215 / 756
家族会議 2
しおりを挟む
「ジークフリートは三番目の王子だ、あれの臣籍降下は生まれる前から決まっていた。どこの家にやるか……五つ六つの年の差ならばどうとでもなる。だが、私が慕う学園時代からの大切な友人であるハインリッヒ……シュバルツバルト侯爵家に一人の令嬢が誕生した。エリーゼ嬢だ。私もグレースも喜んだ、ジークフリートの婚約者に……と。名だたる貴族家もシュバルツバルト侯爵ならば、何一つ問題は無いむしろ喜ばしい……と。だが私達には壁が……高い壁があったのだ。」
「フェリシア様ですね。」
「その通りだ、キャロライン妃。」
「侯爵夫人フェリシア……彼女は元は帝国貴族シルヴァニア公爵家令嬢だが、シルヴァニア公爵家に限らずその傍系もだが好きな男を追い掛けて行く。侯爵夫人も本来なら帝国に帰るのが普通だった、だがハインリッヒと出会い彼女は侯爵夫人となったのだ。私達は何度も話し合い、ジークフリートが五歳になって初めて顔合わせだけでも……と懇願し顔合わせをしたんだ。ジークフリート自らがエリーゼ嬢に申し込み、エリーゼ嬢も受けてくれた。そうして成された婚約だった。」
国王は新たに淹れられた温かい紅茶を一口飲み、喉を潤した。
「ジークフリートが学園に入った頃、私とグレース、シュバルツバルト侯爵夫妻の四人で新たな話し合いを行った。今回の討伐隊の目的地である、王家直轄地。作付の余り出来ない土地だが、王都から最も離れた直轄地……あそこをジークフリートの領地に出来ないか?と言われてな。不毛な土地が多く人の住める所も限られている、だが広さはあるのだし何せ王都とシュバルツバルト領のちょうど中程。決めてくれれば、領都と領主の住む邸は用意しよう……と。どれ程の金がかかるのか……娘を思うハインリッヒの親心とシュバルツバルト侯爵家の財力というものを見せ付けられたよ……一大事業だ。だが、それもジークフリートがエリーゼ嬢と婚約破棄するまでの事だ。婚約破棄と同時にあの直轄地から多くの職人等が……いや、シュバルツバルト領から来ていた者達やそれ以外からも来ていたのか……それら全ての者達が一斉にあの直轄地から去って行ってのだ。あの直轄地へ同道しているシュタインも元は塩街道方面の伯爵家の出だ。ジークフリートが何を思い、どう考えるのかを彼に託した。」
「では、父上の望む答えは……」
「あれには良く考えて欲しい。自分達の行った事の代償を。その上で決めて貰うしかあるまい。」
「そうですか……では、この先の事はジークフリート次第なのですか……」
「そうだ……王子としての責任を負わねばならん。どれだけ時間が掛かってもな。」
国王は空いた席を見つめる、日々政務に追われ親子としての時間は碌々とれなかった。
兄王子二人は問題なく育ったのに、王女達も皆同じように育ったのに……何故末のジークフリートだけが、あのようになったのか……
「私は今でも覚えておるよ……幼いあれが、頬を染めてエリーゼ嬢と婚姻するのだ……と言った時の事を。なぁグレースよ。」
「はい、陛下。あれほど輝かしく誇らしげに告げたジークフリートの事、私も覚えてますわ。」
国王は深くため息をつく。
「第三王子ジークフリートは帰還次第、早々に側妃との婚姻が控えている。キンダー侯爵、ロズウェル伯爵の両家の支えを持ってあれの立場は王族として何とか保たれる。これまでの様に勝手気ままな態度であれば、王子であろうとも庇い立ては難しい。あれ自身の希望を聞いた上で、先を決める。キンダー侯爵、ロズウェル伯爵両家からの申し出で廃嫡を簡単に決断してくれるなと言われた。其方等には苦労を掛ける、だが両家の立場等を考えると頷くしかなかった事を許してほしい。」
「……父上……確か、キンダー侯爵及びロズウェル伯爵両家のご令嬢の婚約は……」
「エリーゼ嬢からの進言だった筈だが……」
「恐ろしいですね。」
「誠にな。会議はこれで終いとする。よいな。」
国王の言葉で一堂はこの部屋を後にした。
国王が歩く隣には王妃グレースがいた。
二人は前を向き、連れだって玉座へと進む。
粛々と。粛々と……
「フェリシア様ですね。」
