婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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討伐の旅 13 

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その瞬間、何が起きたのか分からなかった。
エリーゼを見て声を掛けようと思った瞬間だった、だけど近寄る前に声を掛ける前に何か恐ろしい気配を感じて体から力が抜けて尻もちをついた。
周りを見て、そんな不様な事になっていたのは俺だけだった。
どうにか立ち上がって見れば、エリーゼの近くに帝国の皇子とか言ってた男が居た。

馴れ馴れしくするな!エリーゼは俺の女だ!

そう思って叫んで………叫んで、俺はエリーゼ自身から関係ないと言われた。
そうだ………俺から婚約破棄したんだ………ずっと、ずっと俺の言う事を聞いてくれたエリーゼを俺自らが手放したんだ。
それでもエリーゼは俺の言う事を聞いてくれると思っていた、ずっと……ずっと俺の言葉を聞いてくれると………
実際は違った、エリーゼは俺の言葉を聞いてくれずに帝国の皇子に誘われるまま歩いて行ってしまった。
武装を纏っているのに、あんな風に腰を抱かれて歩く後ろ姿は小さく華奢に見えた。
悲しかった、どんなに俺が我が儘でもエリーゼはずっと味方だと思っていた……
なぁ……エリーゼ………そいつと行くなよ………
皇子と楽しそうに話すなよ………なぁ…………なぁ…………
軍馬より大きい馬が現れ、やがてエリーゼがその背に跨がりアイツが……皇子がエリーゼの後ろに飛び乗った。
エリーゼを後ろから抱き締めるように覆い被さって見えた瞬間、目の前が真っ赤になったかと思った。
とにかく待って欲しくてエリーゼに訴えたのに、俺の言葉は無視され馬が歩き出しどんどん遠ざかって行った。
俺の耳にシュバルツバルト次期侯爵の怒りに満ちた文句が聞こえ、その言葉に俺は何一つ言い返せずに黙って聞くしかなかった。
気が付けば次期侯爵は俺から離れ、あの1番大きい猪の元に行っていた。
鼻につく臭気に見回せば、あちらこちらで猪の腹が開かれていた。

「殿下、殿下は宿に帰って下さい。この先の事は殿下にはキツい作業になります。」

俺は何も考えたく無かった、シュタインに言われるままノロノロと馬の元に行き宿屋に戻った。
宿屋の安物のベッドに腰掛け、友人だったミヒャエルの死を嘆き離れていったエリーゼを思って泣いた。

今は……今だけはエリーゼの厳しい言葉が欲しかった……
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