流れ者のソウタ

緋野 真人

文字の大きさ
184 / 207
互いの赤心

順位

しおりを挟む
「――ふむ、コレで、大まかな"進み具合"が解かりましたね。

 "幾度"で、ユキが最も"深い仲"――ヒカリが"一度"で次点、裸を見せたシオリ、押し倒されたアオイ――と言った順でしょうかね?」

 アヤコは一旦、話を纏めようと、指折り数えて、自分が知る限りのソウタとの遍歴を確認してみせる。


「シオリの裸――っ!?、ああ、継承の儀がありましたものね……」

(……あっ、"コレ"を観た後なんだと思うと、仮にこれから"いざ"となっても、脱ぎ難いかもなぁ……)

 例の継承騒動を知らない、アヤコとシオリ以外の面々が驚いてみせた後に、次第に心当たりがあるサトコは、渋々と言った様で納得し、ヒカリはシオリの肢体を改めて凝視し、自分の"イロイロ"と見比べながら、愕然とした表情を浮かべた。


「――みっ!、皆さん……アヤコ様から望まれた話題とはいえ、いつまでも続けていては、はしたなく思いますよ?」

 ――と、シオリは尤もらしく、アヤコの次に年長である事を幅に効かせ、諭す態で話題を閉じようと画策する。

「ふん――御家方様、その順に対して、幾分の異議がございます。

 いくら"稀代の宝物級"の裸体を晒したとはいえ、"自分の想いを秘めたまま"の御方より、私と彼奴の仲が下目に置かれるのは、少々納得しかねまする」

 まず鼻を鳴らし、そう異論を唱えたのはアオイ――彼女は、シオリの方にチラリと目を向けた後、そんな不満を挙げて、件の順位ランキングの変更を願う。

「そうよね……明らかに気持ちは"バレバレ"なのに、いつまでも告白には及ばないどころか、こんな詳らかにしようという集いに至ってまで、隠し通そうと黙っているのは……卑怯な態度とも言えますよね?」

 ――と、アオイの意見に同調を示したのはサトコ。

 彼女も、一瞥の意味合いを纏った目線を、シオリへと浴びせる。

「ううっ……そもそも私は神職者、萬の神々に尽くす事を決心した身の上であり、大巫女という重責まで担う事となった立場。

 仮にそれらの事を省いても、私は"四歳も年上"なのです――年下の男性相手の恋愛は、このツクモにおいては"種間の禁忌"に次ぐ、倫理感を問われてしまう所業……明かせと仰られるは、些か後生にございましょう?」


 シオリが、何かに付けてソウタとの年齢差を気にしている理由が、まさにコレである。

 ツクモでは、女性側が年上のケースのカップリングを忌避する風習、風潮が存在しているのだ。


 理由となる由来としては――まだ、神話の内とも言える三世皇の頃、当初に皇夫として見初められた者が、皇よりも年下だった。

 その男は、なんと子も出来ぬまま結婚後三年で早逝――その後の"二人も"また年下だったが、なんとなんと、その二人も、三~四年余りの結婚生活の末に亡くなり、三世皇を深く悲しませた。

 以来、ツクモには、『いわゆる"姉さん女房"は不吉』という言説が拡がり、それを忌避する風習、風潮が芽生えたのだった。

 それから数千年を経た今では、ただの迷信と化しているのだが――敬虔な萬神道信徒を中心に、未だ忌避する傾向は根強く、シオリの様な孤児院育ちな者などは、特に気にしていると言って良い。


「――やはり、そうでしたか……そういう"ホンネ"が、聞きたかったのですよ」

 アヤコは、嫋やかに微笑んで、シオリの肩に手を置き、決心して明かした事を労ってみせる。

「それ故に、気持ちを押し殺してはいるが、ホンネでは"ソウタを好いている"――そう、受け取っても良いのですね?」

「……はい」

 アヤコから確認に、シオリは躊躇い気味に身を捩りながら、顔を伏せ、囁く様な声音でそう言い漏らす。


「あ~あ~っ!、早めに諦めておいて正ぇ~解っ!、世界一の美女が相手じゃ、勝ち目無いモンねぇ~っ!」

 ――と、シオリの明言を目の当たりにしたタマは、脱力する体で手を拡げ、湯の水面に浮かんでみせる。

「内面とて、熟れかかった芳しい色香を纏いながら、乙女が如き瑞々しさも湛えている果実の様なモノですものね……

 武人のソレに例えれば、宛ら光刃を二刀、携えて戦場に立っている様なモノ……反則ですよ」

「うう~っ!、皇様ぁ~……言い様に因っては、"うら若き殿方に、年甲斐もなく焦がれる年増女"とも言えるのですよぉ~!」

 冷酷な眼差しを向けて、冷静に得々とシオリの利点を言い列ねるサトコに向けて、当のシオリは、両手で顔を覆いながら、自虐全開の自評を挙げる。


(――幼馴染も、旅の最中であった人たちも、皇様や大巫女様だって、私と大して変わらない感じで、ソウタさんの事が好きなんだなぁ……)

