179 / 756
正妃の部屋 注意!このお話は少し未来のお話です!
通された部屋は殆どが石造りが剥き出しの床と壁。
暖炉の近くにまとまって置かれているソファとダイニングセットと机、多分王宮の物。
それらの家具の下にだけ轢いてある小さな絨毯。
その絨毯の上に固まって控えてる侍女達。
「…………ナニコレ?」
思わず呟きが漏れてしまった。
「ミーネ、騒がない。」
ソファで縮こまって紅茶を飲んでたであろう正妃様が慌てて立ち上がり……って、え?ピンクのドレスに明るい青地に大輪のバラ?しかも赤・黄色・白の毛織のストール?を羽織って……目に痛いピンクのショール?を腰に巻きつけてる?
「アンネローゼ様!ようこそ、お出で下さいました!」
「正妃様、いかがお過ごしですか?」
「アンネローゼ様のおかげで温かく過ごせてま……す。」
近寄って来た正妃が私達を見て、立ち止まった。
「正妃様、第二側妃となりましたミネルバです。以後よろしくお願い致します。」
頭を下げるのは、私の方が位が低いから。
頭を上げて見た正妃様のお顔は、悲しそうに歪んでいた。
私とアンナの姿を交互に見つめ、唇を噛んでいる。
「そのようなお顔をしては良くありません。ソファに座っても良くって?」
クルリと振り返りソファへと向かう正妃様の姿は、実に寒そうで哀れとしか言えない。
「ミーネ、私達も……」
アンナの言葉で私達もソファに向かう。暖炉に火が入れられている為、ソファの辺りは一応温かい。
差し向かうように座り、まじまじと正妃様を見る。
「ドレス……」
「正妃様は春の装いのドレスを数枚しか持ってないのよ。私は新調したから、前の物は全て手放してしまって、何も残ってないの。」
「私もよ……王子妃教育の時の物は一枚だって残ってないわ。」
「あったかそう……」
正妃様の呟きにアンナと一緒に正妃様を見る。
「なんで……私…………ジークと婚姻したんだろ…………」
今さら言っても仕方ない事を泣きながら言われても、どうしようも無いわ。
「私……何がいけなかったの?……」
「何もかもじゃないかしら?」
思った事をつい、いつもの癖でペロリと言ってしまった。
「だいたい何で、顔以外取り柄の無いジークフリート殿下に近づいたの?男爵家では婿入りさせる事すら出来ないから、しばらく王宮で養って貰うしかなくなっちゃって大変よ。」
涙でグシャグシャな顔で私を見てくるけど、私も疑問だったのよね。
「婿入りって……」
「だって第三王子よ。宣言した子供が生まれきるまでは王宮暮らしは絶対、その後生まれた子供は継承権無しになるけど王宮暮らしからは解放されるのが常識よ。言わば婿入りか臣籍降下してどこかでのんびり暮らすってのが普通よ。でも男爵家では無理でしょ。ずっと王宮暮らしになっちゃって大変よ。」
「そんなの知らなかった……アンネローゼ様、本当ですか?」
「本当よ。だから正妃にはお金がありそうな高位貴族家が選ばれるのよ。お金があれば、側妃とその子供を連れて婿入りでも何でも出来るもの。領地の一部を割譲して新たな貴族家になる事だって、少なくない話よ。王子宮で生まれた子供は王位継承権が付いてるから、教師なり何なり雇えないと困るし……」
「知らなかった……」
目の前に王宮で使用される茶器が並べられていく。カップ一つ輿入れで運び込まなかったのね。いくら何でもあり得ない、男爵家とは言え余りに無礼だし不敬だわ。
「ねぇ、正妃様。どうして近づいたの?」
「贅沢な暮らしが出来ると思って……」
「今も思ってるの?」
「うううん。思ってない。食べる物はちゃんとした物が出るけど、贅沢だとは思うけど……思ってたのと違う……」
「そう、分かってるなら良いわ。私達が温かそうなのは、私達の親が私達の為に精一杯用意してくれたからよ。」
