婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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討伐の旅 17

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宿を出て支度された馬に跨がる、王都を出たその日の内に友人を亡くすと思わなかった。
何故だかエリーゼの言葉ばかりが思い出される……どうしてマリアンヌの言葉が浮かばないのだろう。

「殿下、そろそろ村を出ましょうか?」

シュタインは穏やかな顔で声を掛け薄く笑った。

「もう、良いのか?」

「はい、シュバルツバルト候が出発しましたからね。」

シュバルツバルト候……エリーゼ達が出たから、俺達も後をついて行く。
シュタインの乗る馬の後を無言でついて行く、何も話したくないしそんな気力も無い。
村を出るとそこには討伐隊の兵士が揃って待っていた。
先頭が動き出し、ジョシュアがチラチラと俺を見ながらついて行く……聞きたい事も言いたい事もあるだろう。ミヒャエルの死はどうしようもない事実だ。キーエル男爵家の旗が進み、シュタインの馬が進んで行く……俺もシュタインに置いて行かれないように馬を進める。
ゆっくり進む隊列から周りの草原を見つめる。

「ふむ……昨夜はこちらでも牙猪が出たようですな。」

シュタインの言葉だけじゃない、前を歩く兵士達がざわついていた。シュバルツバルト候の野営跡地らしき所に大きな四角形の竃があった、それだけじゃないその竃を囲むように魔物除けの杭が打たれていた。その竃の周りは広く草が刈られ馬車等の跡が見て取れた……シュタインの言葉はその野営跡地のすぐ脇を見て言った事が分かった。広く草が薙ぎ倒されたり剣で切ったような跡があったり……あちこちの草に掛かった夥しい血の跡……それはミヒャエルの野営地よりも広く闘った跡だった。

「こっちで討伐した後に来たのか……」

「でしょうな。エリーゼ様は実に勇敢で美しい方だ……キャスバル様とトール様、ルーク皇子殿下と共に中型を倒すお姿……忘れようとしても忘れられないお姿だった……」

シュタインの言葉に頭を叩かれたような気がした。
エリーゼの姿を勇敢で美しい……俺は……俺は、そんな風に思わなかった。

「あんな大きな魔物に立ち向かうなんて……」

つい出た言葉にハハハとシュタインは笑った。

「シュバルツバルト候に同道している領主隊は、昨日のあれより更に大きい大型と呼ばれる魔物の討伐隊ですよ。中型程度で怯むようでは、話になりませんよ。」

「大型……そうだ……前にも言っていた……あれが中型?冗談だろう?」

シュタインは草原を見つめていた。

「冗談じゃありませんよ、シュバルツバルトでは大きい魔物と大きさは余りないが大きな魔物と同等の強さのモノが大型と呼ばれます。大きさはそれなりにあっても弱い魔物は一段低い中型と呼びます。…………シュバルツバルトには大型よりも遙かに大きく強い魔物がいるらしいです、彼等は超大型と呼び討伐除外対象にしてます。」

大型……超大型……エリーゼはそんな魔物が出るような所で生まれ育ったのか…………
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