婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

文字の大きさ
161 / 756

討伐の旅 34

しおりを挟む
ここは……どこだ?……


色とりどりのバラが咲き誇る庭園……あぁ、母上のバラ園だ。


「今日は皆様良く来て下さいました。私のお気に入りのバラを眺めながらのお茶会、皆様も心行くまで楽しんで下さいませ。」

お茶会?……来ているのは高位貴族家の夫人と令嬢ばかり…………
あれは……母上が真っ直ぐ進む先に居るのはシュバルツバルト侯爵夫人?でも……そうだ、今よりも若いし傍らに居るのはエリーゼだ…………

「お母様、私バラを見てきてもよろしいですか?」

「俺が案内する!」

……これは、夢だ……エリーゼに声をかけたのは、俺だ。小さい頃の俺だ。

「ええ、行ってらっしゃい。」

「ジークフリート殿下、娘をよろしくお願いします。」

蕩けるような笑顔の母上、シュバルツバルト侯爵夫人も優しく微笑んでる。

「初めてお目にかかります。シュバルツバルト侯爵家令嬢エリーゼと申します。よろしくお願いします。」

「ジークフリートだ。俺のことはジークフリートと呼んで良い!」

キラキラと輝く青い銀髪、初めて見た夕暮れと同じキレイな青紫色の瞳。
母上自慢のバラみたいなピンクのくちびるに白い肌。
俺の好きなバラと同じ色の薄いピンクのドレス!ここに来ている令嬢の誰よりも可愛い!

「はい、ジークフリート様。」

声も鈴みたいにキレイだ!ずっと聞いていたい!

「あっちに母上自慢のバラがあるんだ!」

差し出した俺の手の上にちっちゃくてキレイな手が乗る。
握ったら、柔らかくってドキドキした。


……ああ、そうだ。思い出した。俺は初めてエリーゼを見て初恋を知ったんだ。嘘みたいにキレイで可愛くて……俺の初恋だったんだ。


「エリーゼは可愛いな!」

「ありがとうございます。ジークフリート様もカッコイイです。」

母上自慢のピンクのバラを見ながら褒めたんだっけ……
白い肌が少しピンク色になって……

「エリーゼ!将来俺と婚姻して、俺の正妃になって!」

「はい、ジークフリート様。」

はにかんだ笑顔、輝かしい春のバラ園……俺から言いだした事…………何で忘れてしまったんだろう。
すぐに母上とシュバルツバルト侯爵夫人に告げて、婚約したんだ……

冷たい……

冷たさに瞼を開け目をこらす。
ああ……夢だったな…………体を起こし、頬の冷たさを手の甲で拭う。
咲き誇るバラよりも美しかった。まるでおとぎ話に出て来るお姫様のような美しいエリーゼと婚約出来て誇らしかった。何故、その気持ちを無くしてしまったんだろう……そうだ……エリーゼが領地に帰って、俺は王子としての教育係が付いて……難しくって逃げた。逃げても逃げても、怒らなかった……『俺は王子なんだぞ!』たった一言、そう言うだけで誰も怒らなかった。
久しぶりに会ったエリーゼに俺は有頂天になった、だけどエリーゼが俺に分からない話を母上としだして嫌な気分になって……それからだった。母上は俺に相応しい正妃になるために努力していると言った。だから俺も努力為さいと。会う度に美しくなるエリーゼ、賢くなっていくエリーゼ……王子と言うだけで努力をしなかった。

夜に食べた干し肉も僅かな野菜の浮いたスープも腹を満たしてくれた。一人天幕に戻り寝た俺が見た夢は幼い頃……俺の初恋の夢だった。

俺は愚かだ……天幕をソッと出ていく。
麓を見れば、まだそれ程遅くない時間なのだろうか何人もの兵士が起きていた……ならば、シュタインと話が出来ないだろうか?
シュタインの天幕は知っているし、麓よりも少し上で俺の天幕からは近い。
ゆっくりシュタインの天幕へ近付く、もし寝ているのならば静かに戻る為に。

ーアッアッアッ!たいっ…ちょッソコォ!ー
ーハッハッ!ここか?ここだろ!ほらー
ーンヒィッ!ヒッ!もっ……もっぅ!ー
ーいいぞ!俺もそろそろ限界だ……ー
ーンヒィアッ!隊長!隊長!はやグゥッ!ー
ーいい子だ、そらァッ!ー
ーンヒィッハアッアーッアーッ隊長の来てルゥッ!アッアッ!アフゥッ……ー
ーふぅっ……良かったぞ。ー
ーんハァッ!俺もです……ふふっ……隊長、良かったんですか?ー
ー何がだ?ー
ー王子サマ。ー
ージークフリート殿下の事か。ー
ーそ。今回の討伐隊は全員こちら側です。ー
ーそうだな、だがおそらく殿下は何一つ知らされて無かっただろうな。ー
ーだとしてもー
ー殿下は幼い、驚く程に。普通ならば側妃様となられるお二人の事も考えれば、何かしら感じるものだが何一つ思いもしなかった。ー
ー側妃様?ー
ーああ、キンダー侯爵家とロズウェル伯爵家だ。どちらも塩街道を抱える高位貴族家だ。ー
ーそれが、何か?ー
ーある程度、領地間の事や他領の事を知り出すと分かる……あの側妃様の選出はエリーゼ様からの指名だそうだ。ー
ーは?ちょっと待って下さい!一体……ー
ー俺は兄上から聞いたが、兄上は側妃様のご実家から聞いたそうだ。エリーゼ様は何を思い考えていたのか……ー
ーなんか良く分からないけど、凄いって事は分かるな。ー
ー先々を考えておられたのだろう。もし逆であれば……と思ったよ。ー
ー逆?あぁ、エリーゼ様が男で王子サマが女だったらってこと?ー
ーそうだ。逆だったら、これ程の良縁は無かっただろう。ー
ー確かに!ー

聞こえた声に会話に俺はソロソロと後ずさり、一目散に自分の天幕に逃げ帰った。
頭の中がガンガンする。
俺は分厚い毛布を引っ被り目を閉じた。
しおりを挟む
感想 3,411

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

処理中です...