ワッと顔を伏せて泣く正妃様を見て、ヤレヤレと首を振る。
「ちょっと、泣いてても仕方ないでしょう。とにかく冬が越せないと死ぬわよ。」
ビクッとなっても仕方ないのに。これはおば様に早急に手紙を届けないと。
「少し私にもアテがあります。正妃様、悲愴な顔をしても仕方ありません。王室典範が無いのも良くありません。とにかく、このままではどうにもなりません。男爵家から王室典範を持って来させて、冬が越せるようにしなければどうにもなりません。アンナ、自室へ戻りましょう。正妃様、失礼致します。」
立ち上がり、正妃様に声を掛ける。
顔をあげた正妃様の顔は、まるで幼い子供のように見える……その顔が私を見つめる。
「私……」
「貴女は正妃なのよ。最後の最後まで、殿下を支えるのが貴女なのよ。ベソベソ泣いてても仕方ないって事を覚悟なさい。」
「はい……」
「じゃあ、戻るから。」
「ミーネ、私も行くわ。またね。」
私達は足早に自室へと戻った。
正妃様の部屋から出ると、ため息しか出なかった。
これではあの正妃様は死ぬしかない。
これ以上の醜聞はゴメンよ。アンナが慌てるのも最もだわ。
暖炉の近くにまとまって置かれているソファとダイニングセットと机、多分王宮の物。
それらの家具の下にだけ轢いてある小さな絨毯。
その絨毯の上に固まって控えてる侍女達。
「…………ナニコレ?」
思わず呟きが漏れてしまった。
「ミーネ、騒がない。」
ソファで縮こまって紅茶を飲んでたであろう正妃様が慌てて立ち上がり……って、え?ピンクのドレスに明るい青地に大輪のバラ?しかも赤・黄色・白の毛織のストール?を羽織って……目に痛いピンクのショール?を腰に巻きつけてる?
「アンネローゼ様!ようこそ、お出で下さいました!」
「正妃様、いかがお過ごしですか?」
「アンネローゼ様のおかげで温かく過ごせてま……す。」
近寄って来た正妃が私達を見て、立ち止まった。
「正妃様、第二側妃となりましたミネルバです。以後よろしくお願い致します。」
頭を下げるのは、私の方が位が低いから。
頭を上げて見た正妃様のお顔は、悲しそうに歪んでいた。
私とアンナの姿を交互に見つめ、唇を噛んでいる。
「そのようなお顔をしては良くありません。ソファに座っても良くって?」
クルリと振り返りソファへと向かう正妃様の姿は、実に寒そうで哀れとしか言えない。
「ミーネ、私達も……」
アンナの言葉で私達もソファに向かう。暖炉に火が入れられている為、ソファの辺りは一応温かい。
差し向かうように座り、まじまじと正妃様を見る。
「ドレス……」
「正妃様は春の装いのドレスを数枚しか持ってないのよ。私は新調したから、前の物は全て手放してしまって、何も残ってないの。」
「私もよ……王子妃教育の時の物は一枚だって残ってないわ。」
「あったかそう……」
正妃様の呟きにアンナと一緒に正妃様を見る。
「なんで……私…………ジークと婚姻したんだろ…………」
今さら言っても仕方ない事を泣きながら言われても、どうしようも無いわ。
「私……何がいけなかったの?……」
「何もかもじゃないかしら?」
思った事をつい、いつもの癖でペロリと言ってしまった。
「だいたい何で、顔以外取り柄の無いジークフリート殿下に近づいたの?男爵家では婿入りさせる事すら出来ないから、しばらく王宮で養って貰うしかなくなっちゃって大変よ。」
涙でグシャグシャな顔で私を見てくるけど、私も疑問だったのよね。
「婿入りって……」
「だって第三王子よ。宣言した子供が生まれきるまでは王宮暮らしは絶対、その後生まれた子供は継承権無しになるけど王宮暮らしからは解放されるのが常識よ。言わば婿入りか臣籍降下してどこかでのんびり暮らすってのが普通よ。でも男爵家では無理でしょ。ずっと王宮暮らしになっちゃって大変よ。」
