婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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侯爵家からの使い 注意!このお話は少し未来のお話です!

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「旦那様!お客様です……旦那様!」

うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!
クソッ!折角あの娘が王子と婚姻して何とかなると思ったのに!あの娘が婚姻した事で行商人達が減って、弟が客が減ったとか泣き言言いやがって!税金が払えなければ取り上げられるんだぞ!

「旦那様……」

「初めてお目にかかります。」

「おい!誰が通して良いと言った!」

何だって言うんだ!だいたい何で勝手に通しやがるんだ!クソッ!

「私、キンダー侯爵家から参りました。ギルバート・ラスティと申します。」

「こっ……侯爵家からでしたか……それは失礼を……そっそれでラスティ様は一体何故我が家へ?」

まずい!使いとはいえ、侯爵家なんて……とにかく何とか上手く切り抜けないと……

「ええ、我が主キンダー侯爵家令嬢アンネローゼ様がジークフリート殿下の第一側妃として入宮したのですが……」

なんだ、驚かせやがって!うちの娘の方が偉いじゃないか!全く、偉そうな顔しやがって!

「正妃様の輿入れ道具の中に王室典範と改定書類が無かった……と連絡が参りまして。最も大事な王室典範と改定書類を如何致したのか?と侯爵家で騒ぎになりまして。」

騒ぎ?騒ぎだと!あのやたらと大きくて分厚い見ただけで頭の痛くなるアレが大事だと!

「輿入れの前に王宮に届けておくのが当然で、もし万が一紛失や損傷となれば不敬罪の上莫大な弁償金が発生します。王宮では確認済みになっておりますので、衛兵等が来る前に早急かつ穏便に片付けたいと仰られましてね。」

不敬罪だと!弁償金なんて払える訳あるか!クソッ!ろくな事がない!何のために、あの娘を引き取ったと思うんだ!クソッ!クソッ!クソッ!

「ドゥルテ男爵閣下、王室典範と改定書類はこちらのお邸にございますか?」

「ああ!あるとも!あんな物、早く持ってってくれ!邪魔で叶わん!」

あんな物、何だと言うんだ!何がしっかり読んで輿入れに備えてだ!バカにしやがって!持ってってくれるなら、早く持ってってくれらば良いんだ!

「そうですか、こちらにあるんですね。では、頂いて行きます。それと、もしご令嬢の物で持たせたい物があるようならお預かりするよう言付かっております。」

ふん!あの娘の物なんかろくに無いが、持ってってくれるなら助かるか……片付ける手間が省けるってもんだ。

「こっちだ!」

慇懃無礼な物言いのラスティとか言う男の後ろに、身なりの良い男達がゾロゾロと付いて来る。全く腹立たしい……
あの娘の使っていた部屋の扉を開いて、中に入る。
王家に輿入れなんだから、何から何まで王家が揃えてくれるだろうに何が持たせたいだ!詰まらん嫌味を言いやがって!
王室典範を置くのが精一杯のテーブルに積んでおいた王室典範と改定書類。こんな山のようになってる物なんか邪魔以外の何でも無い。

「ほら、ここにある!さっさと持って行ってくれ!後この部屋にある物は、あの娘の物だ。どうせ要らないんだ、持ってくなら持って行ってくれ!」

ふん!驚いた顔なんぞしやがって!

「この部屋の物は全てですか?そのテーブルや床に敷かれた絨毯もですか?」

ん?何を言っとるんだ?テーブルに絨毯だと?

「ああ……そうだな。テーブルも絨毯もだな、まぁ持って行けるものなら持って行っても構わないぞ。」

どうせ、持っていける訳もないだろうがな。

「左様ですか、では粗方持って行かせて頂きます。ジャス、馬車で待機しているメイド達を連れて来てくれ。さすがにご令嬢のドレス等は同じ女性の方が良かろう。」

「はっ!」

「王室典範と改定書類は私の馬車に運んでくれ。ベッド以外は全て運び出すぞ。では、ドゥルテ男爵閣下ベッド以外は全てお運び致します。輿入れに何一つ運ばれてないと宮廷雀が姦しくあちこちで吹聴しておりましたので、これで少しは宮廷雀も黙るでしょう。」

何?何だと……何を言ってる?どう言う事だ?

「何一つ運び込まれてない……とは、一体。」

「ああ、輿入れの際は家具からドレスまで全ての物を可能な限り持たせて送り出すのが当たり前ですからね。」

何だと!そんな事誰も言わなかったぞ!何人もの人間がバタバタと動き回っている。

「誰もそんな事……」

「知っておられると思ったのでしょう。」

ただでさえ荷物の少ない、あの娘の部屋はベッド以外何もかも持ち出され無くなっていた。

「どうやら運び終わったようですね。では、私共はこれで失礼致します。」

年老いてろくに仕事が出来ない執事が見送る姿を見て、腹立たしさに手近にあった壺を誰もいない壁に向けてぶん投げた。

「何なんだ!あの男は!俺は男爵なんだぞ!」

「旦那様、先程の方はキンダー侯爵家の寄子貴族ラスティ子爵家御当主様です。」

子爵家当主だと!何だって……

「旦那様、旦那様には申し訳ありませんが本日を持ってお邸を去らせて頂きます。老いた私めでは、お若い旦那様の助力は難しくなりました。では、失礼致します。」

確かにじじいには、俺に付いて来れないか。
まぁ、あの子爵家当主とか言う奴は二度と来ないだろうしな。

「良いだろう。今から俺の部屋に来い。今日までの給金を払わねばな。」

老い先短いじいさんだ、少しははずんでやらんとな。
俺は王子様の正妃の父親なんだからな。
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