 ――と、皆のやり取りを端から観ていたレンは、そんな風に微笑ましく思いながら、薄っすらと笑みを浮べて、側に浮かべていた手ぬぐいで、首筋の汗を拭う。


「――さて、残るは貴女だけですよ?、えっと……レンさん?」

 ――そこに、話をレンへと振って来たのは、丁度真っ直ぐに相対する構図となっていたサトコ。

 彼女は、したり顔を覗かせながらそう言って、レンへ向けて片手の平を向ける。

「――えっ!?、わっ!、私にございますか?!」

「ええ――貴女だって、この場に呼ばれたという事は、"お仲間"のはずでしょう?

 ヒカリやアオイからは、再会の折に"熱い抱擁"を交わす程の親密ぶりであったと聞き及んでいますし……」

 すっかり、油断していたレンが、強く狼狽してみせている最中、サトコはズイっとにじり寄りながら、彼女に返答を迫る。


「確かに――この場に居る者の中で、最も"どの程度の親密さ"であるかが、読めぬ相手とも言えるな……」

「――"ヤマカキ事変、唯一の生存者"……正直に言えば、私たちが知るのは、そこまでの事情のみですし……」

「――そだね、戦絡みの頃は、あんまり顔を合わせてなかったし……」

 ――とは、そうしてサトコの主張に強く賛同してみせた、アオイやシオリ、タマの声。

 彼女らも、レンの方へと顔を向け、彼女の返答を待っている……


 ――レンは、表情を硬直させ、些か後ずさりもみせていた。

 何せ、眼前にしている内の二人は、この世界、随一のVIP二名である――改めて、自分はとんでもない交友関係を持つ者に魅かれてしまったモノだと、後悔染みた意味で思い知らされていた……


「わっ、私は――恐らく"最下位"だと思います……一晩、野宿を御一緒しただけですし」

 レンが、モジモジとしながらそう答えると、先に問うたサトコを始め、場の殆どの者が彼女に"ジト目"を向ける。

「そんなはずが無かろぉ~う!?

 命の恩人という点を盾に、"アレ"や"コレ"やをされた挙げ句――操を捧げてしまったが故に、惚れぬワケには行かなくなり……」

 ――特に、アオイは根も葉もない偏見も混ぜて、レンへ真相を迫ってみせる。

「レンちゃんは、嘘を言っていないと思います……"界気の色"からして」

 そう言って、レンを援護に出たのはユキ。

 彼女は、レンを自分の側へと引き寄せて、庇う恰好でアオイから遠ざける。

「ぐっ……そう言えば、そんな"神々の慰み"を賜っているのだったな……」

 アオイは、ユキの言葉にハッとなって、詰め寄るのを止めてみせる

「ええ、嘘を見抜くのは朝飯前――それにソウタさんは、そーいう見返りを求める様な御方では……」

「――だね、ソウちゃんって、あんまり"助平"ではないと思うよ?

 私とだって、再会してから、結局一度も"ナニも無い"のが、何よりも良い証拠だよぉ……」

 ユキの主張を補足する様に、ヒカリは目を虚ろに泳がせながら、寂しげな声音でそう呟く。

「――っ!?、"ナニも無い”……戦絡みの忙しさがあったにせよ、まったくあの子は……」

 ――と、それを聞いていたアヤコは頭を抱え、大きく溜息を吐いた。


「――しかし、コレならば、余計に"頼み易い”のは確かね……」

 アヤコは、独り言気味にそう呟くと、レンの方へと身を向けて――

「ところでレン――貴女に一つ、頼みたい事があるのだけれど……」

 ――と、嫋やかな笑みを浮かべながら、レンの肩へ手を置く。


「はい、なんでしょう……?」

「ソウタと一冬、"同棲"して貰いたいのです♪」

 ――という、場の皆が、温泉に浸かっては居ても、凍り付いてしまう様な衝撃的な一言を告げるために。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

処理中です...