沢山あるのです。
船頭殿、どうかお願い致します……」
続いて、トドメとばかりに、シオリも畏まって頭を下げ、タツゴロウに承諾を願う。
「……」
胸前に手を組んで熟考し出したタツゴロウは、おもむろに懐に手を入れると、懐から更にスッと取り出したのは、薄汚れた数珠状の首飾り――それを握ったタツゴロウは突如、シオリの前に平伏する。
「――大神官様、いえ、"次世大巫女"様。
おらぁ、オウビで流者仕事をしてる、ケチな輩ではございますが、萬の神様――特に、船の運航を護ってくれてる、海の神様には強く帰依してるつもりでおりやす。
大巫女様は、その萬の神様と俺たちの間を、仲立ちしてくれている、このツクモの大事な御方でござんす――そんな御方の頼みを、断わっちまったら、海の神様のバチが当たっちまいますぜ」
タツゴロウは小さく顔を上げ、今の行動の理由を説明しながら、口元を微かに綻ばせ――
「――次世大巫女様を、オウビまでお連れする大任……この不肖タツゴロウ!、よろこんでぇっ!、お引き受けさせて頂きやすっ!」
――同じく、嬉しそうに頬を緩ませたソウタとシオリに向け、股旅者が見得を切る様よろしく、仰々しく下手に手を翳し、甲板の上にドンと足音を鳴らした。
そんな威勢のいい声が飛び交い、多くの水夫たちが出航準備を勤しんでいる、風聖丸が停泊するツツキの港へと向かうソウタとシオリは――彼は淡々と、彼女は静々と並んで歩き、潮風が燻る桟橋を進んでいた。
(こっ、これって、何だか……デート、みたいだわ……)
――歩きながら、ソウタの横顔を眺める恰好のシオリは、何故か頬を赤らめ、上目遣いに何度も彼の表情を窺う。
「おっ!、おぉ~いっ!、タツゴロウさぁ~んっ!」
そんなシオリの熱を帯びた視線には気付かず、風聖丸の甲板に姿を認めたタツゴロウに、ソウタは大きく手を振ってアピールする。
「――あぁん?、おぉ~っ!、ソウタじゃねぇかぁっ!、久し振りだなぁ~っ!」
タツゴロウは、目を落としていた海図を避け、ソウタのアピールに応えて手を振り返した。
「へへ――昔馴染みで、つい呼び捨てにしちまったが、刀聖サマに無礼な挨拶をしちまったなぁ」
桟橋から甲板へと移って来たソウタに、タツゴロウは開口一番、頭に手を当ててバツ悪そうに、ソウタに対する言動をまずは詫びた。
「なぁに言ってんのさぁ。
おらぁ、そうやって、バレた途端に態度を変えられるのが、一番イヤだから隠してたのさ――気は遣わんでよ」
ソウタは渋い顔をして、面倒そうに腰に提げた光刃を睨む。
「しっかし、いつもの様にオウビの港に風聖丸を還してみたら、街中でおめぇが刀聖サマだったていうウワサで持ち切りでよ。
海賊退治のために、この船に乗せてやった、あの箆棒に強ぇガキが――まさか、今の刀聖サマだったとは恐れ入ったぜ」
タツゴロウは、咥えたキセルに火を付けながら、まじまじとソウタの顔をニヤニヤと見据え、そう言った。
タツゴロウが言ったとおり、ソウタは、この風聖丸に乗船した事がある。
それはオリエから、流者仕事として請けたオウビ周辺の船荷を狙い、それこそ商船漁船問わずに襲い、荷を奪っていくという海賊――『海星団』対策として、ツクモ中の港をオウビから西へと順に、時計周りで世界を一周する、約二ヶ月の航路の間、荷の護衛として乗船していた。
その海星団とは、出航早々オウビの沖で出くわし、ソウタの活躍で海賊たちは一網打尽。
ソウタは、生け捕りにした海星団の連中を連行してオウビへと戻る事となり、二ヶ月の仕事の予定は、連行を含めても、僅か五日で終える事となった。
ソウタはこの時、航路に入っているツツキに寄る事も已む無しと覚悟を決めていたし、オリエも彼を一度は、故郷に帰らせるために画策した仕事の依頼だったが、見事にそれは水泡に帰していた。
「――あれからどうだい?、海星団はさ?」
「ああ、逃がしてやったり、結局放免になった奴らの中には、ヨクセで雇う事になった奴も多くてよ。
それからは、海賊騒ぎもトンと無くなったぜ」
タツゴロウは、キセルからトンと灰を落とすと、ニヤッと笑い――
「――へへ♪、おめぇがお嬢に言ったらしいな?
『――仕事を貰えて、暮らせるだけの給金さえ貰えんなら、賊に戻る奴ぁめっきり減ると思いますよ?』
――ってよ、港に来る途中にも、結構居たろ?、おめぇの知った顔が」
――そう言って、桟橋や甲板の上を闊歩している、水夫たちの顔を見渡す。
「――そーいやそうだね。
どおりでさっきから、ミョ~にビビられてるから……そうじゃねぇかとは思ってたよ」
ソウタも、やり返す様にニヤッと笑い、卓の上に出されている乾き物を一つ口に運んだ。
(――治安問題を解決させる発想が、とても大局的だわ。
旅の流者に、身を窶している御方だとは――思えない一面をお持ちなのね)
横で、二人の会話を聞くシオリは、感心した様でソウタの横顔を見やる。
「――んで、箆棒に綺麗ぇな大神官サマを侍らせて、ソウタは俺に何の用だ?」
「ああ、ちょいと"急ぎ"で、オウビまで行きてぇ――俺と、シオリさん、"更に諸々"ざっと十人ぐらいのメンツを、風聖丸に乗せて欲しいんだ」
魂胆を見透かした様な表情でのタツゴロウの問いに、ソウタは微塵の躊躇いも覗かせない雰囲気で乗船依頼を述べた。
「――さっき、ハッキリ聞いたワケじゃあねぇが……この美人の大神官サマが、大巫女様の御神具を継いだらしいってウワサを、半舷休息に出たウチの水夫たちが話してるのが聞こえた。
その絡みの"急ぎ"――か?」
「そうだ――ココじゃあ、占報をする事が出来ないんでね。
これから、ハクキの港を周る手筈なのは承知だが――事は急を要してるんで、直接オウビに向かって欲しい……何とか頼めないか?」
船上暮らしで伸びた顎鬚を撫で、依頼の理由を咀嚼しながら邪推するタツゴロウに、ソウタは緊急さを並べ立て、タツゴロウのシワの多い顔をジッと見詰める。
「この世界の皆様に、伝えなければならない事が沢山あるのです。
船頭殿、どうかお願い致します……」
続いて、トドメとばかりに、シオリも畏まって頭を下げ、タツゴロウに承諾を願う。
「……」
胸前に手を組んで熟考し出したタツゴロウは、おもむろに懐に手を入れると、懐から更にスッと取り出したのは、薄汚れた数珠状の首飾り――それを握ったタツゴロウは突如、シオリの前に平伏する。
「――大神官様、いえ、"次世大巫女"様。
おらぁ、オウビで流者仕事をしてる、ケチな輩ではございますが、萬の神様――特に、船の運航を護ってくれてる、海の神様には強く帰依してるつもりでおりやす。
大巫女様は、その萬の神様と俺たちの間を、仲立ちしてくれている、このツクモの大事な御方でござんす――そんな御方の頼みを、断わっちまったら、海の神様のバチが当たっちまいますぜ」
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