「そんなの知らなかった……アンネローゼ様、本当ですか?」
「本当よ。だから正妃にはお金がありそうな高位貴族家が選ばれるのよ。お金があれば、側妃とその子供を連れて婿入りでも何でも出来るもの。領地の一部を割譲して新たな貴族家になる事だって、少なくない話よ。王子宮で生まれた子供は王位継承権が付いてるから、教師なり何なり雇えないと困るし……」
「知らなかった……」
目の前に王宮で使用される茶器が並べられていく。カップ一つ輿入れで運び込まなかったのね。いくら何でもあり得ない、男爵家とは言え余りに無礼だし不敬だわ。
「ねぇ、正妃様。どうして近づいたの?」
「贅沢な暮らしが出来ると思って……」
「今も思ってるの?」
「うううん。思ってない。食べる物はちゃんとした物が出るけど、贅沢だとは思うけど……思ってたのと違う……」
「そう、分かってるなら良いわ。私達が温かそうなのは、私達の親が私達の為に精一杯用意してくれたからよ。」
ワッと顔を伏せて泣く正妃様を見て、ヤレヤレと首を振る。
「ちょっと、泣いてても仕方ないでしょう。とにかく冬が越せないと死ぬわよ。」
ビクッとなっても仕方ないのに。これはおば様に早急に手紙を届けないと。
「少し私にもアテがあります。正妃様、悲愴な顔をしても仕方ありません。王室典範が無いのも良くありません。とにかく、このままではどうにもなりません。男爵家から王室典範を持って来させて、冬が越せるようにしなければどうにもなりません。アンナ、自室へ戻りましょう。正妃様、失礼致します。」
立ち上がり、正妃様に声を掛ける。
顔をあげた正妃様の顔は、まるで幼い子供のように見える……その顔が私を見つめる。
「私……」
「貴女は正妃なのよ。最後の最後まで、殿下を支えるのが貴女なのよ。ベソベソ泣いてても仕方ないって事を覚悟なさい。」
「はい……」
「じゃあ、戻るから。」
「ミーネ、私も行くわ。またね。」
私達は足早に自室へと戻った。
正妃様の部屋から出ると、ため息しか出なかった。
これではあの正妃様は死ぬしかない。
これ以上の醜聞はゴメンよ。アンナが慌てるのも最もだわ。
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
私を棄てて選んだその妹ですが、継母の私生児なので持参金ないんです。今更ぐだぐだ言われても、私、他人なので。
百谷シカ
恋愛
「やったわ! 私がお姉様に勝てるなんて奇跡よ!!」
妹のパンジーに悪気はない。この子は継母の連れ子。父親が誰かはわからない。
でも、父はそれでいいと思っていた。
母は早くに病死してしまったし、今ここに愛があれば、パンジーの出自は問わないと。
同等の教育、平等の愛。私たちは、血は繋がらずとも、まあ悪くない姉妹だった。
この日までは。
「すまないね、ラモーナ。僕はパンジーを愛してしまったんだ」
婚約者ジェフリーに棄てられた。
父はパンジーの結婚を許した。但し、心を凍らせて。
「どういう事だい!? なぜ持参金が出ないんだよ!!」
「その子はお父様の実子ではないと、あなたも承知の上でしょう?」
「なんて無礼なんだ! 君たち親子は破滅だ!!」
2ヶ月後、私は王立図書館でひとりの男性と出会った。
王様より科学の研究を任された侯爵令息シオドリック・ダッシュウッド博士。
「ラモーナ・スコールズ。私の妻になってほしい」
運命の恋だった。
=================================
(他エブリスタ様に投稿・エブリスタ様にて佳作受賞作品)
裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。