婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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クワイとチョロギー

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白と黒の二頭の大きな馬は仲良く並んで飼い葉を食んでいた。

「おい、チョロギー。お前、何かおかしげな事やってただろ。あれは何だ?」

「ああ、あれか。特訓の成果だ!私の中にあった遙かなるご先祖の力が蘇ったのだ!」

鼻面を得意気にあげ、クワイに言ってのけるチョロギー。フン!と鼻息荒く食み続けるクワイは面白くなかった。なぜならチョロギーが出来るなら自分も出来る筈だと思ったからだ。だがクワイは愚かでは無かった。チョロギーが言った特訓という言葉。思い返せば旅に出る前、度々姿を見なかった。あの頃か……と黙り込む。

「どうした?いつもと違うではないか!私が羨ましくて言葉も出ないか?」

チョロギーは自分とエリーゼの絆を自慢したつもりだった。がクワイからすればチョロギーの力自慢にしか聞こえなかった。
既に主達人間は食事を終え、天幕へと入っていっていた。そんな静かな中、クワイはチョロギーの体に体当たりをして皆の邪魔にならない場所へと強引に移動する。

「何をする!」

クワイは無言で上体を起こして前足を高く振り上げる。チョロギーもクワイのその様に反射的に上体を起こし前足を振り上げる。普通の軍馬より大きい二頭の荒ぶる姿に隊員達が慌てて二頭の主を呼び出した。既に寝る準備が済んでいた様だが、すぐさまやって来て二頭を宥めるとチョロギーの主であるエリーゼはやれやれと溜息をつくと指がフイッフイッと顎いた。

「ちょっとルーク外してクワイ入れたから。入ってビックリだけど、チョロギーと一緒に島送りにするから。」

そう言うとチョロギーが何かを言う前に二頭をどこかへとやってしまった。


クワイとチョロギーは八丈島で駆け回り、ゆったりと気持ちの良い丘で横になった。そこで二頭は長い話をし、ロッジの裏手へと歩いて行く。ロッジの裏手には大きな家畜小屋があり、赤い牛や鶏などが休んでいるからだ。

「クワイ、たとえ僅かな時間でもここでならきっと力に目覚める筈だ!」

「分かった。努力しよう。その……恩にきる……」

フイと首をそらしたクワイにチョロギーは笑う事もせず瞼を閉じた。

「明日も一日歩くんだ、早く休め。」

「勿論だ。」

そして八丈島は静かな夜へと戻った。
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