婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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サロンでお話し (フェリシア)

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「さて、もう少し話し合いましょうか」

発言しチラリと義理の息子となる殿下を見る。いつもの様な反応は今は無い。

「大分話しは進んでるんじゃないのか?」

クスリと笑う。帝国の皇子の中では使える方なのだと思い出す。娘と一緒にいる時は普通の男に見えるのに、娘と離れると雰囲気が変わる。

「ええ」

殿下は聡い。その顔に笑みは浮かばず、息子達と同じように真面目な顔で私を見ている。
夫も息子達も先程までの柔和さは無い。

「今年中に独立……と言う事か。父上はその事に何か言っていたであろうか?」

「いいえ。ですが春になれば王都の悲惨さは明らかになるでしょうね。救済は出来る限りしか出来ません、それも条件つきで。ですが王都は広く、私達の手を見る事もかなわない者達も多くいたのでしょう。故に皇女殿下も先細りする王族への糧を何とかするために帝国へ助力を願い出たのですわ」

本当の所は既に王族を維持する力も金も欠けるたから帝国に委ねたいとの嘆願だったのでしょうね。それに対して帝国は完全な支配では無い。もし支配するのであれば支援なんてせずにいた。徹底的に締め上げ皇女殿下を子供ごと取り上げあの陛下に頭を下げさせ国を明け渡させる位はするものね。

「姉上は王族をなくしたくないのでしょうね。姉上はお優しい方ですからね」

クスクスと笑う。皇女殿下がお優しいか……さて、本当にお優しいのかしら?

「そうですね。皇女殿下はご家族にはお優しいです。ですが家族ではない者にはどうでしょうか?」

少し考える風な仕草をして見せる殿下。頭を振ってニヤリと笑う。

「そうでしたね。姉上は誰にでもお優しい訳ではなかった。王国はそれ程までに?」

「勿論です。流通が止まり、必要な物資が王都に流れなくなり王家の体力が著しく下がりました。これにより王都民のかなりの数が亡くなりました。王家を……王族を支える王都民がです」

私の言葉に眉を寄せた殿下。少し考えれば分かる事です。

「では仕方ないな。夏には独立になるのか?」

そうね……夏では余り都合が良くないわね。

「いえ。秋ですわね、キャスバルは王国貴族の知り合いも多いですしね。そこで我が家と繋がりたい家とそうじゃない家が分かるでしょう?」

そう……我が家にとって有益な家とそうでない家。独立した後、繋がり続ける家はその時に見極めれば良いでしょう。

「ではキャスバルの婚姻式が終わり次第陛下に独立する手紙を届けさせよう。勿論、自ら使者になろうとする者に行かせる」

ハインリッヒの渋い顔は今、何を思ってるのか……
私とエリーゼだけでなく、次期領主となるキャスバルすらも帝国の者と強く繋がる。



甘えるだけの王国には呆れてるのですよ、私は。許せるのはほんの僅かな貴族家だけ。篩はとっくにかけてますのよ……国王陛下、私は許しませんわよ。貴方も貴方の愚かな息子を。そして更に愚かなあの娘も。
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