婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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婚姻式の日  ~王子宮にて~

しばらくの間は静かなものだった。
思いのほか、婚姻式が長引いているようだったが4人はさして苦にも思わなかった。
カランッと時折小さな音がするが、それはワインクーラーの中の氷が溶けてゆく音だった。
フェリシアはその度、ワインクーラーの状態を確認し必要とあらば溶けた氷を何度でも凍らせた。
不意に扉の向こうが騒がしくなった。
おそらく部屋の主が、初めて居室に案内されたのだろう。

「こちらが湯浴みをする為の浴室になります。」

侍女頭がご令嬢を案内してきたのだ。
4人は頭を下げ、婚姻式を終えたご令嬢を出迎えた。

「シンシア、ソニア。良かった!見当たらなかったから、どうしたのかと思っちゃった!ねぇ、湯浴みは2人がしてくれるんだよね?疲れちゃった!あーあ、王子様との結婚式だからもっと派手かと思ったのにスッゴい地味でイヤンなっちゃう。」

とても淑女の話しようでは無い。
既に頭を上げたフェリシアとエミリは、まるで平民のような口ぶりに心の中は吃驚していた。

「結婚式に産む子供の数とか聞いてくるかなぁ?ねぇ、どう思う?」

高位貴族であれば常識のように教えられる事も低位貴族家の彼女は知らなかった。
婚約期間につけられた、様々な教師達も王家の常識を教えたが全く覚えられずにいた。

シンシアとソニアは苦笑いをこぼし、手早くマリアンヌ嬢のドレスを剥いでいく。

「王家に輿入れなさる方は皆様、聞かれる事でございます。正妃様は何人とお答えなさいました?」

退室のタイミングが取れなかった侍女頭が、マリアンヌ嬢の愚痴に応え更に聞き返した。
マリアンヌ嬢は何一つ気にする事無く、カラカラと笑って答えた。

「3人よ、赤ちゃん3人は産みたいって言ったわ。」

シンシアもソニアも、そしてフェリシアとエミリの4人は「まぁ」とか「あら」とか適当に相槌を打っていた。

「王妃陛下と同じ、男子を3人望まれるのですか!素晴らしい事です。それでは励まないとなりませんね。では、支度はお任せ致します。正妃様、失礼致します。」

侍女頭は一気に言いきると、一礼し扉の向こうへと消えて行った。

「え……?男子を3人?どういうこと?」

マリアンヌ嬢はびっくりした顔をシンシアに向けた。

「王家にとって大事なのは男子ですので、お生みになる子供の数とは男子の数でございます。婚姻式の最中ですので、宣言として扱われますので正妃様は男子を3人お生みになる。と言う事ですね。」

シンシアは淡々と答えた。
この婚姻式での子供の数云々は離宮に居た頃、何回も教えられた事柄でシンシアが知ってるだけで3回は教師が説明していた。
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