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静かなる波のように 番外編・王宮にて
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「きゃー!見て!こんなに沢山紅茶葉が!」
「本当だわ!しかも見た事の無い物がこんなにも!」
「本当ね、ね……これイチゴの香りですって」
「こちらはレモンの香りですって!どんなのかしら?」
荷物を次々と開ける宮廷侍女達の声は楽しそうに弾けた。
「こちらは……あら?いつもの王妃様宛てと同じだけど、箱も大きくてらっしゃるわね……」
「本当だわ。カードが貼られてるわ。えーと……ご一家の皆様で召し上がって下さい……ですって。何かしら?」
程近い場所で見守っていた王家(第三王子関係は除く)はその声に反応して荷解きの現場へと近づいた。
「お見せなさい」
グレース王妃はいつもの甘味入れに似せた箱(三十センチ四方)を覗き込んだ。
「はっ……はい!」
侍女の手によって開けられた箱の中身は缶であった。それもぎっしりとぴっちりと詰められてある。
缶の上にやはりカードが添えられてる。
『皆様のお茶の一時にどうぞ』
流麗なフェリシアの文字。
それだけでグレース王妃には中身が甘味であると分かった。
「お茶と?なんであろう……」
「甘味ですわ。一つ持たせて今からお茶に致しましょう。紅茶も沢山ありましたし」
グレースは久方ぶりに笑顔を見せて夫である国王陛下に話し掛けた。
冬厳しい中、王都民を減らし続け笑顔を浮かべる事もなかった王妃。
「有難い事だ……」
「さ、皆も中に入ってお茶に致しましょう」
そして荷物を降ろしてる中、一台の馬車が入ってくる。
シュバルツバルト家の紋章を付けた大きな荷馬車が。その馬車が積んでる荷物は王家女性陣宛ての荷物が積まれている。
「ん?シュバルツバルト家の荷馬車か……」
「ええ。陛下、あれはフェリシア様とエリーゼ嬢が私達にと贈ってくれてる物ですわ」
「そうか……」
国王は一つ頷くと何等不思議に思わず中へと入って行く。
グレースはそっとその背中を見送りキャロライン妃へと近づく。
「もはや王国は帝国の援助無くては成り立ちません。貴女とフェリシア様だけが私の頼みの綱です」
「お義母様、私もフェリシア様の助力に驚いてます。こんな……数日の内に物資が届くとは……」
多くの大きな荷馬車。それを護衛している騎士達。
一体どれ程の日数でシュバルツバルト領から王都まで来たのか。
「これがシュバルツバルト家の力です。王家よりも遥かに強い……縁が無くなったのが悔やまれます」
グレースの言葉に頷く。
「ですが敵にはしておりません。これで良かったと思いましょう」
「そうね……」
グレースはキャロライン妃の言葉に頷く。
二人は足早に先を行く王家の面々へと歩を進める。
振り返る事はしなかった。
「本当だわ!しかも見た事の無い物がこんなにも!」
「本当ね、ね……これイチゴの香りですって」
「こちらはレモンの香りですって!どんなのかしら?」
荷物を次々と開ける宮廷侍女達の声は楽しそうに弾けた。
「こちらは……あら?いつもの王妃様宛てと同じだけど、箱も大きくてらっしゃるわね……」
「本当だわ。カードが貼られてるわ。えーと……ご一家の皆様で召し上がって下さい……ですって。何かしら?」
程近い場所で見守っていた王家(第三王子関係は除く)はその声に反応して荷解きの現場へと近づいた。
「お見せなさい」
グレース王妃はいつもの甘味入れに似せた箱(三十センチ四方)を覗き込んだ。
「はっ……はい!」
侍女の手によって開けられた箱の中身は缶であった。それもぎっしりとぴっちりと詰められてある。
缶の上にやはりカードが添えられてる。
『皆様のお茶の一時にどうぞ』
流麗なフェリシアの文字。
それだけでグレース王妃には中身が甘味であると分かった。
「お茶と?なんであろう……」
「甘味ですわ。一つ持たせて今からお茶に致しましょう。紅茶も沢山ありましたし」
グレースは久方ぶりに笑顔を見せて夫である国王陛下に話し掛けた。
冬厳しい中、王都民を減らし続け笑顔を浮かべる事もなかった王妃。
「有難い事だ……」
「さ、皆も中に入ってお茶に致しましょう」
そして荷物を降ろしてる中、一台の馬車が入ってくる。
シュバルツバルト家の紋章を付けた大きな荷馬車が。その馬車が積んでる荷物は王家女性陣宛ての荷物が積まれている。
「ん?シュバルツバルト家の荷馬車か……」
「ええ。陛下、あれはフェリシア様とエリーゼ嬢が私達にと贈ってくれてる物ですわ」
「そうか……」
国王は一つ頷くと何等不思議に思わず中へと入って行く。
グレースはそっとその背中を見送りキャロライン妃へと近づく。
「もはや王国は帝国の援助無くては成り立ちません。貴女とフェリシア様だけが私の頼みの綱です」
「お義母様、私もフェリシア様の助力に驚いてます。こんな……数日の内に物資が届くとは……」
多くの大きな荷馬車。それを護衛している騎士達。
一体どれ程の日数でシュバルツバルト領から王都まで来たのか。
「これがシュバルツバルト家の力です。王家よりも遥かに強い……縁が無くなったのが悔やまれます」
グレースの言葉に頷く。
「ですが敵にはしておりません。これで良かったと思いましょう」
「そうね……」
グレースはキャロライン妃の言葉に頷く。
二人は足早に先を行く王家の面々へと歩を進める。
振り返る事はしなかった。
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