「その通りだ、キャロライン妃。」
「侯爵夫人フェリシア……彼女は元は帝国貴族シルヴァニア公爵家令嬢だが、シルヴァニア公爵家に限らずその傍系もだが好きな男を追い掛けて行く。侯爵夫人も本来なら帝国に帰るのが普通だった、だがハインリッヒと出会い彼女は侯爵夫人となったのだ。私達は何度も話し合い、ジークフリートが五歳になって初めて顔合わせだけでも……と懇願し顔合わせをしたんだ。ジークフリート自らがエリーゼ嬢に申し込み、エリーゼ嬢も受けてくれた。そうして成された婚約だった。」
国王は新たに淹れられた温かい紅茶を一口飲み、喉を潤した。
「ジークフリートが学園に入った頃、私とグレース、シュバルツバルト侯爵夫妻の四人で新たな話し合いを行った。今回の討伐隊の目的地である、王家直轄地。作付の余り出来ない土地だが、王都から最も離れた直轄地……あそこをジークフリートの領地に出来ないか?と言われてな。不毛な土地が多く人の住める所も限られている、だが広さはあるのだし何せ王都とシュバルツバルト領のちょうど中程。決めてくれれば、領都と領主の住む邸は用意しよう……と。どれ程の金がかかるのか……娘を思うハインリッヒの親心とシュバルツバルト侯爵家の財力というものを見せ付けられたよ……一大事業だ。だが、それもジークフリートがエリーゼ嬢と婚約破棄するまでの事だ。婚約破棄と同時にあの直轄地から多くの職人等が……いや、シュバルツバルト領から来ていた者達やそれ以外からも来ていたのか……それら全ての者達が一斉にあの直轄地から去って行ってのだ。あの直轄地へ同道しているシュタインも元は塩街道方面の伯爵家の出だ。ジークフリートが何を思い、どう考えるのかを彼に託した。」
「では、父上の望む答えは……」
「あれには良く考えて欲しい。自分達の行った事の代償を。その上で決めて貰うしかあるまい。」
「そうですか……では、この先の事はジークフリート次第なのですか……」
「そうだ……王子としての責任を負わねばならん。どれだけ時間が掛かってもな。」
国王は空いた席を見つめる、日々政務に追われ親子としての時間は碌々とれなかった。
兄王子二人は問題なく育ったのに、王女達も皆同じように育ったのに……何故末のジークフリートだけが、あのようになったのか……
「私は今でも覚えておるよ……幼いあれが、頬を染めてエリーゼ嬢と婚姻するのだ……と言った時の事を。なぁグレースよ。」
「はい、陛下。あれほど輝かしく誇らしげに告げたジークフリートの事、私も覚えてますわ。」
国王は深くため息をつく。
「第三王子ジークフリートは帰還次第、早々に側妃との婚姻が控えている。キンダー侯爵、ロズウェル伯爵の両家の支えを持ってあれの立場は王族として何とか保たれる。これまでの様に勝手気ままな態度であれば、王子であろうとも庇い立ては難しい。あれ自身の希望を聞いた上で、先を決める。キンダー侯爵、ロズウェル伯爵両家からの申し出で廃嫡を簡単に決断してくれるなと言われた。其方等には苦労を掛ける、だが両家の立場等を考えると頷くしかなかった事を許してほしい。」
「……父上……確か、キンダー侯爵及びロズウェル伯爵両家のご令嬢の婚約は……」
「エリーゼ嬢からの進言だった筈だが……」
「恐ろしいですね。」
「誠にな。会議はこれで終いとする。よいな。」
国王の言葉で一堂はこの部屋を後にした。
国王が歩く隣には王妃グレースがいた。
二人は前を向き、連れだって玉座へと進む。
粛々と。粛々と……
160
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
『紅茶の香りが消えた午後に』
柴田はつみ
恋愛
穏やかで控えめな公爵令嬢リディアの唯一の楽しみは、幼なじみの公爵アーヴィンと過ごす午後の茶会だった。
けれど、近隣に越してきた伯爵令嬢ミレーユが明るく距離を詰めてくるたび、二人の時間は少しずつ失われていく。
誤解と沈黙、そして抑えた想いの裏で、すれ違う恋の行方は——。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる